467.気合いの、宴会メニュー。
温泉旅館に作った畳敷きの大宴会場には、広いステージが作ってある。
そのステージに向かって、縦に五列テーブルが並んでいる。
普通の宴会場ならあぐらをかいて座るところだが、この世界の人たちは基本的に椅子に座る文化なので、足が痛くなるだろうと思い、掘りごたつ式にした。
そして肘掛け付きのゆったりとした座椅子に、ふかふかの座布団を引いた。
これで椅子に座るのと同じようなかたちで、ゆっくり過ごしてもらえるだろう。
食事はお盆に載せるかたちで、各々に配膳されている。
それとは別に、みんなで食べる大皿料理も置いてある。
ここは大宴会場で三百人程度収容可能な広さだが、今回は人数がそれほど多くはないので真ん中の一列だけ使って座ることにした。
その他の部分はテーブルを外し、掘りごたつ式になっている所に畳をはめると、普通の広い空間になるのだ。
食事は、今回は和風っぽいものにした。
ヘルシング伯爵領の『サングの街』で、
刺身などでも充分美味しくいただける味に仕上がったと思う。
そういえば今度ポン酢も作りたいなぁ……
やっぱり調味料を充実させたいんだよね。
『調味料プロジェクト』を始めようかなぁ……まぁ後でゆっくり考えよう。
さて、メニューは、まずご飯ものとして、『釜飯』を作った。
鶏肉、ニンジン、タケノコを使ったシンプルなものにした。
不可侵領域の中にも見つけた竹林から採ったものだ。
笹竹と言われている細い竹のタケノコを使った。
それに前に『魔竹』の林で採取していた『魔竹の子』も入れてある。
これは霊果の一種で、正確には霊菜だ。
魔力回復効果と疲労回復の効果があるとされている。
汁物は、俺の好きだった『
『
昆布で出汁をとり、サケ、ニシン、タラ、ホッケなどの魚の塩引きとダイコン、ニンジン、ジャガイモなどの根菜類を一緒に煮た塩汁である。
石狩鍋も似たようなものだが、確か石狩鍋は味噌仕立てで、三平汁は塩味という違いだったはずだ。
今回は『紅マス』と、『川ニシン』を塩漬けにしたものを使い、ダイコン、ニンジン、ジャガイモを入れた。
そしておかずは……
一、『サングの街』の名産品の『魚卵の塩漬け』……いわゆる数の子。
二、その母体ともいえる『川ニシンの甘露煮』。
これは、マナゾン大河で『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティが一本釣りというか八本釣りで釣り上げたものだ。
三、川サメの肉を使った『白身フライのタルタルソース添え』。
川サメの白身フライを試しに作って食べてみたら、凄く美味しかったのだ。
適度に弾力があり、ジューシーだった。タルタルソースとよく合うのだ。
ちなみにタルタルソースは、マヨネーズが出来上がっているので、ゆで卵と玉ねぎとお酢とパセリなどを使って仕上げた。我ながらいい出来だと思う。
マヨネーズの更に上をいくソースができたと思う。みんなが喜ぶ予感しかしない。
四、同じく川サメのフカヒレを使って、『フカヒレの姿煮』を作った。
これは醤油ベースにいろんな木の実や香草を使って、なんとかそれっぽい味の再現に成功したものだ。
特に大きかったのは、片栗粉によってとろみをつけることができたことだ。
実は、片栗粉を作ることに成功していたのだ。
この世界にも、探せば片栗粉はありそうな気がするが、今のところ見つかっていないので、自分で作ることにした。
実は意外と簡単に作れるのだ。
これは『マナ・ハキリアント』のハッキリおばばたちに依頼して、作ってもらっていた。
片栗粉は、元々はカタクリという植物の根から抽出していたようだが、ジャガイモから簡単に作ることができるのだ。
今回は大量にあるジャガイモを使って作ったのだ。
俺は元の世界にいた時に、日に当たって緑化したり、古くてもブヨブヨになったジャガイモを捨てるのがもったいなくて、片栗粉を作ったことがあったのだ。
皮を向いてすりおろしたものをコシ布に入れて、水につけて汁を取り出し沈殿させる。
その上澄み液を捨てて、きれいな水を入れてまた沈殿させ、上澄み液を捨てる。
これを三回程度繰り返して、乾燥させるときれいな片栗粉が作れるのだ。
ちなみにジャガイモをすりおろすのは、川サメの皮がすごく便利だった。
ザラザラしていて、ワサビもジャガイモも簡単にすりおろしことができた。
予定通り商品化したら、結構普及するんじゃないだろうか。
持ち手を付けた板に貼り付けて使いやすくして、商品化する予定だ。
今回は作っていないが、片栗粉ができたので中華丼なんかも作りたくなった。
流行るんじゃないだろうか。ていうか……俺が食べたいだけだが……。好きなんだよね、とろみ……。
五、川サメのすり身を使った『カマボコ』の試作品も用意してみた。
ワサビと醤油があるので『板わさ』で食べてもらう。
というか……俺自身が食べたかったのだ。
六、同様に川サメのすり身を使って、『ちくわ』も作った。
『ちくわ』は、意外と簡単に作ることができるのだ。
すり身を棒につけて、火で炙って後から棒を抜けば簡単にできてしまうのだ。
キュウリを入れたものとチーズを入れたものの二種を用意した。
七、あと『サングの街』のマックさんのいか焼き屋台で作っているのと同じ、『イカの醤油焼き』も入れた。
あえて『イカの醤油焼き』も入れてみたのだ。
この国では、イカはお金の無い人たちしか食べないようなのだが、とても美味しいので食べてみてもらいたかったのだ。
八、『川ハマグリのバター醤油焼き』も用意した。
これは『道具の博士』のアジトだった『アイテマー迷宮』で、『正義の爪痕』によって養殖されていたもので、『フェアリー水産』の養殖池に移したものだ。
身が大きくて、とても美味しいのだ。
焼いて、バターと醤油をかけると最高だ!
