165.穀潰しの、実態。
俺は、孤児院を守ってくれた『マジックスライム』リキュウ達に念話で労いの言葉をかけ、今後もここの警備を厚くするように頼んだ。
「グリムさん、ありがとうございました。お怪我はありませんか? 」
院長先生が心配してくれていたようだ。
「グリムお兄ちゃん、大丈夫? 」
「グリム兄ちゃん、来てくれてありがとう」
「「「ありがとう」」」
この前助け出した二人の子を始め、他の子達も一斉にお礼を言ってくれた。
それにしても一体何があったのか……
院長先生に詳しい事情を尋ねた。
どうもこの街にいる悪徳商人でお馬鹿な後継ぎは、この前の誘拐の悪徳商人だけではなかったようだ。
さっきの男は本人が言っていた通り、この街でも有力な商会であるザコーナ商会の会頭でコモーというらしい。
三十代位でこの前の悪徳商人と同じ位の年代に見える。
院長先生の話では、あの男の屋敷はこの前の悪徳商人の屋敷の隣で、一緒につるむ仲だったようだ。
ということは……俺のものになったの屋敷の隣なのか……
あんなお隣さん、すごく嫌なんですけど……
絶対ご近所付き合い出来ないわ……。
彼の商会も元は立派な商会だったようだが、彼が跡を継いでから悪徳商会になったようだ。
まったく……
アホ息子か……一体何をやってるのやら……。
彼の父親は早くに亡くなったらしいが、お爺さんがずっと商会の会頭をしていたようだ。
そのお爺さんは徳のある人で、この孤児院の敷地を何十年も無償で貸してくれていたのだそうだ。
それを今になって、急にあのお馬鹿跡取りが退去と土地の明け渡しを求めてきたらしい。
おまけに過去何十年分もの地代も払えと言っているそうだ。
院長先生の話では、あくまで先代の会頭の厚意で借りていたので、書面は取り交わしていないらしい。
もしかしたら、この前の誘拐騒ぎで取り潰しになったあの悪徳商人の意趣返しをしているのか……
もしくは単にこの土地を売り払いたいだけなのか……
あの武装した男達は、しばらく前からあの男が雇っているゴロツキで、悪事の手助けをしている取り巻きらしい。
大体の事情はわかった。
俺はスライム達が警備している事を伝え、何かあったらスライムを呼ぶように院長先生にお願いした。
子供達にも大丈夫だから安心するように伝え、孤児院を後にした。
孤児院を守らなきゃだな……
はてさて……あいつどうしてやるかなぁ……
◇
日が沈みかけていたが、俺は急いで商人ギルドを訪れた。
ギルド長に会う為だ。
いつもギルド長と呼んでいて、名前を覚えていないが……
確かドアキンさんという名前だったはずだ。
四十代の落ち着きのある人格者だ。
立場的にも、年齢的にもこの街の商人や商会に詳しいはずだ。
俺はザコーナ商会の会頭コモーについて率直に尋ねた。
先程の件も含めて、全て正直に話した。
「そうですか……そんなことが……」
ギルド長はガクリと肩を落としながら、苦々しい表情で色々と教えてくれた。
やはりあの男は、この前逮捕された誘拐犯の悪徳商人の幼なじみだったようだ。
しかも悪友といえる仲の良い間柄だったらしい。
二人ともまともな商いをせず、素行も悪く資産を食い潰していたようだ。
両家とも街の名家として尊敬されていた家だったのだが、今はひどく評判を落とし悪徳商会とまで囁かれようになったらしい。
二人とも同時期に後を継いだ事から、一部では先代を暗殺したのではないかと噂する者までいたようだ。
元々名家だったので商人ギルドの理事にも名を連ねているそうだ。
商人ギルドの仕事は、商人間のトラブル防止や仲裁、商業の発展支援、不動産や大きな商取引の仲介、税金の申告補助など多岐に渡るそうだ。
半官半民のような組織らしい。
ギルドの仕事自体はギルド長と事務官達で行なっており、理事達は半年に一回の総会に参加するだけ大した仕事は無いようだ。
その総会の時も件の二人は、滅茶苦茶な発言でいつも場を混乱させていたそうだ。
ギルド長の資格は限定されていないが、中立を保つ為に、自分で商会を運営していない者がふさわしいとされているらしい。
元役人や代替わりして引退した元商人などが歴代ギルド長を務めてきたようだ。
ただ明確な禁止規定がないので、現役の商会会頭がギルド長をやる例もあるらしい。
理事達の多数の賛成が得られれば、それも可能のようだ。
一度彼らはギルド長の座を狙った事もあるようなのだが、他の理事達から賛同を得られるはずもなく、失敗に終わったらしい。
とにかく出鱈目な奴らだったようだ。
ギルド長の話では、現在の経営状態は相当貧窮しているらしい。
今回の件は、友人の誘拐悪徳商人の意趣返しと換金の為という二つの理由でやったのではないかとの事だ。
ザコーナ商会は、金物販売店と武器防具販売店を経営しているそうだ。
鍛冶工房を持っていて、金物は製造販売しているらしい。
武器防具については特別な仕入れルートがあって、仕入れ販売をしているらしい。
ただ多少の補修などは鍛冶工房でも行っているようだ。
また不動産を結構持っていて、一部は賃貸しているとの事だ。
街の南西にある農園エリアに果樹園も持っているそうだ。
かなりの資産家なのは間違いない。
商売が傾いているらしく、資金を作る為に不動産をまとめて処分する動きをしていたようだ。
その中にあの孤児院の敷地も入っていたのだろう。
高級そうな武器を多数揃えられたのは、販売用の在庫を持ってきたからだろう。
そりゃ店も傾くわな……。
没収して全て『波動収納』にしまったけど、全て『
剣は『上級』が二本、『中級』が三本、槍は三つ全て『中級』、弓は三つ全て『上級』だった。
魔法の武器ではないが、高性能なのは間違いないだろう。
火炎放射していた魔法の杖は『中級』だった。
これもあのポンコツ商人ではなく、俺の仲間達が使えば、強力な杖に違いない。
かなりの在庫金額になるはずだ。
全く何をやっていることやら……。
商人ギルドとしても、黒い噂は上がっているが決定的な証拠がなく、対処しかねていたようだ。
逆に俺が殺されかけたと訴え出れば、逮捕できる可能性があるので、衛兵長と代官さんに訴えた方がいいと言われた。
ギルド長曰く、影で泣いている人間が数多くいるはずで、放置すれば今後も泣かされる人間が増えるので、情けをかけることなく対処して欲しいと頼まれた。
もちろん情けをかけるつもりなど微塵もないが……。
ギルド長も大分思うところがあるようで、最後にはあの家も取り潰された方が世の中の為だとまで言っていた。
普段は大人な感じのナイスな紳士なのだが、途中からヒートアップしていた。
事情を知れば知るほど、あいつは成敗した方が良さそうだ。
後は衛兵長と代官さんに任せよう。
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