288.青い、卵。

 俺の仲間になったことで、族長と念話ができるようになったので、直接族長と念話をすることにした。


 ただ他の飛竜たちも話が聞きたいだろうと思ったので、『絆通信』によるオープン回線を開いてみんなに話が聞こえるようにした。


(改めて、テンクウさん、よろしくお願いします)


(こちらこそ、強き王グリム様、どうぞ我ら一族をよろしくお願いいたします)


(はい。一応仲間にはなっていただきましたが、今まで通りここで暮らしていただければいいと思います。私の仲間になったことで、特殊な『共有スキル』が使えますので、より安全になったと思います)


(ありがとうございます。この飛竜の里は、長きにわたり続いてきた由緒ある里です。この里は守りたく思っていますが、実は一つお願いがございます。この周辺に新しくコロニーを作ろうとしていた娘たちは悪しき人族に拐われ、実はもう一つのコロニーも大事には至りませんでしたが、悪しき人族の襲撃を受けました。この周辺には、もう安全といえる場所は少なくなっています。グリム様は、北にある魔域と霊域の主であるとお伺いしました。そちらに飛竜の一団を住まわせていただけないでしょうか。必ずお役に立てると思います)


 族長からそんな提案があった。

 俺としては、願ったり叶ったりだ。


 大森林と霊域の説明をし、飛竜たちが移り住むことは全く問題ないと告げた。

 大森林と霊域がどこよりも安全だということも説明し、食料も豊富なので、何体でも移住可能であると説明した。

 飛竜たちは雑食なので、果物だけでも生きていける。

 大森林や霊域の果物だけでも十分生きていけるはずだ。

 肉が食べたければ、近くの魔物の領域に狩りに行ってもらえばいいしね。


 とりあえず大森林と霊域に、飛竜のコロニーを一カ所づつ作ってもらうことになった。

 今後も希望があれば、随時受け入れるという話になっている。


 族長はじめ皆かなり喜んでいた。

 そうこうしているうちに、この周辺にいるコロニーの飛竜たちがみんな集まってきて、俺に挨拶をした。


 そして先程の二百十九体と合わせ、総勢六百七十三体の飛竜が新たに俺の仲間になった。


 (グリム様、我がテンクウ一族は、実は古き時代、『青天王』と呼ばれた空の王者の翼竜と共に戦った、由緒正しき一族なのです。代々世界の危機には、世界を救う力になれと言い伝えられてきた武門の家系でもあるのです。あなた様のような強き王が現れたということは、逆に言えば、世界の危機が近いとも言えるのです。必ず我々が、お力になります!)


 族長が突然そんなことを言い出した。


 びっくりワードが連発しているが……


 まず『青天王』という言葉に聞き覚えがある……


 それは『蛇使い』ギュリちゃんの『使い魔ファミリア』であり、『白蛇王』の分け御霊わけみたまという白ちゃんが言っていた、『蛇使い』の三体のしもべの中の一体の名前だった。


 飛竜のテンクウ氏族は、その『青天王』と共に戦った一族のようだ。

 伝説といえる程の古い時代から続いている飛竜の名門なのは間違いないようだ。


 そして……世界の危機が訪れるかもしれないというのは……かなりの衝撃発言だ……。


 まぁ悪魔なんかもいる世界だから、いつ世界の危機が起きてもおかしくないんだろうけどね……。


 人間の犯罪集団である『正義の爪痕』ですら、あんな『死人薬』みたいな物を作っている……。

 あれを乱用されただけでも、十分に世界の危機と言えるしね……。


(もしも……本当に世界の危機がきたら、協力をお願いすると思うけど……。 そうだ! もしよければだけど、この里やコロニーに残るメンバーも、定期的に大森林に遊びに来たらどうかな? 実戦的な訓練もできるし、鍛えるのには丁度いいと思うよ)


(是非お願いいたします。我々だけで訓練するにも限度がありますので、願ってもないお話です)


(安全にレベルを上げるには大森林がいいと思うし、今度みんなで迷宮でレベル上げ合宿をするから、場合によっては、それに参加してもいいかもしれないね)


