299.宝物庫、開く。
翌朝、俺は早速『イシード市』周辺にいるスライムたちに念話を繋ぎ、アジトらしき遺跡などがないか広範囲に捜索するように指示を出した。
通常の巡回エリアよりも遥かに広大な面積を捜索してもらうので、今までのような巡回は出来なくなる。
だが、今のところ『イシード市』に入り込んで悪さをするような者も現れていないし、巡回の方は手薄になっても特に問題はないだろう。
これとは別に、俺の方で情報を仕入れた『テスター迷宮』の姉妹迷宮がありそうなエリア……ピグシード辺境伯領の東側と、そこを南に下ったセイバーン公爵領内のエリアもスライムたちに探索してもらっているが、今のところ入り口のようなものは見つけられていないようだ。
そんなことを確認しているところに、『イビラー迷宮』のダリツーから念話が入った。
『簡易復旧モード』が完了し、全てのシステムが完全になったとのことだ。
これにより宝物庫の開閉も出来るようになったので、俺に見に来てほしいというのだ。
この後、予定通りに『一時休眠モード』に入ると、ダリツーと連絡自体は取れるが、宝物庫の開閉を含め全てのシステムは使えなくなるらしい。
その前に、俺に必要なものがあれば持っていってほしいとのことだ。
何かの掘り出し物があるかもしれないので、一応見てみることにした。
サーヤの転移で移動し、早速見せてもらうことにした。
宝物庫は、やはりダンジョンマスタールームに隣接する場所にあるようだ。
「マスター、こちらの三部屋が宝物庫になります。第一宝物庫は様々な物を少しずつ置いてあります。ダンジョンマスターの普段使い用の宝物庫です。第二宝物庫は、金貨やその他の貨幣、宝石、魔石、インゴットなどが置いてあります、第三宝物庫は武具、魔法道具などが置いてあります」
ダリツーがそう言って、宝物庫を指差した。
三部屋は連続になっているようだ。
「凄いね! 三つも宝物庫があるのかい?」
俺がそう尋ねると……
「はい、三つあります。でも姉妹迷宮の中では、おそらく一番少ないと思われます」
ダリツーがそんなびっくり発言をした……
他の姉妹迷宮には、もっと宝物庫があるってこと……!?
『テスター迷宮』は、第一宝物庫しか開いてなかったけど…… 一体いくつあるんだろう……。
『アイテマー迷宮』は、復旧後でないと宝物庫は開かないと言っていた……。
俺は早速、宝物庫を見せてもらった。
第一宝物庫には、確かにいろいろな物が少しずつ置いてある。
結構あるな……
これは面白いかも……
こんなことなら……みんなを連れてきてあげればよかった……。
俺はサーヤに頼んで、みんなをここまで連れてきてもらうことにした。
「おーーーー! 久々のお宝キターーーーーー!」
「すごいのだ! ピカピカなのだ!」
「キラキラなの〜。きれいなの〜」
ニア、リリイ、チャッピーが目をドルマークにさせている……
他のみんなも……結構……同じ感じだ……。
俺は、みんなに自由に見て欲しい物があったら言うように声をかけた。
ただ、金貨や装飾品になっている宝石については、かなり古い時代のもので今使ったり身に付けたりすると騒ぎになるので、なるべくそれ以外の物を選ぶように話した。
装飾品は、古い時代の意匠なので、見る人が見ればかなり貴重なものと分かってしまうと思うんだよね。
逆に言えば装飾品になっていない原石なら問題ないので、宝石の原石は大丈夫と付け加えた。
ちなみにみんなが来るまでの間に確認したのだが、第二宝物庫の金貨は大森林の『テスター迷宮』にあったのと同じように、古い時代の物で何百万枚という凄い量だった。
他にも装飾された宝石類や各種金属や素材のインゴットがあった。 少しだが、魔法石もあった。
いずれも普通に人族の世界で使うのは騒ぎになるので、基本的には持ち出さずここに置いておこうと思っている。
ダリツーに聞いたところによると、この迷宮が『休眠モード』に入ったのは千年位前のようだ。
『テスター迷宮』や『アイテマー迷宮』よりも千年ほど後に、休眠したようだ。
そして第三宝物庫は、各種の武具や魔法道具が置いてあり階級も様々だった。
