465.笑撃の、ドラゴン軍団。
俺たちは、転移の魔法道具で秘密基地である『竜羽基地』に移動した。
これから『ライジングカープ』のキンちゃんを呼んで、お披露目する予定だ。
どうせならアンナ辺境伯たちも呼ぼうと思い、転移の魔法道具を持っているドロシーちゃんに通信機能を使って連絡した。
すぐにアンナ辺境伯たちも転移してきた。
『ナンネの街』の代官のミリアさんも、転移の魔法道具で迎えに行って連れてきた。
そして『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんも、転移の魔法道具の通信機能で連絡をして、呼び寄せた。
こうして、この秘密基地に集まったのは……
第一王女で審問官のクリスティアさん、その護衛官のエマさん、ユーフェミア=セイバーン公爵、その長女のシャリアさん、次女でピグシード辺境伯領執政官のユリアさん、三女でピグシード辺境伯領『ナンネの街』の代官のミリアさん、アンナ=ピグシード辺境伯、その長女のソフィアちゃん、次女もタリアちゃん、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃん、エレナ=ヘルシング伯爵、ヘルシング伯爵領執政官のキャロラインさん、ドワーフの天才少女ミネちゃんの十三人だ。
早速、サーヤの転移でキンちゃんに来てもらった。
「オーナー、おまたせ〜。うちのファンっていうのは、この子たち? みんなまじ可愛いし! まじアゲアゲって感じ! そんなにうちとマブになりたいわけ! オフィシャルファンクラブ作る予定だし、大歓迎だし!まじまんじ!」
突然現れた『こいのぼり』サイズの金色の空飛ぶ錦鯉が、そんな言葉を発したのだから……ユーフェミア公爵を始めとした初めて会った皆さんは、固まるしかなかった……。
俺が改めて紹介するまで、誰も声を発しなかったからね。
キンちゃんにもみんなを紹介して、今回来てもらった事情を説明した。
そして『種族固有スキル』の『登竜門』を使って、ドラゴンになってもらうことにした。
「うちは、ドラゴン王にきっとなるし! 『登竜門』ッ! 」
キンちゃんはそう叫び、『種族固有スキル』である『登竜門』を発動した!
いつものように、ド派手なエフェクトが展開され、全身から水流をほとばしらせたキンちゃんが、滝を登り巨大で豪奢な門をくぐった!
そして、目が眩むほどの光を発する“黄金の龍”となって出現したのだ!
全身を黄金の鱗に包まれ、所々にピンクの鱗がアクセントのように、きれいに配置されている。
眩しく、そして美しい龍である。
“威風堂々”とした“黄金の龍”の光が、みんなを照らした。
こう見ると本当に神々しい……。
『
口から覗く牙や両手足の爪は、見るものを畏怖させずにはいられない、恐ろしさも兼ね備えているのだ。
ユーフェミア公爵をはじめとした皆さんは、只々呆然と見つめている。
そして、涙ぐんでいるようにも見える。
俺はユーフェミア公爵たちに、改めて『ライジングカープ』のレアな『種族固有スキル』である『登竜門』の説明をした。
一時的にドラゴンの力を得るもので、活動時間が限られた一時的な強化スキルであることを説明し、あくまで本来のドラゴンとは違うということを説明したのだ。
そして『登竜門』を通って、一時的にドラゴンになった状態を、『
一般に存在するドラゴンの階級は、基本的に下から『亜竜』『下級竜』『中級竜』『上級竜』『
ドラゴンの階級については、古い書物などに載っているようで、ユーフェミア公爵やドロシーちゃんは知っていたようだ。
ただ『
そんな皆さんの衝撃をよそに、当のキンちゃんは、その威風堂々とした姿とは全く似つかわしくない、いつもの口調で軽口を叩いてドヤ顔になっている……
「この姿なら、どんな悪い奴も瞬殺バイバイだし! 今の
場の空気が……すごく微妙な感じなんですけど……。
「しかし……この姿は……伝え聞く……そして絵に残っているコウリュウ様の姿そのものだよ……。所々にあるピンクの鱗は違っているが、それ以外はコウリュウ様にしか見えない……。キン様は、本当にコウリュウ様の使いではないのですか?」
あのユーフェミア公爵が、恐る恐る質問している。
「そんなユーフェミアちゃん、うちらもうマブだし。キン様はNGだし! キンさんは名奉行じゃないからもっとNGだし! キンちゃんて呼んで欲しいし! コウリュウ様の事は知らないし。うちはドラゴン王になるけどコウリュウ様は神なのかし? ゴッドドラゴン……まじ激アツだし! できるなら会ってみたいし! ドラゴン王になったら、会えるかもしれないし! その時はユーフェミアちゃんにも紹介するし!」
キンちゃんはそう答えると、口をパクパクさせた。
今までは、このドラゴンの姿で長く話しているところを見なかったので気づかなかったが、どうも『ライジングカープ』の癖で、ついつい口をパクパクさせてしまうようだ。
なんかちょっとかわいい感じだ。
ユーフェミア公爵は、一応質問には答えてもらったのだが、キンちゃんのあまりの独特の口調にまだ慣れていないらしく、固まりつつ苦笑いしていた。
「それから、せっかくだからうちの仲間も紹介するし! カープ騎士たちだし! みんな集合だし!」
キンちゃんがそう言うと、すぐにサーヤの転移で他の『ライジングカープ』たちが現れた。
サーヤの転移は、表向き転移の魔法道具を使っているということにしてあるので、見せてしまっても平気なのだ。
新たに九体の『ライジングカープ』が現れて、ユーフェミア公爵たちはまた言葉を失っている。
全員揃ったカープ騎士たちは、嬉しそうに口をパクパクさせている。
いつ見てもユーモラスでかわいい感じだ。
「じゃぁメンバー紹介するし! 自己紹介だし!」
キンちゃんが声をかけると、みんな嬉しそうに口をパクパクさせた。
「「「よろしくお願いしやーす!」」」
「じゃぁ改めてうちから言うし。うちらカープ騎士だし。うちは監督で、打撃コーチもやってるし、うちら誰にも負けないし。みんなでドラゴン王になるし! まじまんじ!」
キンちゃんが改めて自己紹介というか……なぜかチームでの役割の紹介をしている……。
相変わらず監督ポジションだが……打撃コーチって何よ?