(はい。是非お願いいたします。それから、実はお渡ししたい物がございます)


 そう言うと、族長はラグビーボールくらいのサイズの青い卵を持ってきた。


 この感じ……前に感じたことがある……この厳かな感じ……もしや……


(お気づきでしょうか。これはおそらく……『青天王』様の“生まれ変わり”でございます。突然、この里の中に出現いたしました)


 やはりそうか……おそらくこれは『青天王』の分け御霊の卵で間違いないだろう。


 俺は族長たちに『蛇使い』の少女ギュリちゃんを保護していることや『正義の爪痕』という犯罪組織の一連の動きなども説明した。


 (やはりそうですか。『蛇使い』の少女が…………是非その使い人様に、この卵を渡して下さい。その方のために現れた卵と思います)


 族長はそう言って、俺に卵を差し出してくれた。


 俺はサーヤに頼んで、霊域からギュリちゃんを転移で連れてきてもらうことにした。

 もちろんサーヤが転移でここに戻れるように、族長に許可を得て転移用のログハウスをこの里に設置させてもらった。



 サーヤはすぐに、ギュリちゃんを連れて来てくれた。


 なぜか一緒に『虫使い』のロネちゃんと『石使い』のカーラちゃんもいる。

 三人で一緒に訓練していたようだ。

 一緒に行きたいとついて来たのだろう。


 俺は、ギュリちゃんに今の話を説明し、卵を渡した。


「きれいな卵……卵さん……目覚めて……」


 ギュリちゃんがそう言って、卵を抱えると……卵は暖かく柔らかな光を発した!

 前回と同じように、ギュリちゃんから魔力と生命エネルギーのようなものが、卵に流れているようだ。


 そして、すぐに光はおさまった。


 ——ガリッ、バリッ、バリバリッ


 卵に横方向の亀裂が入ると、次の瞬間、卵の上半分が吹っ飛んだ!


 そして中から出てきたのは……


 翼竜のようだ。


 少しずんぐりしているが、映画なんかで見たプテラノドンと同じ姿だ。

 ただ全身が青い。

 そしてサイズが……手のひらサイズだ。

 結構かわいい!


 『波動鑑定』してみると……


『種族』が『スピリット・ブルー・プテラ』となっている。霊獣のようだ。


「ご主人様、私はいにしえの『蛇使い』様にお仕えした『青天王』の分け御霊でございます。あなた様をお守りするために参りました。私に新しい名前を与えてください」


 生まれたての赤ちゃんプテラは、つぶらな瞳でギュリちゃんを見つめるとそういった。

 いやー……かわいいなぁ……。


「私はギュリ、よろしくね。名前は、あおちゃんでいいかな?」


「ありがたき幸せ。今後ともよろしくお願いします」


 そう言うと青ちゃんは、卵から出て羽ばたいた。

 そしてギュリちゃんの周りを三回飛び回り、彼女の肩に止まった。

 三回飛んだというのは、嬉しさの表現なんだろうか……。


「私は古の『白蛇王』の分け御霊のしろです。ともにご主人様を守りましょう!」


「はい、よろしくお願いします」


 先に転生してきた白ちゃんと、青ちゃんがお互いに挨拶を交わしている。


 お互いに、礼儀正しい感じだ……。

 そして普通に仲がいいみたいだ。

 なんとなく……今までの感じからすると……こういう三体とか四体の仲間って、揉めてたりする感じを予想したのだが……


『キマイラ』のキーマを見すぎた影響か…………

 まぁキーマも仲が悪いわけじゃないけどね……半分じゃれ合ってる感じだし……。


(『蛇使い』様、『青天王』様、我々は古の時代、共に戦った飛竜のテンクウの末裔でございます。此度も共に戦わせていただきます。何卒、よろしくお願いいたします!)


 今度は飛竜の族長が、ギュリちゃんと青ちゃんに挨拶をした。

 そして完全に戦いがある前提だ……。


(よ、よろしくお願いします)

(今生でも共に戦いましょう。力を貸してください。よろしくお願いします)


 ギュリちゃん、青ちゃんもそう挨拶をし、互いに歩みより話をして親交深めていた。



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