482.プレオープン第三弾は、知り合いの皆さんと。

 温泉旅館のプレオープンの第二弾は、『フェアリー商会』の幹部メンバーを集めた慰労会を兼ねたもので、みんな喜んでくれていた。

 新しい体制も発表し、気持ちを新たに業務に臨んでくれる感じだった。

 招待した『マグネの街』の『ぽかぽか養護院』の子供たちも凄く喜んでくれていた。

 今回参加できなかった商会のメンバーも、随時、部門別慰労会のような感じで招待してあげようと思っている。


 そして温泉旅館プレオープン第三弾としては、各市町の文官や衛兵長や知り合いの商人を集めた懇親会を兼ねたものにした。

 招待した主な人たちは……


『マグネの街』からは、代官のダイリンさん、衛兵長のモールドさん、美人衛兵のクレアさんだ。


『領都ピグシード』からは、文官三人衆のマキバンさん、ベジタイルさん、フルールさんたちとその配下の復興特命チームのメンバーを招待した。

 それから領都守備隊の隊長のシュービルさんと副隊長のマチルダさん、『商業ギルド』のギルド長で『ビジーネ商会』の会頭もしているウインさんとその義父で副ギルド長のヤドルさん、俺専属の奴隷商人となってくれたバーバラさんも招待してある。


『ナンネの街』からは、衛兵長のビルドさんを招待した。


 ヘルシング伯爵領『サングの街』からは、『闇影の義人団』のメンバーを招待した。

 スカイさん、『商人ギルド』のギルド長のレオさん、『商人ギルド』の受付嬢ジェマさん、イカ焼き屋台の店主マックさん、『アシアラ商会』の会頭で奴隷商人バーバラさんの知人でもあるアシアさん、衛兵長のフィルさんだ。

 スカイさんは、前日の『フェアリー商会』幹部の会にも参加していたので、二日連続の参加となった。


『領都』と『ナンネの街』の『領立シンオベロン養護院』の子供たちも招待している。



 みんな喜んでくれて、宴会も大いに盛り上がった。


 この参加メンバーから、いろいろ話を聞いた中でのトピックスとしては……


 ○まず前に決まった通り、領都守備隊の副隊長で近衛兵を束ねているマチルダさんが、これから復興する『イシード市』の衛兵隊の隊長として赴任することになっている。

 それに伴って、『マグネの街』の美人衛兵のクレアさんが、領城を守る近衛隊の隊長に就任することになったのだ。

 人員の補充も進んだことから、領軍の組織体制を見直し、近衛隊を正式に復活させることにしたのである。

 クレアさんは大抜擢となるが、実力もあるし、何よりも近衛兵は信頼関係が重要なので、いい人選だと思う。

 ユリアさんやその姉のシャリアさんが、クレアさんを非常に気に入っているというのが影響していると思うが、別に問題はないだろう。

 それから、本来『領都ピグシード』には、『衛兵隊』『近衛隊』『正規軍』という三つの隊があったのだが、悪魔の襲撃事件により大幅に人員が減ったために、一度全てを合わせて『領都守備隊』というかたちにしていたのだ。

 今回、『領都守備隊』も名称を変更し、通常の『衛兵隊』とすることにした。

 隊長は、『領都守備隊』の隊長だったシュービルさんだ。

 そして『正規軍』については、復活させないで廃止にした。

 別組織として『正規軍』を持つ意味を感じなかったからだ。

 有事のときには、『衛兵隊』がそのまま『正規軍』として活動すればいいと思うんだよね。

 これにより変な縄張り争いや、無駄も省けると考えたのだ。

 そして、もし別立てで組織するなら、精鋭部隊として騎士団を組織した方がいいと思っている。

 兵士たちが目指す目標としての意味もあるし、鼓舞する意味もある。

 セイバーン公爵家次女で執政官のユリアさんの話では、強い騎士団があるというだけで、人々に安心感を与えられるし、犯罪の抑止効果もあるとのことだ。

 ただ、急いで作る必要もないので、ゆっくり考えればいいだろう。

『マグネの街』『ナンネの街』は、今まで通り『衛兵隊』を配置して、今後復興する『イシード市』にも通常通り『衛兵隊』を配置するというかたちになる。

 これら全ての隊を合わせてピグシード軍となるわけだが、シュービルさんには、軍隊長として全体を統括してもらうことにした。

 領内で唯一の貴族である俺が、一応将軍として軍をまとめる立場になっているが、特に何もしていない。

 各隊長に任せている状態だ。

 ただ、普段の衛兵としての治安維持活動も重要だが、もし魔物や悪魔の襲撃があったときに人々を守る力がないといけないので、各衛兵隊は予定通り、交代で魔物狩り遠征に行って実力を高めてもらっている。



