524.大会準備、完了。

  十五日後の早朝……まだ夜明け前だが、目が覚めてしまった。


 いよいよ今日が『三領合同特別武官登用武術大会』初日なのだ!


 この十五日間で、何とか大会が行える体制を整えることができた。


 かなり内容の濃い十五日間だった。

 この十五日間に行った主なことは……


 まず『セイセイの街』と大会を開催する『コロシアム村』に、いつも通り『エンペラースライム』のリンの『スライム軍団』、『スピリット・オウル』のフウの『野鳥軍団』、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラの『野良軍団』、『スピリット・タートル』のタトルの『爬虫類軍団』を組織し、拡大充実させた。

 巡回警備、異常感知、有事の際の一般人保護などが任務となる。


 そしてニアさんは……対抗意識を燃やし、「私の猿軍団も補強しなきゃ!」とわけのわからないことを呟き、周辺の森や山を探索して新たな猿を連れて来ていた。

 というか……強制連行されたような感じで……猿たちが不憫で仕方なかった。

 なぜターゲットが猿なのかわからない……。

 他の動物でもいいような気がするが……。

 猿軍団を作ってしまったがために、猿に限られて増員が難しくなっている気がする。

 ただ今回連れてきた猿は、めっちゃかわいい猿たちだった。

 俺の元いた世界にいたリスザルにそっくりなのだ。

 というか……たぶん同じだろう。

『種族名』は、『赤リスザル』となっている。

 俺の知っているリスザルは、手足と背中の毛が黄色っぽくなっているが、このリスザルたちは赤色になっているのだ。

 サイズは同じくらいで、小さくてかわいいのだ。

 最初に仲間にした『白島猿しろしまざる』は、ニホンザルを白くした感じなので、行列の誘導とか人間に近いことができるが、リスザルは小さくてそういう仕事ができそうにない。

 まぁ他の軍団のメンバーと同じように、巡回警備などはできるけどね。



 それから、『フェアリー商会セイセイ支店』のオープンは、予定通りこの大会後に先送りにした。

 大会を行う『コロシアム村』の運営に人手が必要なので、無理にオープンすることはしなかったのだ。


『コロシアム村』の運営の人手は、何とかなった。

 これも当初考えていた通り、俺の眷属である『聖血鬼』のメンバーをフル動員した。

 ヘルシング伯爵領の執政官でもあるキャロラインさんのところに配属になったメンバーも、『聖血島』で暮らすメンバーも、応援に来てくれている。

『フェアリー商会』のスタッフで、応援に来れる者も動員させてもらった。

 ただこのメンバーは、『聖血鬼』のメンバーと違って、通常の人族なので、『正義の爪痕』をおびき寄せることができたときに、危険にさらされてしまう。

 そこで、支給した制服を特別製の防御力の高いものにしてある。

『アラクネロード』のケニーの『種族固有スキル』の『糸織り錬金』でシャツとパンツを作ってもらった。

 そしてスタッフとすぐわかるように、淡いピンク色のベストを着用するかたちだ。

 これらは、ケニーの特殊な糸で防御力を高める仕様で織り込んでもらっている。

 このユニフォームをサイズ別にいくつか作り、俺の『波動複写』で大量にコピーしたのだ。


『フェアリー商会セイセイ支店』の立ち上げメンバーになってくれた元『花色行商団』の女性たちや、『セイセイの街』で大規模就職相談会を行い、新規雇用した人たちも働いてもらっている。

 それから、ユーフェミア公爵が事前に声をかけてくれていた貴族子弟や外戚にあたる人たちも採用している。

 就職を希望する人たちのうち、何割かが『セイセイの街』まで訪ねてきたので、面接をして雇用したのだ。

 サーヤの話では、わざわざ遠路を訪ねてきた人たちなので、変な人はいなかったらしい。

 もちろん、これらの人たちにも、同様の安全対策で防御制服を支給している。


『舎弟ズ』のメンバーも、ヘルシング伯爵領の各市町と復興準備中のピグシード辺境伯領『イシード市』から駆けつけてくれている。

 彼らも、ナビーに激を飛ばされ、張り切って様々な仕事に取り組んでくれている。


 それから、影のスタッフという意味で、『スライム軍団』を始めとした各種軍団が、かなりの数配置されている。


 ユーフェミア公爵の予想通り、この大会を目当てに、そして『光柱の巫女』を目当てに人がどんどん押し寄せてきたので、『コロシアム村』は大会期間中だけでなく、前倒しでオープンさせた。

 人々の宿として受け入れを開始したのだ。


『コロシアム村』では、銭湯が稼働していて、それが大きな評判になっている。

 お風呂文化が広まってくれそうで嬉しい!

