558.こっそり、救出。
みんなでの楽しい昼食が終わり、俺は『マットウ商会』に乗り込むことにした。
午後から始まる特別模擬試合までには、まだ時間があるからね。
乗り込むといっても、潜入して悪徳奴隷商人に騙されて売られた人たちを助けだすだけで、派手に暴れるわけではない。
久しぶりに『闇の掃除人』仕様で、『隠れ蓑ローブ』をまとって潜入するつもりだ。
奴隷とされたヌリカベン選手の仲間の買い取りには、ヌリカベン選手たちに付き添ってサーヤに行ってもらうことにした。
◇
俺の奴隷救出任務は、瞬時に終わった。
密かに接近し、助けに来た旨を告げ、奴隷契約を解除し、回収するのである。
回収には人目につかないように、トランク型の魔法道具『箱庭ファーム』を使った。
これは『マシマグナ第四帝国』のテスト用第五号迷宮である『プランター迷宮』で手に入れたアイテムだ。
『階級』が『
亜空間に、一時的な居住空間が作ってあり、ある程度の期間なら、生物が暮らすことができるのだ。
一気に移動する場合は、転移の魔法道具を使えばいいが、今回のように一人一人順番に救出する場合は、このアイテムが便利なのだ。
亜空間の特別な場所とゲートを繋げる魔法道具だと思うが、事実上は魂のある生き物を収納できる魔法カバンのように使えるのだ。
魔法カバンは、魂があるものを収納できないから、実質その裏技みたいな感じなのだ。
保護した人は、全部で十五名だ。
冒険者や行商団の護衛をしていた人など、やはりある程度の戦闘力を持った人たちだった。
もっとも皆レベルは15から25の間であり、それほど強いというわけではない。
まぁ一般人との比較からすれば、十分強いけどね。
『コロシアム村』の俺の屋敷の別館に、保護することにした。
皆『アルテミナ公国』の出身で、やはり騙されて無理矢理奴隷にされてしまった人たちだった。
ヌリカベン選手たちとサーヤも無事に戻ってきた。
仲間を救出できたようだ。
改めて俺に紹介してくれた。
冒険者パーティ『
年齢は三十歳で、レベル30だそうだ。
彼は、鼠の亜人だ。
灰色のフード付きローブを着ている。
彼が悪徳奴隷商人に騙された張本人なので……とてもすまなそうな顔をして何度もお礼を言われた。
『アタッカー』ポジションのニャンムスンさんは、二十歳でレベルが31だ。
彼女は、チャッピーと同じ猫の亜人だ。
紫髪に赤い猫耳と猫しっぽが印象的だ。
釣り目がセクシーな感じの色っぽい美人だ。
赤のワンピース風軽鎧も目を引く。
同じく『アタッカー』ポジションのコーナキンさんは、三十歳でレベル31だ。
彼はスキンヘッドでがっちりしていて、筋肉を自慢したいらしく、ノースリーブで短パンだ。
軽鎧の胸当ては大きく、菱形のよだれかけのような独特な形をしている。
『魔法使い』ポジションのズナカケナさんは、三十歳でレベルは30だ。
綺麗な銀髪のロングヘアーが印象的だ。
少しそばかすがあるが、唇が厚く目が潤んでいて、妙に色っぽい。
着物に似た感じのデザインのローブを纏っている。
そのローブは丈が短く、ミニスカのようになっていて、美脚を露出している。
三十歳と言いつつも、もう少し年上の熟れ熟れのお姉さんに見える。
夜の街の蝶といった感じだ。
視線まで色っぽい……。
というか……このパーティーの女性二人、色っぽすぎるんですけど!
迷宮の魔物相手に、色気は通じないでしょうよ!
『ロングアタッカー』ポジションのキティロウさんは、二十二歳でレベル31だ。
茶髪でボブカットみたいな髪型だが、前髪が長く片方の目はほぼ隠されている感じだ。
黒いローブを纏い顔しか見えない状態だ。
『ロングアタッカー』というよりも、魔法使いっぽい雰囲気だ。
ローブの下には、特殊な装備が隠されているらしい。
以上の皆さんが助け出した皆さんだ。
あとのメンバーは……
『タンク』ポジションのヌリカベンさんは、二十六歳でレベルが31だ。
今まではわからなかったが、ヘルムの下はスキンヘッドのようだ。
全身鎧を装着している。
『斥候』ポジションのイッタァンさんは、二十六歳でレベルが30だ。
彼は白髪で、細身で華奢な印象を受けるが、身軽なのだそうだ。
白い軽鎧に白いロングマントをつけている。
そしてパーティーメンバーではないが、スポンサーになっているというのが、キティロウさんの父親のメーダマンさんだ。
『ヨカイ商会』の会頭でもあり、四十二歳とのことだ。
キティロウさん同様黒いローブで全身を覆っている。
ベレー帽のような不思議なデザインの帽子を被っている。
遠くから見ると、タオルを乗せているような感じにも見える。
彼もスキンヘッドっぽい。
このパーティーのスキンヘッド率……なぜこんなに高いのか……。
そして女性は二人ともセクシー路線だし……まぁいいけど。
俺は、この冒険者パーティー『
そして、できることがあれば何でもすると言われたのだが……無理に恩返ししてもらう必要はない。
逆に彼らの今後について、協力できることがあればしたいと思っている。
一応、彼らの今後について尋ねた。
冒険者を続けたいという気持ちはあるようなのだが、帰って冒険者を続けるべきか迷っているらしい。
やはり『アルテミナ公国』の政情が不安で、独立した組織である『冒険者ギルド』にも、いろいろな影響が出ているのだそうだ。
メーダマンさんの『ヨカイ商会』も、政情不安の影響で厳しい経営状態らしい。
もし『アルテミナ公国』を去るつもりがあるなら、ピグシード辺境伯領に移住しないかという話をしてみた。
そして希望するなら『フェアリー商会』で、雇用することができるとも伝えた。
場合によっては『領都ピグシード』で運営している『ハンター育成学校』を、他の場所でも開校する可能性があるので、その講師の職もあるとも話をした。
まぁ年齢的には、まだ引退するのは早いと思うが。
みんなかなり興味を持ってくれたようで、いろいろ話をしていた。
ただ彼らは中堅冒険者なので、まともに迷宮探索をすれば、『フェアリー商会』で働くよりも良い収入が得られる可能性が高いんだよね。
その辺も含めて、慎重に判断してもらえばいいけどね。
ただいずれにしても一度は、『アルテミナ公国』に帰るつもりのようだ。
『ヨカイ商会』もあるから、やはり帰らないといけないよね。
彼らと『マットウ商会』から保護してきた『アルテミナ公国』出身の皆さんは、『フェアリー商会』幹部のサリイさんとジェーンさんに、しばらくの間面倒を見てもらうことにした。
同じ『アルテミナ公国』出身だから、安心だろう。
もちろん、『マットウ商会』から保護した人たちにも、ピグシード辺境伯領への移住の話や『フェアリー商会』での雇用の話などもしてある。
彼らも喜んでくれていたようだが、やはり一度は『アルテミナ公国』に帰りたいと思っているようだ。
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