第三宝物庫のものは、迷宮が稼働していたときには迷宮各所の宝箱にセットするアイテムでもあったようだ。
そのストック品ということなのだろう。
『
じっくり見れば……掘り出し物があるのかもしれないけど……。
ただ…… 普通に迷宮に訪れた冒険者にとっては、ここにあるような武具や魔法道具は、階級が『
大喜び間違いないし、一攫千金の夢を与えるような品々だろう。
みんなそれぞれに、欲しい物を見つけたようだ……どれどれ……
ニアは、『麗しき魔術の世界』という古代の魔導書を見つけたようだ。
リリイとチャッピーは、魔法の絵本を一冊ずつ選んだようだ。
魔法の絵本てなんだろう……
リリイが選んだのは……『はらぺこ にじむし』、チャッピーが選んだのは『ドリとドラ』というタイトルだ。
サーヤ、ミルキー、アッキー、ユッキーは、色違いのお洒落なポシェット型の魔法カバンを選んだようだ。
サーヤが黒、ミルキーが青、アッキーが赤、ユッキーが白だ。
今まで見た中で、一番お洒落なカバンだ。
ワッキーは、魔法のボールを選んだようだ。
サッカーボールサイズで、魔力を通しておくと、蹴り出しても自動で戻ってくるようだ。
一人でボールを蹴って遊ぶには、楽かもしれない。
『ロイヤルスライム』のリンは『魔風石』という魔法石、『ミミック』のシチミは『魔土石』という魔法石を選んだようだ。
二人が使っている『魔法の杖』には頭頂部に魔法石がセットされているが、それと交換することによってそれぞれ風属性、土属性の魔法攻撃が出来るようになるらしい。
リンの杖に元々セットされているのは『魔水石』、シチミの杖にセットされているのは『魔火石』という魔法石だ。
これらは全て『上級』ランクの魔法石になるようだ。
『魔○石』という呼び名の魔法石は『上級』ランクで、威力が高く魔法の杖などに使われることが多いようだ。
『火炎石』『
『ポカポカ養護院』にプレゼントした湯沸かしの魔法道具に使われていたのが『火炎石』で、この『中級』の魔法石は魔法道具などに使われることが多いようだ。
『下級』ランクの魔法石は『〇〇の魔石』という名前で、『火山の魔石』『草原の魔石』『大河の魔石』『大地の魔石』などがある。
以前、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラにプレゼントした首飾りには、『大地の魔石』の使われており、筋力アップの効果があった。
これらの『下級』ランクの魔法石は威力があまり高くないが、身に付けるだけでステータスを若干上げる効果があり、お守り的な用途で使われることが多いようだ。
比較的いろいろな場所で手に入るらしい。
これらの魔法石についての知識は、ニアとサーヤから教えてもらったものだ。
『スピリット・オウル』のフウ、『竜馬』のオリョウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・タートル』のタトルは、色違いの宝石が付いたペンダントを選んだようだ。
フウが赤、オリョウが青、トーラが白、タトルが黒を選んだ。
もう一つ黄色の石のペンダントがあるのだが、一つだけ残すのもかわいそうなので、ニアがもらうことにしたようだ。
装飾品はなるべく選ばないように言ったのだが……まぁ一般的なペンダントに見えるので、問題ないだろう。
『トレント』のレントンは、棒切れのような枝を一本持ってきた。
俺はただの棒切れだと思っていたのだが…………
『波動鑑定』してみると……
なんと……『階級』が『
ただの棒切れなのに……『究極級』ってどういうこと?
そして……『世界樹』って……絶対凄いやつでしょ!
でも見た感じ……魔法の杖とかでなく……本当にただの棒なんですけど……。
そして『波動鑑定』による説明にも……『世界樹の力を宿している枝』としか出てこない……全く謎の棒だ…………。
でもレントンなら、使いこなせる気がする……ちょっと楽しみな感じだ……。
『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウは、四個セットの馬用の靴のような物を持ってきた。
よくわからない物なので、『波動鑑定』してみると……
え!