「マ、マネージャーのギンです。よ、よろしくお願いします。バ、バッテリーコーチもやらせてもらってます」
銀色鯉のギンちゃんが、少しおどおどしながら言った。
そういえばこの子、気弱キャラなんだよね。
バッテリーって……誰と誰なのよ?
どうせならポジションもちゃんと言って欲しいわ……ダメだ……わけ分かんなくなってきた……。
「ヒロっす。キャプテンやらしてもらってるっす。よろしくっす。あと、守備走塁コーチもやってるっす!」
赤色鯉のヒロちゃんが言った。
相変わらずの下っ端口調が印象的だ。
ところで『ライジングカープ』たちの守備走塁って……なんなわけ……どういうこと……?
「自分は、シマです。スカウト担当です」
赤白混合鯉のシマちゃんが言った。
スカウトって……どこからしてくるわけ?
なんか……だんだんツッコミ入れるのが疲れてきた……もうツッコムのはやめよう……。
「アオオです。広報担当です。よろしくお願いします」
青色鯉のアオオちゃんが、広報担当らしく明るく言った。
てか……広報って……。
「私は、キキキです。育成担当です! 熱い情熱の君を待っている!」
黄色鯉のキキキちゃんが、すごいドヤ顔だ。
育成担当って……誰を育成してるんだろう……?
そして、熱い情熱の君って……誰に向かってメッセージ送ってるわけ?
「ピピピと申します。情報分析担当です」
ピンク色鯉のピピピは、情報分析担当のようだ。
今度こそツッコまないよ……。
「ミドドです! 筋トレ担当やってまーす!」
緑色鯉のミドドは、脳筋っぽい感じで声を張り上げている。
筋トレね……ツッコミませんよもう……。
「ムララです。ヘルスケア担当……心と体をケアします……ムフ」
紫色鯉のムララは、少しだけ艶っぽい感じで話している。
もちろんツッコミませんよ。
「オレレと申します。寮母担当です!私をお母さんだと思って、何でも言ってね!」
オレンジ色鯉のオレレが、優しげに微笑んでいる。
ダメだ……もう我慢できない!
寮母ってなに!?
寮とかあるわけ? 何するわけよ、いったい?
「審判を拝命しておりますグレレです。ホーム整備担当も兼務させていただいております。恐縮です。今後とも、何卒、よろしくお願い申し上げます」
グレー色鯉のグレレは、審判という意味不明な役割の堅物キャラだったのを思い出した。
なんか色々とおかしい……ツッコミどころが多すぎて……。
もうゲンナリ疲れてしまった……。
そしてやはりユーフェミア公爵たちも……わけのわからない自己紹介に圧倒されたようで……全員苦笑いを浮かべながら固まっている。
まぁそうなるよね……。
そんな俺たちの状況なんてお構いなしに、キンちゃんの合図で、九体の『ライジングカープ』たちが『種族固有スキル』の『登竜門』を発動した。
『登竜門』はレアな『種族固有スキル』で必ず発現するわけではないのだが、この子たちは必死の努力でみんな身につけてしまったのだ。
みんな次々に龍の姿になった。
基本的にはキンちゃんと色違いの姿だが、キンちゃん含め十体も龍が並ぶと、もう違う世界にいるみたいだ。
キンちゃんの黄金龍に続いて、白銀龍、赤色龍、紅白龍、青色龍、黄色龍、桃色龍、緑色龍、紫色龍、橙色龍、灰色龍が揃い圧巻だ!
一時的な強化スキルとは言え、十体のドラゴン軍団は……凶悪すぎるんじゃないだろうか……。
魔王とかでも、普通にボコれる気がする。
まぁ実際は、この姿で戦うのは周辺被害が多すぎて厳しいんだけどね。
周辺被害を気にしないで戦える局面なら、無双状態だろう。
ユーフェミア公爵たちは……全員口をあんぐりさせている……。
これはこれでめっちゃレアな映像だが……みんな大丈夫だろうか……。
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