457.サルベージ品の、中身。

 俺は船に戻って、『波動収納』や『アイテムボックス』スキルで問題なく宝箱を回収できたことを皆に告げた。

 みんな待ち切れない表情をしているので、回収した宝箱を取り出して並べた。


 よくあるサイズの宝箱が三つと大きな宝箱が一つある。


 まず通常サイズ宝箱の一つ目を開けてみる。


 おお、いきなり金貨だ!


 みんなから歓声が上がる!


 特にジョージは、鼻息がめっちゃ荒くなっている。


 正確には、コウリュウド金貨、コウリュウド銀貨、コウリュウド銅貨が混ざったものだった。

 おそらく買い付けるための資金か、もしくは商売の売上だったのではないだろうか。


 全部が金貨だったとしたら、確実に一億ゴル以上はあるだろうが、銀貨や銅貨が多いから、五、六千万くらいかもしれない。

 まぁ『波動収納』に全部回収してみれば、正確にいくらかは出るけどね。


 驚いたことに、宝箱の中に水が流入していなかった。

 したがって硬貨は汚れておらず、普通に使える状態だ。


 むしろこの宝箱自体の性能が、お宝なんじゃないだろうか……。

 かなり質の高い宝箱のようだ。

 今まで宝箱の性能を気にしたことはなかったが、実は様々な性能の宝箱があるのかもしれない。

 魔法カバンの構造になっている宝箱があっても不思議ではないし。

 ただ冷静に考えると、宝箱のようなかさばって運びにくい物を魔法カバンの構造にする意味がないか……。

 薄っぺらいカバンが一番便利だからね。

 宝箱型の魔法カバンなんて、この前見つけた紙袋型の魔法カバンのように、遊び心がないと普通は作らないよね。


 俺は、気になったので宝箱を『波動鑑定』をしてみた。

 すると……『名称』が『精密密閉宝箱』となっていて、『階級』が『上級ハイ』だった。

 やはりこの宝箱自体が、かなり価値ある物のようだ。

 他の回収した宝箱も痛んでないので、同じものなのだろう。

 大きな宝箱も同じシリーズに違いない。

 これとは違う普通の宝箱が、おそらく朽ちて壊れていたものだろう。


 このお金は、俺が密かに行っている仲間たちのための各種の貯金に割り振ろうと思っている。


 二つ目の宝箱を開けると……


 これは……どう見ても人形だ……いろんな動物のかわいいフィギュアだ!

 骨細工の人形のようだ!

 手のひらサイズのリアルな造形の……それでいて可愛いフィギュアだ!


 まさか異世界にこんな可愛いフィギュアがあるなんて……。

 これはおそらく……貴族の婦人や子息が喜んで買うだろう。

 一体どこでこんなものを作っているのか……むしろそっちを知りたい。


 そしてニアとリリイ、チャッピーは、とろける眼差しで見つめている。

 気に入ったようだ。


「なにこれ……すごく可愛い!」


 そう言って宝箱にダイブしたニアであるが、このフィギュアたちとニアはそれほど大きさが変わらない。

 ニアにとっては、大きなぬいぐるみ的なサイズ感だろうが、それでもすごい気に入ったようだ。


「かわいいのだ!」

「すごいなの〜。チャッピー欲しいなの!」


 リリイとチャッピーも、手に取って眺めている。

 満面のニコニコだ!


「めんこいごど〜。この人形、いいの」

「我が闇の眷属たちが現れ、我に支配を求めている。よかろう……我の元に集い、その力を解放せよ!」

「素晴らしい造形です。実にいいフォルムです。記念に一つ頂戴できれば、望外の喜びです」


 『魚使い』ジョージと、その使い魔ファミリアの『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティと仲間の虫馬『サソリバギー』のスコピンも、独特の感想を述べている。

 ジョージはテンションが上がって、さっきから訛りっぱなしだし、オクティは相変わらず中二病をこじらせているし、スコピンは見た目のいかつさに反して堅物すぎるんですけど……。

 そして、気がつけばスコピンは念話でなく普通の会話をしている。

 俺の『絆』メンバーは、『絆』スキルの機能拡張で、本人が強く望めば人族の通常会話ができるのだが、スコピンは早くもできるようになったようだ。

 それだけジョージやオクティと、普通に話したかったのだろう。


 このフィギュアたちは、おそらく買い付けた商品だと思う。

 これを見て思ったけど、娯楽やおもちゃの少ないこの世界で、こんな可愛いフィギュアを作って販売したら、みんな欲しがるんじゃないだろうか。

 そしてどこの世界でも、コレクター魂を持つ人はいるはずだから、シリーズ物とかだったら揃えたくなるよね。

『フェアリー商会』で作ってみるかな……


 俺は、念のために『波動鑑定』をかけてみた。


 『名称』が『骨細工人形』となっていて、『階級』がなんと『上級』だ!

 相変わらず『階級』の基準はよくわからないが、かなり程度がいいとか、細工が精密とかいうことなのだろう。

 かなりの逸品のようだ。


 種類は、全部で十二種類あるみたいだ。

 あれ……これって……


 最初は気づかなかったが、この動物たちをよく見たら、干支の……十二支の動物たちだった。


 この世界に十二支なんてあるのだろうか……?

 すぐにニアに確認してみたが、十二支というものをニアは知らないそうだ。


 となると……これを作った人って……転移者か……転生者……。

 いつどこで誰が作ったのか全くわからないが……もし今も生きているなら、会ってみたいものだ。


 確認すると十二支のセットが五セットあった。


 俺は仲間たちに、欲しいものを一つずつあげることにした。


 ちなみに動物ごとに希望者を募ると……


 鼠……ジョージ

 牛……オクティ

 虎……『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ

 兎……チャッピー

 龍……『竜馬』のオリョウ

 蛇……『スピリット・タートル』のタトル

 馬……スコピン

 羊……ニア

 猿……『ミミックデラックス』のシチミ

 鳥……『スピリット・オウル』のフウ

 犬……リリイ

 猪……『エンペラースライム』のリン


 ここにはいないメンバーについても、あとで希望があればあげようと思っている。



  三つ目の宝箱を開けると……


 アクセサリーがいっぱい詰まっていた!


 ほとんどが貝殻のアクセサリーだが、真珠のアクセサリーも結構ある。

 白真珠、黒真珠それから赤真珠、青真珠もある。

 ピンク色の真珠や金色の真珠もあるようだ。

 これはかなりの装飾品なのではないだろうか……。


 これも欲しいメンバーにあげようと思っているが、争奪戦になるような予感をする……。

 できれば今後の参考のために、いくらぐらいの価値のなのか装飾品を扱うお店に持ち込んでみたい気がするが……。

 その後に、みんなにあげることにするか!


 ということで、この宝の分配は、少し待ってもらうことにした。



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