 ○文官三人衆からは、ピグシード家直営の荘園の運営が順調で、予定通りオリジナルブランドのワインが完成したと報告があった。

 赤ワイン、ロゼワイン、オレンジワイン、白ワインが完成した。

 黒葡萄を皮ごと搾って、そのまま発酵させて種と皮を取り除いた赤ワイン。

 黒葡萄を皮ごと搾って、発酵前に皮と種を取り除いて発酵させたロゼワイン。

 白葡萄を皮ごと搾って、そのまま発酵させて種と皮を取り除いたオレンジワイン。

 白葡萄を皮ごと搾って、発酵前に皮と種を取り除いて発酵させた白ワイン。

 それぞれ『ピグシードレッド』『ピグシードロゼ』『ピグシードオレンジ』『ピグシードホワイト』という商品名にした。


 また、それぞれのワインを二次発酵させて『スパークリングワイン』を作ることにも成功してくれたようだ。

『ピグシードレッドスパークリング』『ピグシードロゼスパークリング』『ピグシードオレンジスパークリング』『ピグシードホワイトスパークリング』という商品名にした。

 容器は、領都の商業ギルド長のウインさんの商会のガラス工房にお願いして、ガラス瓶を作ってもらうことにしている。

 将来的には、『魔竹プラスチック』の容器を完成させ変更する予定だ。


 これから本格的に販売していくが、かなりいい出来なので、絶対特産品になると思う。

 確実に、ピグシード家の収益源になってくれるだろう。



 ○俺専属の奴隷商人になってくれたバーバラさんからは、奴隷となっている子供たちを多数保護したとの報告をもらっている。

 バーバラさんは奴隷商人といっても、俺と専属契約して、奴隷になりそうな子供や奴隷になっている子供を保護してくれているのだ。

 もはや奴隷商人というよりは、奴隷保護人である。

 奴隷となっている子供たちは、お金を払って買い上げているかたちになっている。

 奴隷商人を潤わせることになってしまうが、速やかに保護するためには致し方ないと思っている。

 ただこれでは、場当たり的な対処でしかなく、抜本的な解決にはならない。

 俺が購入したことによって潤った奴隷商人は、さらに奴隷を手に入れて酷い商いを続けてしまうのだ。

 そこでバーバラさんに頼んで、悪徳奴隷商人をリスト化してもらっている。

 そのリストに載るほどの悪徳業者は、叩けば埃の一つや二つは必ず出る。

 そこで悪事の証拠をつかんで、その街の衛兵に突き出す活動をしようと思っている。

 主には『アラクネーロード』のケニーが仕切っている『聖血鬼』のメンバーで構成された行商団を使って、悪事の証拠を暴き、『闇の掃除人』名義で衛兵駐屯所に突き出すかたちにする予定だ。

 行商団がすぐに行かない場所には、俺かナビーかケニーが出かけていって対処しようと思っている。

 こんなかたちで、悪徳奴隷商人の撲滅にも乗り出すつもりだ。

 奴隷制度自体を失くせればいいのだろうが、まずはできることからやっていこうと思う。


 実はバーバラさんは、子供に限らず大人で奴隷になっている人も、悪人以外は保護してくれていた。

 子供三十三人、大人二十六人を保護してくれたのだ。

 もちろん購入に使った代金は俺が払うのだが、事前に渡した資金では足りなかったはずだ。

 かなりの額を立て替えてくれたと思うのだが、どうやって調達したのか尋ねても、ニヤッと笑うだけで答えてくれなかった。

 無理をしてなければいいのだが……。

 今後もこの活動を続けてもらうので、多めに資金を渡そうと思っている。

 保護した人たちは、『イシード市』に移住してもらうつもりだ。

 大人の人は、希望が合えば『フェアリー商会』で雇用してあげて、子供たちは『ぽかぽか養護院』に入ってもらおうと思っている。


 バーバラさんは、知り合いというか弟分の『アシアラ商会』のアシアさんと久しぶりに顔を合わせて、すごく喜んでいた。

 アシアさんも、「バーバラ姉さん」と呼んで嬉しそうにしていた。

 アシアさんの話では、バーバラさんは、各地に昔からの知り合いや弟分妹分と言える存在がいるらしく、最近は疎遠になっていたものの、再び強力なネットワークとして再構築に乗り出しているとのことだ。

 バーバラさんが声をかけると、喜んで協力してくれる奴隷商人や一般の商人がかなりいるらしい。

 俺には、そこら辺のことは何も言ってくれないのだが、アシアさん曰く、バーバラさんはいつになく熱がこもっているとのことだ。

 俺の役に立ちたいと本気で思ってくれているらしい。ありがたいことだ。



 宴会の時に、なぜか俺は女性陣に囲まれた。

 美人衛兵のクレア、女性文官のフルールさん、衛兵隊長のマチルダさん、俺専属の奴隷商人となってくれたバーバラさん、『闇影の義人団』メンバーのスカイさん、『商人ギルド』の受付嬢ジェマさんが、完全に俺を取り囲み、脱出不可能な状態にされてしまったのだ。


 そしてなぜか……質問攻めにされたり、うっとり見つめられたり……とてもいたたまれない時間がロングで続いてしまった。

 真面目で控えめなイメージしかないマチルダさんにまで、うっとり見つめられたのはちょっと意外だった。

 そしてなぜか……バーバラさんは「私がもうちょっと若けりゃねぇ」とぶつぶつ言いながら、俺の体をひたすらベタベタ触っていた。……ちょっと怖かった。


 そんな状態がしばらく続き、宴会の終了とともにやっと解放され、部屋に戻ったのだが……。

 ニアとサーヤとミルキーが超速でやって来て、『頭ポカポカ攻撃』と『お尻ツネツネ攻撃』を発動した。

 しかも……今まで耐えていたからなのか……超ロングタイムで発動されてしまった……トホホ。


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