162.商会の、事業展開。

 視察を終えた俺はサーヤの家に戻ってきた。


 そして再び机に向かっている。


 今見てきた落札物件も含めて、頭の中を整理する意味でも、『フェアリー商会』の事業についてまとめることにした。今後の展開も含めてだ。


 『フェアリー商会』———多種多様な事業を展開する総合商会。総合商社といってもいい。

 会頭———俺グリム

 顧問———ニア

 総支配人———サーヤ

 総務部門———執事バンジェス


 以下の各事業を展開する。


 一、牧場事業———『フェアリー牧場』———支配人ミルキー

  事業内容———鶏の卵、牛の乳、ヤギの乳の生産と羊毛の生産と一部の農作物の生産


 二、農業事業———『フェアリー農場』———支配人ミルキー

  事業内容———農作物全般の生産


 三、薬局事業———『フェアリー薬局』———店長ハーリー

  事業内容———薬の調合販売及び健康関連食品の製造販売


 四、食品加工事業———『フェアリー食品』———支配人アッキー

  事業内容———加工食品の製造


 五、食品販売事業———『フェアリー商店』———店長ショクニール

  事業内容———食品全般、調味料などの販売


 六、家具調度品販売事業———『フェアリー家具』———店長カグン、工房長モコザイグ

  事業内容———家具調度品の製造販売


 七、乗合馬車事業———『フェアリー運行』———支配人サーヤ(仮)

  事業内容———乗合馬車の運行と貨物輸送

 

 八、不動産事業———『フェアリー不動産』———支配人サーヤ(仮)

  事業内容———不動産賃貸等


 九、宿屋事業———『ホテルフェアリー』———支配人サーヤ(仮)

  事業内容———宿泊飲食全般


 十、紡績事業———『フェアリー紡績』———支配人サーヤ(仮)

  事業内容———羊毛等の糸を紡ぐ紡績



 ○資本関係はないがグループ———『フェアリー亭』———トルコーネさん一家の宿屋



 ○商会に組み込んでいないが売り上げが立っているもの———サーヤの敷地内の烏骨鶏や大王ウズラの卵やヤギのミルクなど。

 これは、無理に商会の事業に組み込む事はせず、今まで通りトルコーネさんに納品すればいいと思っている。一部『フェアリー薬局』にも入れるが、ほとんどトルコーネさん専用なのだ。

 あえて名前をつけるなら『サーヤ牧場』かな……。

 そして支配人は、卵拾いをめっちゃ頑張っているワッキーかな……。




 ○『フェアリー食品』は、現在ソーセージの加工をしているが、近々チーズ作りも開始する予定だ。


『フェアリー牧場』の牛乳やヤギ乳は、まだ避難民達に無償配布しているので使うことは出来ない。


 そこで霊域と大森林に住んでいる盗賊から保護したヤギ達と、リリイの友達だったヤク達から定期的に乳を絞らせてもらうことにした。

 これを持ってきて加工するというわけだ。


 ちなみに霊域からサーヤの敷地に連れて来たヤギ達のミルクは、トルコーネさんの『フェアリー亭』への納品と自分達の飲む分で終わってしまうので、加工には回せないのだ。


 加工食品については他にもアイデアはあるのだが、一気には出来ないので少しづつやっていく事にする。


 加工食品は体制さえ整えば、いくらでも広げられそうだ。

 その方が雇用が増やせるから、少しづつとは言いつつも、もうちょっと頑張った方がいいかもしれないね。




 ○『フェアリー運行』は、今後時期を見て営業を開始しようと思っている。


 俺の元いた世界でいえば、バス会社のようなものだ。違うのは、荷物も一緒に運ぶ事である。


 街中だけでなく、外の村々や『フェアリー牧場』まで運行して人の流通と物流を良くしようと思っている。

 それによって経済活動が活発になるはずだ。


 また俺の『波動収納』にある盗賊達から没収した大量の馬車を有効活用できる。


 荷引き動物は、ロネちゃんが仲間にした虫馬ちゅうま達を使う予定だ。


 事業開始時には、ソーセージ加工場を作った北の外壁沿いのエリアに大きな厩舎と馬車の車庫を作ろうと思っている。まだ五分の四以上空いているのだ。


 今『フェアリー牧場』に預けている虫馬達をここで飼育出来るようになるので、ロネちゃんがいつでも会いに来れるようになるのだ。

 もちろん虫馬達の働いた分は、賃金を支払うつもりだ。


 人口を考えると乗合馬車をやっても儲けが出るとは考えにくいが、荷運びも同じ馬車でやるので赤字にならない程度には営業出来るのではないかと考えている。




 ○『フェアリー不動産』も将来的な構想というだけで、すぐに営業するつもりはない。


 今無償で提供している避難民達の仮設住宅が空いた時に、希望者に格安で貸し出そうと思っているのだ。


 これを思いついたのは、トルコーネさんから仮設住宅を貸して欲しいと頼まれたからだ。

『フェアリー亭』で働いている孤児院の年嵩の三人の子達が、もうすぐ十五歳で孤児院を出ないといけないらしい。

 そこで三人で住む場所として、もし仮設住宅が空いていたら貸して欲しいとお願いされたのだ。

  三人でシェアハウスすれば家賃負担が少なくて済むし、元々無償提供していたものなので格安で貸し出そうと思っているのだ。




 ○『ホテルフェアリー』もあくまで将来的な構想だ。


 マグネの街の宿屋に入るまでの中継地点として、『フェアリー牧場』の中に宿泊施設を作ろうと思っているのだ。

 この領が復興して商人や旅人などが行き交うようになれば、喜ばれるのではないかと思っている。

『フェアリー牧場』付近の場所に宿泊施設があれば、村の広場などを借りて野宿しないで済むからね。


 後は遊べる牧場にして、マグネの街から一泊旅行でお客さんを呼ぶなんていうのもいいかもしれない。

 大きな露天風呂とかを作っても面白いかも……。




 ○『フェアリー紡績』は、出来るだけ早く操業しようと思っている。


 紡績工場を作って、多くの人を雇用出来そうだからだ。


『フェアリー牧場』で取れた羊毛を紡むぐ予定だ。

 今後、畑で綿花や麻を栽培して紡いでもいいかもしれない。


 将来的には生地や洋服を作る縫製工場も作りたい。

 そうすれば、より多くの人が雇用出来そうだ。

 多くの雇用を創出できる事業として、農業以外に思い浮かんだのはこれだった。


 後は任せられる能力と技術のある人材がいるかにかかっている。




 俺は、帰宅した仲間達と楽しい夕食をとった後に、この構想を説明し賛同を得ることが出来た。


 今日は頭の中をしっかり整理出来たから、とても有意義だった。


 これさえ作ってしまえば……丸投げ出来そうだし……。



 夕食時の報告では、新設の『フェアリー農場』も、『フェアリー牧場』の方も水田予定エリアの整備が大体出来たようだ。


 そして、そろそろ不可侵領域の米が収穫出来るはずだ。


 ということで、明日は朝からみんなで稲刈りに出かけることにした。


 めっちゃ楽しみだ!




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