361.中級吸血鬼、ヴァンパイアナイト。
宙を舞う四体の蝙蝠が空中に静止すると、目をさらに赤く光らせた!
次の瞬間——
パンッ——
赤い煙が広がり、すぐに霧散した!
そして蝙蝠が一瞬にして人型に変化していた!
現れた四人は……見た目は人間だが……
『波動鑑定』すると……『種族名』が『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』となっていた!
なんと! 中級吸血鬼……上級吸血鬼で『ヴァンパイアロード』の『血の博士』ではないようだが、それに次ぐ幹部ということだろう。
このアジトの異変を察知して、現れたということか……
蝙蝠に変身できるなんて……なんとお約束な奴らだ……。
四人ともレベルが45前後ある。
『種族固有スキル』に『血の命令』というのがあったから、おそらく先程の超音波がそれなのだろう。
『下級吸血鬼 ヴァンパイア』に命令できるようだ。
おそらく『下級吸血鬼 ヴァンパイア』の『種族固有スキル』の『血の暗示』の上位互換スキルなのだろう。
他に『種族固有スキル』で、『蝙蝠変化』と『闇纏い』というものを持っている。
蝙蝠の姿で現れたのは、『蝙蝠変化』を使ったということだろう。
これにより、飛行能力を得ることができるようだ。
『闇纏い』は、体の周囲に太陽光を遮断する不可視の障壁を発生させるようだ。
これにより、太陽光の下でも活動できるのだろう。
前に『上級吸血鬼 ヴァンパイアロード』は、太陽光の下でも活動できるという話を聞いたが、『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』もこの『種族固有スキル』で同様に活動できるのだろう。
四体の『ヴァンパイアナイト』は、黒いタキシードのような服を着ている。
少し赤みを帯びた瞳が、冷徹に周囲を見回した。
なに!
——バンッ、バンッ、バンッ
ヴァンパイアナイトの一体が、突然超速移動で『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんに飛びかかろうとした。
だが即座に反応した『魔盾 千手盾』が、盾から十二本の腕を出しパンチングで迎撃したのだった。
『ヴァンパイアナイト』は大きく後方に弾き飛ばされたが、吸血鬼の超回復力ですぐにダメージが回復されていた。
「わあ! びっくりしたのです。や、やばびのです……」
さすがのミネちゃんも、突然『ヴァンパイアナイト』に襲い掛かられびびったようだ。
「サーヤ、タトル、ミネちゃんのガードを頼む!」
念のため、ミネちゃんのカードを厚くしておいた方がいいだろう。
「かしこまりました!」
「お任せください!」
二人がすぐにミネちゃんの左右に移動して警戒態勢をとる。
ミネちゃん自身も、焦って装備を整え出した。
以前見せてくれた『オリハルコン』製の高性能の魔法の風呂敷である『魔法風呂敷 マルチブルクロス』を取り出して、アメコミヒーローのマントのような形にして装着した。
『オリハルコン』の黄金色をあえて黒く変色させているので、ダークな感じのかっこいいマントになっている。
防御力も高く、魔力を貯蔵できる魔法電池の機能もあるし、念の力で変形させて武器に変えることもできる優れものだ。
『
次にミネちゃんは、魔法カバン構造になっているベストのお腹のポケットから、四角い箱を取り出した!
これも前に見せてもらった魔法道具だ。
『名称』が『
何度見ても……俺が好きだった女神を守るために戦う星座の戦士たちのアニメに出てきた、鎧を入れる箱に見える。
背負いたい衝動にかられてしまう……
そんな事はどうでもいいが……。
「展開!」
ミネちゃんが箱に触れて、
箱はすぐに変形し、楕円形のベビーウォーカーにそっくりの機動司令室が完成した。
ミネちゃんはすぐに乗り込み操縦桿を握ると、ホバー状態になった。
ミネちゃんの戦闘態勢は整ったようだ。
まぁ千手盾とサーヤとタトルがいるから、防御面ではほとんど心配は無いけどね。
「この『ドワーフ銀』の武器を使ってくださいなのです!」
落ちついたミネちゃんは、なにかを思い出したかのように手を叩くと叫んだ。
そして、お腹の魔法ポケットから、『ドワーフ銀』製の武器を取り出し並べた。
お腹からいろいろ取り出すのって、やっぱり俺が知ってる未来から来た猫型ロボットの感じにそっくりだ!