これも『究極級』だ……『名称』が『
これを装着すると、空を走れるようになるらしい!
めっちゃ凄いじゃないか! なにそれ!
フォウ、よく見つけたな…………。
いやー……この宝物庫……侮れないな……。
じっくり探すと、もっと掘り出し物があるかもしれない……
特に見た目がしょぼいやつが、当たりなのかもしれない……。
俺は念のため、みんなが選んだ物を改めて『波動鑑定』し『階級』を確認してみることにした。
ニアの『魔導書』とリリイとチャッピーの『魔法の絵本』は、『上級』だった。
本に『階級』があるとは思わなかったので、少し驚いた。
サーヤたちのお洒落なポシェット型魔法カバンは、『上級』だった。
『上級』の魔法カバンなんて……容量的にもかなりの高性能なはずだ。
ワッキーの『魔法のボール』も『上級』だった。
リンとシチミの魔法石も『上級』だ。
フウたちが選んだペンダントは……
え! ……『階級』が……『不明』と表示される……『名称』は、かろうじて表示されている……『想いのペンダント』となっている。詳細も不明と表示されてしまう。
どういうこと? ……謎のアイテムということか……。
ニアやサーヤに確認してみたところ、一部しか鑑定出来ないアイテムはあまり聞いたことがないらしい。驚いていた。
いやー……それにしても凄いお宝がいっぱいあった!
……『上級』ランクというだけで、普通だったら凄いお宝だからね。
みんなが選んできたのは、全て『第一宝物庫』にあった物だ。
ダリツーの話では、『第一宝物庫』はダンジョンマスターの普段使い用の宝物庫ということだったから……以前のダンジョンマスターが集めてきた物なのだろうか……。
他に『第一宝物庫』には、ダンジョンマスターが使うためのものだろうが、『コウリュウド硬貨』がそれなりに置いてあった。
『第二宝物庫』にある古い金貨の数とは比べ物にならないが、それでもかなりの金額になる。
『コウリュウド金貨』が約五万枚……約五億ゴル、『コウリュウド銀貨』が約十万枚……約一億ゴル、『コウリュウド銅貨』が約二十万枚……約二千万ゴルあり、『コウリュウド銭貨』も約五千枚……約五万ゴルあった。合計すると……六億二千五万ゴルになった。
これらは今でも使えるので、一応回収させてもらった。
予想外の収穫だった。
霊域や大森林の仲間たちにも、土産を持って帰ってあげたいが……
みんなの喜びそうな物は……あまりないんだよね……。
お金は必要ないし……武具も基本的には必要ないメンバーがほとんどだし……宝石も微妙な感じかなぁ……。
あまり実利的な物はないが……『第二宝物庫』に入っていた装飾品や金貨をある程度持って帰ることにした。
金貨は、記念メダルみたいな感じで仲間たち全員に配ろうと思う。
装飾品も、霊域や大森林の仲間たちが身に付けたり飾ったりする分には、問題ないと判断した。
欲しい者にあげることにしようと思う。
もっとも、みんなそれ程欲しがらないだろうけどね。
いつも『ミミック』たちの宝物召喚で出た物を、ジャンケン大会で振り分けているようだから、その景品に使ってもらってもいいしね。
俺は、魔法道具や武具をいくつか研究用に確保した。
また、古い時代の物であり、貴重な歴史的価値もあるので、全ての品を一セットづつコレクションとして確保し『波動収納』に保存することにした。
それから『石使い』のカーラちゃんのために、宝石の原石や魔法石を一通り確保しておいた。
結構いろいろな物を宝物庫から頂戴したと思ったのだが……改めて各宝物庫を見ると……ほとんど減っていない。
結局、ほとんどの物は……そのまま宝物庫に置いておくかたちになった。
もし必要になったときには、迷宮を稼働させればいつでも宝物庫を開くことが出来るので、焦る必要は無いからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます