544.チートで、ハイテンション。

 ハナシルリちゃんは、『固有スキル』の『女の勘』の説明が一通り終わった後に……


「浮気しても、すぐ女の勘でわかっちゃうからね!」


 と言って俺を見つめた。


 というか…… 四歳児の姿で、大人の女の目つきをするのは本当にやめてほしい……頭がおかしくなりそうなんですけど……。

 超絶可愛い外見と言動とのギャップに慣れるどころか……だんだんとダメージが蓄積される一方だ。

 俺は、限界突破ステータスで、『気力』の数値も限界突破しているのに……病んできている気がする……気のせいかもしれないが……とにかく……誰か助けてくれ……。


 それにしても……『固有スキル』は、その人の魂の願望の表れということになっているから……それが『女子力』と『女の勘』ということは……前世で生きていた時に、女子力がなくて欲しいと思っていたとか、女の勘がなくて男に二股かけられていたとかという事なんだろうか……怖くて訊けないけど……。

 そういえば、『固有スキル』はその人の魂の願望の表れである場合が多いという説明をしたときに、一瞬ハナシルリちゃんがへこんだ表情をしていたけど……。

 やっぱり……そういうことなのかなぁ……そんなことを思いながら、思わずハナシルリちゃんを見つめてしまったのだが……。

 俺の憐れむような視線を読み取ったらしく……いや、女の勘でなにかを感じとったのか……腕組みしながら近寄ってきた。


「なによ! 文句あるわけ!? そうよ、女子力が欲しかったわよ! 二股かけられたわよ! だからって何よ! この世界での私のいい女っぷりを見てなさい!」


 ハナシルリちゃんはそう言って、ヤサグレ気味に逆ギレした。

 この人ってもしかして、得意技……『ヤサグレる』だったりするのかな……なんとなく三十五歳のOLが酒を飲んでヤサグレているビジョンが見えるが……気のせいだろうか……。

 それにしても、完全に俺の心を読んだようなこの発言……まさか心は読めないよね? ……偶然だよね?

 『女の勘』だけでは、思考内容まではわからないはずだし……。

 本人自身がかなり気にしていて、半分被害妄想的に言ったのかもしれない。

『女の勘』とトラウマと被害妄想の合わせ技による奇跡だったのかも……まぁそんなことはどうでもいいが。


 ちなみにハナシルリちゃんは、前世では、総合商社で総合職としてバリバリ働いていたらしい。

 本人曰く……「やり手のキャリアウーマンで、できる女として後輩たちの尊敬を集めていた」とのことだが……なんとなく残念感が……ここもスルーしてあげた。やさしさスルー発動。


 『固有スキル』も快く教えてくれたことだし、俺も自分の持っている『絆』スキルなどの説明をした。

 そして、もしよければ、俺の『心の仲間チーム』メンバーにならないかと提案をした。

『絆』メンバーになれば、『共有スキル』を使うことができて、この世界でより安全に生きていくことができるからね。


 この提案にハナシルリちゃんは、一秒の迷いもなく即答で答えた。


「もちろん仲間になってあげるわよ。ここでならなきゃ、出会った意味ないでしょ! 運命の出会いなんだから! でも妻になるのは、もうちょっと待ってね……心の準備はできてるけど……体がまだ四歳だから……頑張って我慢してね」


 ハナシルリちゃんは、嬉しそうに言いつつ、最後はイタズラな笑顔を作った。

 大人っぽいイタズラな笑顔も、いたずらっ子風にも見えるので、ギリギリ四歳児としても可愛く思えたが……言ってることが滅茶苦茶なんですけど……。

 そしてこの残念感……なんかほんとにニアさんに似てる気がするんですけど……。

 そんなことを思いつつ、ちらっとニアを見たのだが……なぜか楽しそうにニヤニヤしていた。

 もしかして同じ匂いを感じて……喜んでいるのだろうか……この二人が親友にならないことを祈ろう……。



 早速ハナシルリちゃんを『心の仲間チーム』メンバーに登録すると……ハナシルリちゃんは大喜びで飛び上がった。


「なにこれ!? なにこのスキルの数!? スキルレベル10ってなによ!? キタァァァァ! チートキタァァァァァ! チート万歳! 異世界万歳!」


 ハナシルリちゃん……凄いハイテンションで飛び跳ねているが……大丈夫だろうか……。

 そんな俺とニアの心配をよそに、ハナシルリちゃんの“一人お祭り騒ぎ”は止まらない。


「なにこれ!? 『アイテムボックス』があって、『鑑定』があって、魔法スキルもあって、攻撃スキルもあって……つ、ついに無双するときが来たのね! 異世界無双! 可愛いくて、女子力もあって、スキルありまくり! うおおおおおっ! やぁぁぁってやるぜ!」


 やばい……本当にハナシルリちゃん、やばいことになっていると思うんだけど……。

 ギャルが騒いでいるような……うるさいおばちゃんが騒いでるような……訳が分からない状態だ。

 最後はアニメキャラみたいに叫んでるし……。


 本当に可愛い外見とのギャップがすごい。

 最初に会ったときの……あの超絶可愛いハナシルリちゃんの面影は、すっかり失せている。

 あの時の俺の純粋な父性愛を返してほしい……トホホ。


 俺は、ハイテンションなハナシルリちゃんに、人前で無闇にスキルを使わないようにと注意した。

 そしてハナシルリちゃんの『ステータス偽装』スキルよりも俺の『波動』スキルを使った偽装の方が強力なので、説明した上で偽装ステータスを貼り付けてあげた。


 一応俺の説明には、云々と頷いていたが……テンション高いままだったから……まともに聞いてないと思う。

 まぁいいけどね……これからいつでも念話で話せるから……。


「なにこの念話!? すごいじゃない! 『絆』メンバー限定とはいえ……いつでも話したいと念じれば繋がるわけ!? まるで携帯じゃん! スマホはないわけ? スマホモードとかないわけ?」


 本当にさっきから一人で話しまくっている……。

 スマホモードって……何のことを言ってるのだろう……ネット検索したいってこと……写真が撮りたいってこと……いずれにしろ『絆』スキルのコマンドには、そんな機能ありません。

 でも確かに……そんな機能あったらいいなぁ……できないかなぁ……。


「なに!? 仲間になった動物とも話ができるわけ!? やったーー! すごい、すごい!」


 ダメだ……まだ一人で盛り上がっている……もう誰にも止めることができないだろう……。

 そんなハナシルリちゃんへの対応が辛くなってきたこともあり、俺は念話で『魚使い』のジョージを呼んだ。

 ジョージも前世で日本にいたから、日本の話ができるからね。


 すぐにジョージがやってきてくれたのだが……



 

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