426.サプライズ、召喚!

 話が一段落したところで、ナビーから念話が入った。


 つかまっていた四十三名の人たちは、無事に『死人薬』の摘出を終えたようだ。

 今は、みんなを休ませて食事を与えているとのことだ。


 このアジトはかなり広いが、一応危険な物がないか全域を確認する必要がある。


 人手がほしいので、領都にいる仲間たちを呼び寄せることにした。


 ただ、まだ何が起こるか分からないので、『エンペラースライム』のリン、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・タートル』のタトルは領都に残って警戒に当たってもらうことにした。


 そして、このメンバーを選んだ理由は他にもある。

『領都ヘルシング』にいる野良スライムや野良動物たちを集めるためだ。

『領都ヘルシング』でも、『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』を組織してもらうことにしたのだ。

 リンたちには、領都の警戒を続けながら仲間集めをしてもらうということになる。



 少しして、ニアたちが駆けつけてくれた。

 俺たちは手分けして、このアジトを探索することにした。




 ◇




 しばらくして、大体の探索が終わった。

 おそらく……一般的なドーム球場五個分ぐらいの広さがあるのではないだろうか。


 まず巨大な倉庫があり、大量の食料が保管されていた。

 食料は、一旦全て俺の『波動収納』に回収したが、後でヘルシング伯爵の妹のエレナさんに話して、この領の各市町の貧しい人たちに配ってもらおうと思っている。


 武器やアイテムなどの保管庫もあった。

『階級』はそれほど高くないが、大量の武器が保管されていた。

 さっとしか見ていないが、特に変わった武器はなかった感じだ。

 ただ、『正義の爪痕』オリジナルの『連射式吹き矢』や『連射式クロスボウ』がいくつかストックしてあった。

 また、『死人薬』などのオリジナルの薬もストックされていた。

 これらについては、念のため、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんに確認してもらおうと思っている。


 ちなみに領都に一緒にいた『ドワーフ』のミネちゃんとドロシーちゃんも、このアジトの探索を手伝ってくれている。


『血の博士』『魔導の博士』『謎の博士』の三体の『上級吸血鬼 ヴァンパイアロード』たちの研究資料などを探したが、いまのところ発見できていない。

 どこかに隠してあるのだろう。


『正義の爪痕』により飼育されていた荷引き動物や家畜動物たちも発見し、保護した。

 荷引き動物は、竜馬が五頭となぜかラクダが五頭いた。

『魚使い』のジョージ君の仲間だという虫馬『サソリバギー』のスコピンもいたので、もちろんジョージ君の元に返してあげた。

 ジョージ君と使い魔ファミリアの『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティは、スコピンとの再会を喜んでいた。


 飼育されていた家畜動物は、ヤギ三十二頭、ニワトリ五十三羽、アヒル二十三羽と、なぜかダチョウが五羽いた。

 ダチョウは採卵用に飼育していたのだろうか……。


 これらの動物たちは、俺の方で保護することにした。

『フェアリー牧場』の仲間にしようと思っている。

 当面『ナンネの街』のフェアリー牧場に入ってもらって、今後『イシード市』を復興するときに、そこの牧場のメンバーにしようと思っている。



 各市町の防衛に出動してくれた仲間たちからも、続々と念話が入っていた。

 みんな死者を出さずに守りきってくれたようだ。

 防衛戦に参加してくれたみんなは、『吸血蝙蝠ヴァンパイアバット』と『吸血ヴァンパイアモスキート』たちが出現した場所を探して、そこを叩くというので、許可を出した。


 おそらく、この領内の何カ所かにアジトがあって、分散して『吸血蝙蝠ヴァンパイアバット』と『吸血ヴァンパイアモスキート』たちを育成していたのだろう。

 そうでなければ、ほぼ同じようなタイミングで各市町を襲うことはできなかったはずなのだ。

 そう考えると、各市町に比較的近い場所に、何箇所かの育成アジトがあると考えるのが合理的である。


 俺は、このアジトの中にある資料をできるだけ探しだすように、ナビーに頼んだ。

 他のアジトを探す手がかりがあれば、アジト探索をしている仲間たちの助けになるからね。


 そんな話をしていたら、ドロシーちゃんが、転移の魔法道具で一旦ピグシード辺境伯領の領城に戻って、第一王女で審問官のクリスティアさんと護衛のエマさんを連れてくると提案してくれた。


 確かに彼女たちが来てくれれば、とらえてある『魔導の博士』と『謎の博士』を尋問して、重要な資料のありかを聞き出すことができる。

 当然、他のアジトの情報も聞けるから、それが一番早いかもしれない。


 俺はドロシーちゃんの提案を受け入れ、連れてきてくれるようにお願いした。



 程なくして、クリスティアさんとエマさんがやってきた。


 まずは、『状態異常付与』スキルで『眠り』を与えている『魔導の博士』から尋問してもらうことにした。


 厳重に拘束して、『眠り』を解除して、意識を取り戻させた。

 そして、あとの尋問はクリスティアさんにお願いすることにした。



 俺は仲間たちに、『魚使い』のジョージ君とその使い魔ファミリアの『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティとその仲間の虫馬『サソリバギー』のスコピンを紹介した。


 そんな時だ……『ミミックデラックス』のシチミが、突然ガタガタと震えだした!


「あ! な、なんか……なんかくる! オイラ……あー……なんか出ちゃう!」


 シチミが突然そんなことを言うと、宝箱の蓋が閉じて、ガタガタ震え出した。

 そして、まばゆい光を発した!


 次の瞬間、宝箱の蓋が開き、一メートル四方の大きな箱が飛び出してきた!


 その箱には、プレートが付いている。


 プレートを読むと……『魚使い用の伝説の最強装備セット』と書かれていた。


 え! なにこれ……?


 シチミによれば……どうも新しい『種族固有スキル』の『サプライズ召喚』が、突然発動してしまったようだ。


 まぁ『サプライズ召喚』というスキルだけあって、本人にもいつ発動するかわからないようだ。


 そして出てきたのが、『魚使い用の伝説の最強装備セット』である。


 『魚使い』のジョージ君を紹介した途端に『サプライズ召喚』が発生するなんて……

  何か……触発されたのだろうか……。


 そもそもの疑問だが、シチミたちの『宝物召喚』や『サプライズ召喚』で出るものは、一体どこから来るのだろうか……。

 深く考えてもしょうがないから、今までは考えないようにしていたけど……。


 このタイミングで『サプライズ召喚』が発生して、これが現れたということは、『魚使い』のジョージ君に使えということだろう……。



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