九、『お刺身』も一応用意してみた。
生食文化がないので抵抗があるかもしれないが、チャレンジしてもらおうと思っている。
今回用意したのは養殖している『紅マス』の刺身だ。脂ののったところを用意したので、とろサーモン的な感じで美味しく食べれると思う。
また新鮮なイカもお刺身にして二種の盛り合わせとした。
とりあえず今回は、この二種だけにして反応を見ようと思う。
十、『冷奴と湯葉の盛り合わせ』も作ることができた。
大豆を手に入れていたので、『マナ・ハキリアント』のハッキリおばばたちに作ってもらったのだ。
大体の作り方を教えて、豆腐作りに挑戦してもらったのだが、試行錯誤の末、豆腐を完成させてくれた。
俺は絹ごし豆腐が好きなんだが、今のところ木綿豆腐という感じの豆腐だ。
それでも十分だけどね。
そして豆腐が作れたことによって、湯葉もできたのだ。
俺の大好きな湯葉ができたので、すごく嬉しい!
やっぱり、和食の膳には、豆腐や湯葉が欲しいよね。
後はみんなで取り分けて食べる大皿料理もいくつか用意した。
十一、『彩りトマトと葉物野菜の盛り合わせサラダ』
これは自分で好きなものを取り分けて食べてもらうかたちだが、ソースを三種類用意した。
『マヨネーズ』と、マヨネーズにケチャップを混ぜただけの『オーロラソース』と、白身フライでも使った『タルタルソース』だ。
ちなみにトマトは、『サングの街』の名産品を全種類確保して並べてあるので、色とりどりで綺麗なのだ。
十二、『浅漬け盛り合わせ』
キュウリ、ダイコン、ニンジンを塩もみして、浅漬けを作ったのだ。
本当は『ヌカ漬け』を作りたかった。
ヌカもあるので、ヌカ床を作ることもできる。
ただヌカ床がこなれていないと、いい味が出ないので今回は見送ることにした。
今後は、『ヌカ漬け』も工夫して作っていこうと思う。
美味しい『ヌカ漬け』が食べたいんだよね。
そうだ! 漬物を大々的にやろうかな……。
漬物好きなんだよね……。
『漬物プロジェクト』をやるか! いいかもしれない!
ピクルスはこの世界でも広く普及しているようだが、それも含めて、いろんな漬物を作って漬物専門店をやろうかな……。
まぁこれもあとでゆっくり考えよう! 楽しみだ!
十三、『バッファロー魔物のステーキ』も用意した。
肉を食べたい人用に、大皿料理としてひと口サイズにカットして用意した。
今回は、『ワサビ醤油ソース』を作った。
さっぱり美味しく食べれると思う。
十四、『鶏肉の唐揚げ』
これもお肉を食べたい人用に作ってみた。
片栗粉をつけて揚げてあるので、唐揚げとは言いつつもどちらかというと竜田揚げという感じだ。
カリッと揚がって美味しいんだよね。
もちろんレモンも添えてある。
俺は“唐揚げにレモンかける派”なのだ!
そして“女の子にかけてもらうと嬉しい派”なのである!
もしかしたら、この『鶏肉の唐揚げ』が今回の一番の人気メニューになるかもしれない。
特に子供たちは、絶対好きだと思う。
がんばって和食を作ったが、意外とこういうものが受けるんだよね。
唐揚げも、今後串に刺して『から揚げ棒』として屋台の新しいメニューに加えようかとも考えている。
十五、デザートとして、『スイカとメロンの盛り合わせ』を用意した。
これは、俺が前に種をまいていたもので、もうだいぶ前から随時収穫しているのだ。
飲み物は、キンキンに冷やした『エールビール』、それにトマト果汁を入れた『レッドビール』、ドワーフの里から仕入れた『ドワーフワイン』、それを炭酸で割った『なんちゃってスパークリングワイン』を用意した。
子供たちには『フルーツジュース』と『牛乳』を用意した。
ドワーフの里で特別に分けてもらった『ドワーフコンコード』というワイン用のブドウの『ブドウジュース』も、小量だが用意した。
ちなみにワインのお供として、ドワーフたちが分けてくれた『ドワーフチーズ』も少量だが用意した。
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