534.続々、集まる。
ビャクライン公爵一家にも、改めて『ドワーフ』のミネちゃんを紹介した。
ちなみに俺の仲間たちや、貴族席の隣の特別席で観戦していた孤児院の子供たち、元『花色行商団』の子供たち、吟遊詩人のアグネスさん、タマルさん、その弟子のギャビーさんやアントニオ君たちは既に紹介してある。
ミネちゃんが妖精族の『ドワーフ』だと聞くと、ビャクライン公爵一家はかしこまっていた。
やはり妖精族のインパクトは強いようだが、ニアやサーヤ同様、ミネちゃん本人が普通に接してほしいと話したので、なんとか普通の状態に戻ってくれた。
「普通に仲良くしてほしいのです。一緒に美味しいものを食べれば、みんな仲良しになるのです! これからお昼ご飯だから、ちょうどいいのです! ハナシルリちゃんはとっても可愛いから、ミネは何でも作ってあげちゃうのです! 任せてなのです!」
ミネちゃんはビャクライン公爵一家にそう言って、ドロシーちゃんが抱きかかえていたハナシルリちゃんをバトンタッチで抱きかかえた。
そして会場の新しい屋台を全部制覇してきたにもかかわらず……これからみんなと一緒にお昼ご飯を食べるつもりらしい……まぁその点は今更突っ込んでもしょうがないが……。
ハナシルリちゃんは、人族の天才ドロシーちゃんと『ドワーフ』の天才ミネちゃんと知り合えたことが本当に嬉しかったようだ。
ドロシーちゃんの事は母親のアナレオナ夫人から聞いていたようで、ぜひ会いたいと思っていたらしい。
そして『ドワーフ』のミネちゃんについては、もちろん初対面だがものづくりが得意な『ドワーフ』の中でも天才と言われていることを知って、目を星のように輝かせていた。
ハナシルリちゃんの興味を引いてくれたこの二人の登場によって、ハナシルリちゃんはやっと俺の下から離れてくれた。
今は天才少女二人と、リリイとチャッピーを加えたお姉さん四人組と一緒にいる。
俺としては、ちょっと解放された気分で……一息つける感じだ。
そして何故か……溺愛オヤジとシスコン三兄弟は、リリイたちにまで軽い殺気を向けている。
俺に向けるほどではないが……大人気ないにもほどがあると思う……。
そう思ったのは、アナレオナ夫人も同じだったようで、公爵のお尻をつねりつつ、シスコン三兄弟の頭に軽いゲンコツを落としていた。
ちなみに、ミネちゃんとドロシーちゃんの屋台巡りのボディーガードとして、いつもは第一王女のクリスティアさんと一緒にいる護衛官のエマさんがついていってくれていた。
エマさんも一緒に戻ってきているので、皆さんに挨拶をしていた。
シスコン三兄弟は、エマさんに対してもクリスティアさんの時と同じように緊張してガチガチになって、まともに挨拶ができない状態だった。
この子たちは、年上で綺麗で強いお姉さんに弱いのだろうか……なんとなく……友達の姉で綺麗でかつ強いユーフェミア公爵に初恋をしたという溺愛オヤジの血を引いてしまっているような気が……。
そういう女性を好きになってしまうというのは……まぁわからなくはないけどね。
ふと思ったが……俺も元いた世界で……若かりし頃、年上の女性が好きで、そういう女性に甘えられたり弱いところを見せられるとキュンとしたという記憶が蘇ってしまった……。
そして、そんな女性にたまに叱られると、ちょっと嬉しいような……軽いMっ気があったことも思い出されしまった……てか、何を思い出してるのよ……いかんいかん……なしなし!