なぜか……テンションが上がる!
投擲槍、投擲斧、ダガーがそれぞれ十本程度出てきた。
ダガーは、投擲小剣といってもいい武器なので、全て投げて使う感じの武器だ。
まぁ投げて使うというよりも、吸血鬼の胸に突き立てて無力化するための武器ということだろう。
吸血鬼一体につき、一つの武器を使うので、数が必要になるから、これだけあるのは非常にありがたい。
まぁ今は四体だから、四本あれば済む話ではあるが。
それにしても……どうしてこんなに吸血鬼用の武器が……
「ミネちゃん、ありがとう! 吸血鬼用の武器をどうしてこんなに?」
「悪い組織の四人目の博士が吸血鬼だって聞いたから、昨日頑張って作ったのです!」
なんと……わざわざ作ってきてくれたのか……。
リリイとチャッピーにプレゼントしてくれた転移の魔法道具『転移の羅針盤 百式 お友達カスタム』は、通信機能が付いていたから、リリイとチャッピーと話をして聞いたのだろう。
そのおかげで、今回は非常に助かった。
本来なら俺が事前に『ドワーフ』たちにお願いして、『ドワーフ銀』の武器を用意しておくべきだった……。
今更ながら反省しているが……今は反省している場合ではない。後にしよう。
「俺とナビーとリリイとチャッピーで、『ドワーフ銀』の武器を『ヴァンパイアナイト』の胸に突き立てる! 他のみんなは、フォローと牽制を頼む!」
俺はみんなにそう指示をして、『ドワーフ銀』の投擲槍を手に取った。
こちらの動きを察知した『ヴァンパイアナイト』たちも、四体のうち三体が動き出した!
高速移動で動き回っている!
なんて速さだ……
レベルが高いにしても、そのレベルを遥かに超えた速さだ……。
まともに動体視力で追いつけているのは、おそらく俺、ナビー、チャッピー、トーラだけだろう。
他のみんなも高レベルなのに、この『ヴァンパイアナイト』たちの動きを捉えきれていない。
『種族固有スキル』には移動系のものはなかったが、もともと基本能力として持っているということなのだろうか……。
まずは一体、仕留めるか!
俺は、『ヴァンパイアナイト』一体をロックオンして、動き出す!
そして、スピードを上げる!
限界突破ステータスの俺が本気を出せば、かなりの高速移動ができると思う。
実はまだ本気の最大速度を確かめてはいない。
なんとなく……自分でも怖くてやっていないんだよね……。
『サブステータス』の『速度』が、そのまま足の速さになるわけではないようだ。
だが、それにしても常識外れの『速度』の数値を持っている俺が本気で走れば、高速移動というか、超速移動ができそうだ。
光速を超えることもできるアメコミヒーローがいたが、それに近いことができそうである。
もちろん光速は、超えないと思うが……。
俺は、ロックオンした一体にすぐに追いつき、走りながら羽交い締めにしてそのまま地面に押し付けた!
激突した地面は大きくえぐれている。
俺は、羽交い締めのまま『ヴァンパイアナイト』を引き起こし、すぐに前を向かせる。
「リリイ、今だ! 胸にダガーを!」
俺がそう叫ぶや否や、『ヴァンパイアナイト』の胸に『ドワーフ銀』のダガーが突き刺さった!
『ヴァンパイアナイト』は硬直して、動かなくなった。
特に事前に打ち合わせしていたわけではないが、リリイの間髪入れない的確な投擲だった。
さすがリリイ!
そうしてる間にも、チャッピーも『ヴァンパイアナイト』に追いつき、胸にダガーを突き刺していた!
トーラも口にくわえた『ドワーフ銀』の投擲斧を、もう一体の胸に打ち込んでいた!
そして後方に控えていた最後の一体にナビーが向かっている……
なに!
あいつ……
最後の一体の『ヴァンパイアナイト』は、一瞬の早技でなにかを飲み込んだ……
まさか……
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