第六章
499.いざ、セイバーン公爵領へ。
秘密基地『竜羽基地』での打ち合わせの翌日、俺たちはセイバーン公爵領の西、マナゾン大河沿いの街『セイセイの街』の近郊を訪れていた。
馬車だとかなりの日数を要するが、飛竜船で飛んできたので午後には到着した。
今回一緒に来たのはユーフェミア公爵とその長女のシャリアさん、俺、ニア、リリイ、チャッピー、『アメイジングシルキー』のサーヤだ。
昨日一緒に打ち合わせをしていたアンナ辺境伯たちは、領城に戻り通常業務に戻っている。
エレナ伯爵たちも同様だ。
ちなみに南の孤島『聖血島』に残っていたメンバーも、昨日の時点で日没を契機に『竜羽基地』に戻ってきて合流していた。
今朝になって、別行動となっている。
リリイとチャッピーは一緒に来ているが、『魚使い』ジョージたちは、新たに仲間にしたカジキの浄魔『マナ・ソードフィッシュ』たちを連れて、大森林に特訓に行っている。
新しく『聖血鬼』となって仲間となった者たちも、皆大森林に特訓に行ってもらった。
『アラクネロード』のケニーに預ける者と、俺の眷属となった『聖血鬼』のキャロラインさんに預ける者とに分かれるが、特訓は合同で行うことにした。
まず最初に大森林で特訓をして、その後『ミノタウロスの小迷宮』でレベル上げをしてもらう予定である。
『下級聖血鬼 ホーリーヴァンパイア』の状態でいるよりも、レベルを上げて『中級聖血鬼 ホーリーヴァンパイアナイト』になった方が強くなり、より安全になる。
それ故に、クラスアップできるように特訓をしてもらうことにしたのだ。
その後は、予定通りの配属で頑張ってもらうつもりだ。
キャロラインさんに預ける予定の『
キャロラインさんに預ける女性『聖血鬼』のみんなと同じように、この二種類の『聖血生物』はキャロラインさんの秘密組織のメンバーとして活動してもらう。
このメンバーの活動拠点として、秘密基地を作ることにした。
エレナ伯爵とキャロラインさんとも相談して、『領都ヘルシング』の南東の森林の地下にあった『血の博士』の巨大アジトを、秘密部隊の基地として使うことにした。
『聖血生物』たちには、普段はここにいてもらうことにする。
『聖血鬼』たちは、この基地を拠点にさまざまな任務に付くことになる。
領城に近いといっても距離はあるが、エレナ伯爵もキャロラインさんも転移の魔法道具を持っているので、二人の移動自体は問題ないだろう。
俺たちがこの基地を使うことは、ほとんどないだろうが、一応秘密基地ということで『
公式秘密基地第二号だ。
秘密の基地に“公式”とつけるのは、違和感があるが……まぁいいだろう。
『領都ヘルシング近郊森林地下別荘』という名前で、俺の別荘としても一応管理物件に入っているが、使う予定が全くなかったので、秘密基地として使えて良かったと思う。
『
地元の人に、名前が言い伝えられていたそうだ。
もっとも地元の人は、空を飛べるわけではないので、森の形を見たことはないと思うが。
俺たちが飛竜船で降り立ったのは、『セイセイの街』から少し離れた街道と川の間の草原が広がる場所だ。
街道はもちろん『セイセイの街』へと続く街道で、川はマナゾン大河に注ぐ支流だ。
ここが、ユーフェミア公爵が考えているコロシアム建設予定地とのことだ。
中々いいところだと思う。
本当に新しく村を作って、人が住んでもいいような素晴らしい場所だ。
場所が決まったので、後で仲間たちとともにやってきて、みんなのスキルや能力を駆使して一気に作ってしまおうと思っている。
大きなコロシアムとその周辺に宿泊施設や食事ができる飲食店スペースを作ろうと思う。
そしてここにも、大きな銭湯を作る予定だ。
イベント当日ここで働く人たちは、『フェアリー商会』で手配することになる。
俺の仲間となり『共有スキル』が使える『聖血鬼』のメンバーをフル動員しようと思っているが、人数的に足りそうにないので、他の社員も連れて来なければいけないだろう。
装備を充実させて、安全対策を強化しておかないといけない。
警備については、セイバーン軍が担当することになっている。
もちろん、密かに俺の仲間たちも警備するけどね。
一番確実なのは、大森林の仲間たちだが、見た目が魔物なので非常事態以外では、出動させるられない。
一般人が驚かないスライムや普通の動物で、補助警備員部隊を作るしかないだろう。
そこでまず、スライムたちに可愛い麦わら帽子風デザインの帽子を作り、そこに警備員と表示して補助警備員にすることにした。スライム警備員だ。
そして『野良軍団』の中から犬たちを選出し、彼らにも専用のベストを着せて『警備犬軍団』を作ることにした。
他にも一般の動物で使えそうな動物がいないかと考えたが、みんないまいち使いづらいんだよね。
特に『野鳥軍団』と『爬虫類軍団』は、人目につく警備員には向いていない感じだ。
いつも通り自由に動き回って、何か起きたときに、人々を助けてもらうかたちにするしかないだろう。
スライムや犬なら腕のいいテイマーがいれば、人のために働いていても不自然ではないが、トカゲやスズメなどが警備員の帽子を被っていたら違和感が半端ないからね。
ビジュアル的には、かなりキュートだとは思うが……。
ちなみに、この後、サーヤには一度戻ってもらって『エンペラースライム』のリン、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・タートル』のタトルを連れてきてもらう予定だ。
ここでも、『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』を組織するためだ。
俺がそんな打ち合わせをサーヤとしていると、ニアがハイテンションで寄ってきた。
「ここは私の『猿軍団』にお任せよ! ふふふ、こんなときのために『猿軍団』があるのよ! 人に近い形態の生き物だから、警備員にはバッチリよ! ケニーに頼んで制服も作ろうかしら」
ニアが悪い笑みを浮かべている。
どうやら早速、できたての『猿軍団』を使いたいようだ。
ニアのハイテンションは不安でしかないが……ニアが言う通り、猿は人に近い姿だから、警備員として活動させやすい気はする。
『聖血島』にいる猿たちを全て動員すれば、六十三匹になるから、かなりの戦力にはなりそうだ。
子猿は、すごく可愛いからマスコット的な感じでいいかもしれない。
警備猿を誕生させるか……。
俺はニアに任せることにした。
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