ちなみに……やはり人の顔とかは思い出せない。
人に関連する事は思い出せても、人そのものについては思い出せないようだ。
そんなところに『魚使い』のジョージが入ってきた。
実はジョージは、一緒には観戦していなかったのだ。
俺の仲間たちの中で人型でないメンバーについては、観客席に入るとかなり目立ってしまうし騒ぎになるので、一緒に観戦するのは遠慮してもらっていた。
そのかわり大きな個室を一つ用意して、そこで観戦してもらっていたのだ。
虫馬『サソリバギー』のスコピンでも入れるような大きな扉の部屋で、倉庫としても使える仕様になっている部屋なのだ。
闘技場に面している部分がガラス張りになっていて、どの個室からも一応観戦もできる仕様になっている。
ただこれらの個室は観客席の下の部分で、いわば地上一階に相当するので目線が低くく観客席での観戦に比べると見にくいんだけどね。
ジョージはのんびり観戦したいということで、人型でない仲間たちとの個室観戦を選んでいたのだ。
そんなジョージが顔を出してくれたのだが、突然ビャクライン公爵一家がいたからびっくりしたようだ。
ジョージにも、ビャクライン公爵一家を紹介した。
ジョージは表向きとしては、俺の弟分で『フェアリー商会』の幹部ということになっている。
まぁ実際その通りなのだが。
ハナシルリちゃんは、いつものようにしっかりとジョージに挨拶をしたが、俺に対して懐いてきたような感じにはならなかった。
実はジョージには、念話でハナシルリちゃんが『先天的覚醒転生者』であることを伝えていた。
それもあって、ジョージは顔を出してくれたのだが……ハナシルリちゃんは特に反応していない。
俺に懐いてきたのは、たまたまだったのかもしれない。
転移者とか転生者を感知したり、感じたりできるのかと思ったが、ジョージへの反応を見る限りそういうわけではないようだ。
今度は、ピグシード辺境伯領領主のアンナ=ピグシード辺境伯、その長女のソフィアちゃん、次女のタリアちゃん、セイバーン公爵家次女でピグシード辺境伯領執政官のユリアさん、三女でピグシード辺境伯領『ナンネの街』の代官のミリアさん、ヘルシング伯爵領領主のエレナ=ヘルシング伯爵、ヘルシング伯爵領執政官のキャロラインさんがやって来た。
それぞれ、午前中は各領で仕事をして、転移の魔法道具を使ってやってきてくれたようだ。
今までにみんな一度は密かにこの『コロシアム村』を訪れていて、転移の魔法道具に転移先として登録してあるので、いつでも来れるのだ。
もちろん転移の魔法道具でやってきている事は、もともと存在を知っている関係者以外には秘密にしている。
それ故に、今後は皆さんはずっと『コロシアム村』に滞在しているという建前になる。
実際には転移で戻って、領の仕事をすることもできるのだが。
ただ、アンナ辺境伯たちもエレナ伯爵たちもせっかくの機会なので、ここで四日間楽しみたいと思っているようだ。
仕事は、残っている文官たちに任せるつもりらしい。
もっとも、今回の本当の目的は『正義の爪痕』をおびき寄せることだから、遊びではないんだけどね……。
第一日目の午後は、予選の三回戦になるということは事前に分かっていたので、それに合わせて来てくれたようだ。
確かに三回戦ぐらいになってると、ある程度の実力を持った人たちが残っているからね。
良い人材がいればピグシード辺境伯領、ヘルシング伯爵領でそれぞれ勧誘していいことになっている。
そういう意味での『三領合同特別武官登用武術大会』だからね。
本当は、予選の第一試合から見た方が埋もれた人材を発見できるかもしれないが、アンナ辺境伯もエレナ伯爵も忙しいから、朝からべったりというわけにはいかなかったようだ。
まぁ代わりに俺もある程度見てるし、二人とも一応スカウト要員を派遣すると言っていたから、どこかでそのスタッフが見ていただろう。
それ故、予選一回戦二回戦の情報もある程度は手に入れているはずだ。
なんとなくだが……一回戦二回戦で敗れたとはいえ、衛兵としてスカウトできそうな埋もれた人材は結構いたんじゃないだろうか……。
どのぐらい人材が確保できるか少し楽しみだ。
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