『銭湯 ふぇあり湯』という名称になっている。

『セイセイの街』では、『フェアリー商会』がオープンしていないので、まだ稼働していないが、銭湯だけでも稼働すればよかったかもしれない。


 飲食店などは期間限定なので『フェアリー商会』で全て運営しているが、屋台については期間限定でも出店したいという商人がいるだろうと思い、公募をかけた。

 目論見が当たり、かなりの申し込みがあった。

 そのお陰で、屋台はかなり充実しているのだ。

『フェアリー商会』の屋台は、どの屋台も連日行列ができる人気ぶりで、すごい売り上げを上げているようだ。

 飲食店については、喫茶店の『フェアリーキッス』と、焼肉屋『七輪焼きフェアリーグリル』と、食事処『フェアリー亭』の大規模店を作った。

 ここも連日満員だ。

 旅人が泊まれる宿をかなり増設したので、すべて素泊まりになっている。

 その影響もあり、飲食店は連日行列状態なのだ。

 料理が評判をよんで、早くもリピーターが続出しているらしい。

 まぁリピーターといっても、ここしか食べるところがないから当然と言えば当然なのだが。

 それでも、みんな食べることを楽しみに来てくれているようなので、嬉しい限りだ。

 それにしてもイベントの経済効果は予想以上にすごく、『フェアリー商会』としてもかなりの売り上げになりそうだ。

 このチャンスを逃す手はないので、急遽『フェアリー商店』もオープンして、お土産品として買ってかえれるような商品を取り揃えた。

 このイベントが終わった時点で、『フェアリー商会』としてはすごい売り上げと利益を出しそうだ。

 いくらになるのか今から楽しみだ。



『総合教会』の『光柱の巫女』テレサさんへの参拝も、相変わらず毎日行列状態だ。

 テレサさんに会いに訪れた先輩『光柱の巫女』のサーシャさんとアリアさんは、お忍びで来ていて、訪れた事は大会最終日まで内緒になっている。

 二人とも自由を満喫していた。

 屋台巡りなどを、童心に返って楽しんでいるようだった。

 ただテレサさんとの時間も作り、『光柱の巫女』としての心構えを含めた様々なことを、直接教えてくれていた。

 神々や『総合教会』のことも詳しく教えてくれていたので、英才教育をしてくれていたのだろう。


『従者獣』となった赤ちゃんパンサーたちも、みんなに可愛がられていて、すくすく成長している。


 テレサさんを含めた『光柱の巫女』三人は、大会の最終日の四日目に特別ゲストとして登場することになっている。

『従者獣』である赤ちゃんパンサーたちも、お披露目する予定だ。


 ルセーヌさんとゼニータさんの怪盗&敏腕デカの特捜コンビも、いいコンビネーションになってきているようだ。

 ただ、ゼニータさんは衛兵隊長としての仕事もあり、影の仕事はルセーヌさんがメインで担当しているようだ。

 怪しい商会である『マットウ商会』の調査は引き続き行っているが、未だ尻尾は出さない状態だ。

 ただ異物混入ワインのすり替え作戦は順調に行われ、気づかれることなく遂行できている。

 未だどんな野望なのかはわからないが、それが防げていることを祈るのみだ。



 大会に出場する予定の犬耳の少年バロンくんの特訓も順調に行われ、出場手続きも無事に終わっている。

 本日の予選から登場するので、みんなで応援したいと思っている。

『護身柔術』の先生になってくれた吟遊詩人のアグネスさんとタマルさん、訓練相手になってくれたギャビーさんとアントニオ君も、上達ぶりを高く評価していた。

『コウリュウド式伝承武術』の基礎を教えてくれた衛兵長のゼニータさんも、かなりいい線まで行くのではないかと太鼓判を押してくれていた。

 バロンくんがどんな戦いを見せてくれるか、すごく楽しみだ。





 

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