441.眷属として、共に生きる。

 俺とナビーの頭の中でのやりとりが一段落して、みんなに何が起きたのか説明しようと思っていたところ、キャロラインさんが真っ赤になりながら俺のほうに近づいてきた。

 どうやら自分でステータスを確認して、俺の眷属になっていることを知ったようだ。


「あ、あの……ありがとうございます。突然のことで驚きましたが……覚悟を決めました。不束者ですが末永くよろしくお願いします……」


 色白の肌を真っ赤にして、キャロラインさんが恥ずかしそうに言った。乙女の恥じらいだ……。

 なんだろうこの感じ……なんか結婚を承諾してもらったような雰囲気の返答なんだけど……

 そう思いつつも、そんなキャロラインさんがちょっと可愛かったので、ニヤけてしまった。


 や、やばい……って遅かった……


 速攻でニアの『頭ポカポカ攻撃』に襲われた。

 でもサーヤとミルキーはいないから『お尻ツネツネ攻撃』は大丈夫だろうと安心していたのだが……

 あいたた……何故か第一王女のクリスティアさんと護衛官のエマさんが、俺の両サイドからお尻をツネった。

 どうしてよ!

 なんでこの連携に普通に参加してるわけ?

 交代要員なの!? ……どんだけ選手層厚いんだよ!


 まぁ今はほっておこう……トホホ。

 早くキャロラインさんに声をかけないと、変な感じにまとまっても困るからね……。


「あ、あの……私も突然のことなので……なんかすいません……」


 声をかけたのはいいものの……俺自身どうしようかまとまっていなかったので、しどろもどろになってしまった。


「いえ、いいんです……。わ、私は……精一杯、あなたを支えるだけですから……」


 やばい……キャロラインさんが、完全に女の顔になってる気がする……


 そしてなぜか女子たち視線が俺に集中しているが……少し殺気がこもっているような気も……。


 ニア、リリイ、チャッピー、『ドワーフ』天才少女のミネちゃん、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃん、クリスティアさん、エマさん、セイバーン公爵家長女のシャリアさんまでは、今までの付き合いがあるから、厳しい視線を送るのはわかる気もするが…… なぜにエレナさんまで俺を睨んでるわけ……?

 ユーフェミア公爵は、面白そうにニヤニヤしてるし……


 ヘルシング伯爵と夫人のボニーさんは、少しひいてる感じだ。


「あの……無理に私の仲間になる必要はないです。あなたの力は、これからエレナさんや領民に必要でしょうし……」


「え、ええ……そうですね。残念ですが……確かに私にはまだやらなければならないことがあります。領民への償いも残っていますから……。契りは済ませたとはいえ、まだ同居はできません。ですが、心だけは、いつも側におります」


 キャロラインさんがしおらしく、そして可愛く言ったので、少しドキッとしてしまった。

 ほんの一瞬だったのに……ニアさんはそれを見逃さず、『頭ポカポカ攻撃』を繰り出した。

 そしてサーヤとミルキーの交代要員と化しているクリスティアさんとエマさんも連動して、『お尻ツネツネ攻撃』を発動していた……トホホ。


 それはそうと……可愛さに誤魔化されそうになったが……キャロラインさんの発言内容は……なんか嫁に来る的なやばい感じになっていたけど……これどうすればいいんだろう……。

 そしてこんな時に、ナビーは全く反応してくれない……。

 と思っても、やはり反応なしだ……スルーかい!

 ってか、ナビー……この状況を楽しんでるな……絶対そうだ……トホホ。


 いたたまれなくなった俺は、場の雰囲気を変えるために、キャロラインさんに何が起こったのかをみんなに説明することにした。


 みんな微妙に何が起きたのか、よくわかっていないだろうからね。


 俺は、キャロラインさんが吸血鬼から『聖血鬼せいけつき』という種族に変性してしまったことを伝えた。

 ただ俺の血のせいで変わったと正直に説明するのも微妙だったので……俺の血に妖精族の秘薬を混ぜたものだったということにした。

 それが突然変異的に変性を引き起こしてしまったのだろうという説明にした。

 ナビーが考えてくれた説明なのだ。

 もちろんニアにも協力してもらった。


 みんなよくわからない感じでありつつも、キャロラインさんが大丈夫だということで安心してくれた。

 そのお陰で深くは追求されなかった。

 そしてユーフェミア公爵は、完全に疑いの目でニヤニヤしながら俺を見ていた。

 シャリアさんやクリスティアさんも同じように、ニヤッとしている。

 この人たち……鋭いからな……。

 少なくとも俺の説明に、誤魔化しが入っていることは見抜いてるんだよなぁ……多分。

 あえて突っ込まないでくれているみたいだけど。


 肝心のキャロラインさんについては、俺の眷属になったことで自動的に『絆』登録メンバーになるので、念話ができたり、『共有スキル』などが適用されてしまう。

 個別に適用させないという選択をする機能もあるが、どうせなら仲間たちと同じように『共有スキル』を使ってもらった方が安全だ。

 ただそのためには、個別に時間をとって色々と説明をして、偽装ステータスも貼り付けないといけない。


 すぐにでも説明をしたいので、キャロラインさんを誘おうと思ったら、言葉を出す寸前に、頭の中でナビーが止めた。


(今の状況で、二人っきりで会う誘いをするのは、やめた方がいいと思います。キャロラインさんも誤解しますし、周りの女性たちにも衝撃が走りますので。ここはニアに協力してもらって、ニアから誘ってもらってください)


 おお、さすがナビー!

 未然に紛争を回避してくれたようだ。ありがとうナビー!

 俺は久々にイメージの中で、ナビーを抱きしめた。

 ナビーは顕現して実体を持つことができるので、本当にナビーを抱きしめることもできるのだが……

 いざ目の前に現れると、美人秘書すぎて……とてもじゃないけど、抱きつくことなんてできないんだよね。

 そんな風に思っていると……


 (相変わらずセクハラです! いい加減にしてください! セクハラには死を!)


 ナビーにお叱りを受けてしまった……トホホ。

 そしていつもにはない過激な言葉が……本当に折檻されそうで怖いんですけど……。

 どうか俺を『舎弟ズ』たちのように、ド変態の道には進ませないでほしい……。


 打ち合わせが終わった後、ニアの仲介で、キャロラインさんと打ち合わせをした。

 俺が保護した『使い人』の子たちに、打ち明けている内容を話した。

 まぁ主には『共有スキル』のこと、俺の仲間たちのこと、念話のこと、安全のために偽装ステータスを貼り付けること、秘密を守ってもらうことなどである。

 キャロラインさんは、目をキラキラさせて話を聞いて、秘密保持などすべて喜んで了承してくれた。

「二人だけの秘密は、必ず守ります!」というわけのわからないことも言っていたが……全然二人だけの秘密じゃないんですけど……。

 若干の不安は残るが、まぁいいだろう。

 後はきっと、ニアやサーヤやケニー、そしてナビーがフォローしてくれるだろう。



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