333.大精霊ノーム、顕現。
「ま、まさか……ノーム様が顕現された……」
族長のソイルさんが、驚きの声を上げながら地面にへたりこんでしまった。
腰を抜かしてしまったのかもしれない。
そのぐらい驚いている表情だ。
「まぁこんなもんじゃろの〜。今回はプリチーな女の子でいくのじゃ!」
現れた女の子は、そう言って微笑んだ。
街のドワーフたちと同じ小麦色の肌で、茶髪の五歳くらいの可愛い女の子だ。
「ノ、ノーム様……よくぞ顕現なさってくださいました……」
今度はソイルさんが、身なりを整え正座して頭を地面に擦りつけた。
周りのドワーフたちも、拝むように平伏している。
「だいぶ……久しぶりになってしまったの。完全な休眠モードで休んでいたからの〜。三次元体としての実体を持って顕現するには、きっかけが必要だったのじゃ。グリムくんの霊力のお陰なのじゃ!」
女の子は、そう言って俺に微笑んだ。
なんで俺の名前を知っているのかな……
「あの……あなたは、大精霊のノーム様なのですか?」
ほぼ間違いだろうが、俺は念のために尋ねた。
「そうなのじゃ! ワシが大精霊のノームなのじゃ! 完全な三次元体の実体を持って顕現するには、君の力を借りたけど、実体のない姿では自由に活動できていたのじゃ。だから、いろんなことを知っているのじゃ。君がどれほどの存在かも、もちろん知っているのじゃ。なんといっても精霊たちが集まってできたのが大精霊なのじゃ。周りの精霊たちもいろいろ教えてくれるのじゃよ」
ノーム様は、純真無垢な笑顔を作った。
女の子の外見と老人ぽい口調が全く合わない……ほんとに違和感しかないが……
てっきり石像のようなおじいさんの姿なんだろうと思っていたが……まさかの女の子! それも幼児だからね。
どうも口ぶりからして、自分の姿を選べるんだろう。
『今回はプリチーな女の子』って言ったからね。プリチーは、プリティーってことだよね……?
「みんな、ワシのことは今日から“ノンちゃん”と呼ぶのじゃ! ワシは、プリチーな女の子として楽しむのじゃ!」
ノーム様……もといノンちゃんは、左手を腰に当て、右手を天に突き上げるというニアとほぼ同じ“残念ポーズ”をとっている。
しかもかなりのドヤ顔だ……。
大精霊という神様に等しい存在なのに……なぜか漂う残念感……。
「私は『ロイヤルピクシー』のニアよ! よろしくね、ノンちゃん!」
ニアはすぐにノンちゃんの近くに飛んでいって、挨拶をした。
あの顔……完全にノンちゃんを気にいっている……。
同じ残念感を漂わせていたから、なにか感じるものがあったのか……
自分と近いものを感じたのかな……。
俺としては……もう面倒くさい予感しかしない……。
「ニアちゃんとは、仲良しの予感しかしないのじゃ! よろしくなのじゃ!ちなみにニアちゃんが、『クイーンピクシー』にクラスチェンジするときは、必ず立ち会うのじゃ! ワシなら特別なプレゼントができるのじゃ!タイミングは悩む必要ないのじゃ! いずれ最善の時がくるのじゃ!」
ノンちゃんは、ニアに挨拶を返すとともに、いきなり凄いことを言った。
そしてニアが『クイーンピクシー』にクラスチェンジできることと、そのタイミングについて悩んでいることもお見通しのようだ……占い師か!
「ほんと! 嬉しい! ありがとう、ノンちゃん!」
ニアは、目を星マークにしてノンちゃんの頭に抱きついた。
「リリイは、リリイなのだ。ノンちゃんかわいいのだ! リリイがお姉ちゃんになるのだ!」
「チャッピーもノンちゃん好きになったなの〜。チャッピーもお姉ちゃんになりたいなの!」
リリイとチャッピーは、ノンちゃんを普通の子供と思っているようだ。
神のような存在である大精霊だという話は聞いていたはずだが、全く気にしていないようだ。
本当にお姉ちゃんになりたいと思っているのだろう……そっと近づいて、優しく手を繋いだ。
「リリイちゃん、チャッピーちゃん、ワシのお姉ちゃんになってくれるのじゃ? 嬉しいのじゃ! プリチーな女の子になってよかったのじゃ! 今からリリイ姉ちゃん、チャッピー姉ちゃんと呼ぶのじゃ! いっぱい遊ぼうなのじゃ!」
ノンちゃんは、妹として扱ってくれたことが嬉しいようだ。
繋いだ手を、楽しそうにぶらぶらさせている。
「オイラはシチミ。困ったことがあったら、オイラに任しとけ!」
「アチシはオリョウ。まじマブな予感! ノンちゃん最高かよ! 一緒に楽しむしかないっしょ!」
「ワタシ、トーラ。一緒に遊ぶ! お昼寝でもいい!」
「
シチミたちも、ノンちゃんの近くに集まって挨拶をした。
「シチミちゃん、オリョウちゃん、トーラちゃん、タトルちゃん、みんなわかってるよー! 時々見てたし! 精霊たちが、いっぱい情報くれたし。私がみんなの力になるからね。よろしく!」
ノンちゃんがそう言って、みんなに優しく触った。
とても暖かくなごやかな雰囲気だ。
「大精霊ノーム様、私はグリムです。よろしくお願いします」
最後になったが、俺もノンちゃんに挨拶をした。
神様のような存在と聞いたからか、思わず胸の前で拝むように両手を合わせてしまった。
「わああ……すごい数の精霊なのじゃ! グリム君が両手を合わせるだけで、すごい数の精霊が集まってくるのじゃ! 既に集まっている精霊たちは喜んで活性化するのじゃ! 人の多い所で、ずっと手を合わせっぱなしにすると、そのうちグリムくんが光り出してしまう可能性があるのじゃ……。気をつけるのじゃ。まぁ手を合わせること自体は、すごくいいことなのじゃ。『気力』や『魔力』も含めた全ての生体エネルギーが体を駆け巡り、活性化するのじゃ。右手の『放出』と左手の『吸収』が合わさって、無限のエネルギー循環『エナジーサークル』が生まれるのじゃ。すべてに通じる基本原理で、世界の
ノンちゃんがドヤ顔で親指を立て、いいねポーズをした。
さらっとすごいことを教えてくれたけど……。
人前ではあまり長時間できないけど、手を合わせると身も心も活性化して、健康にいいということだろうか……。
少なくとも自己治癒能力を活性化させるとか……そういう使い方はできそうだし、なんとなく……戦いの局面でも使えそうな気がするが……。
右手が『放出』で、左手が『吸収』というのも気になるが……まぁ今度ゆっくり教えてもらおう。
「ノーム様、大切な原理を教えていただき、ありがとうございます。ぜひ今度ゆっくり、ご教授ください」
俺はノンちゃんに頭を下げた。
本当に弟子入りしたい気分だ。
「堅苦しい呼び方はよすのじゃ。水臭いのじゃ! ノンちゃんでいいのじゃ! ノンちゃんと呼んでほしいのじゃ! これからよろしくなのじゃ!」
ノンちゃんは、少しすねたような感じで体を揺らし、ほっぺを膨らませた。
結構かわいい感じだ。
「わかりました。じゃあこれからは、普通の女の子として扱うよ! よろしくね、ノンちゃん!」
俺はそう言って、しゃがんで目線を同じくしてノンちゃんと握手をした。
ノンちゃんは、満足そうに笑顔で頷いた。
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