111.初めての、使い魔。
ロネちゃんは、泣き終わると思い出したように口を開いた。
「お父さん、友達ができたんだけど……連れて帰ってもいい? 」
「え……」
「出てきていいよー」
ロネちゃんがそう言うと近くの草むらから……
なんと……巨大なダンゴムシが現れた!
仔牛ぐらいのサイズはあるな……。
「おお、この子は……『ギガボール』じゃないかい……」
トルコーネさんが驚いている。
知っているようだ。
「そうですね。この子は『ギガボール』ですよ。この辺ではなかなか見ないですけど。珍しい
サーヤが続けた。
やはり荷引き動物に詳しい。
サーヤによれば、この巨大ダンゴムシは、魔物ではなく
芋虫型の『ランドキャタピラー』やカタツムリ型の『デンデン』よりも、珍しい種類のようだ。
ロネちゃんの話では、突然現れて懐いてきたのだそうだ。
『虫使い』スキルの効果だろうか、何もしなくても虫型の生物に好かれるようだ。
それにしてもきれいな色だ……
玉虫色と言うのだろうか……
光の具合でメタリックなグリーンにも見えるし、メタリックなパープルにも見える。
いろいろな色に変化して見えるのだ。
すごくキラキラしている。
そしてつぶらな瞳がめっちゃかわいい。
俺は改めてこのダンゴムシを鑑定してみる。
すると……驚く点がいくつかあった。
まず名前がついている。
『だん吉39』となっている。
ロネちゃんがつけたのかと思って訊いてみたが、そうではないらしい。
もともと名前を持っていたようだ。
そして <レベル> は18
荷引き動物としては破格のレベルだ。
初めて会った時のオリョウも、ここまでではないが結構高かった。
野生で生活しているものは、結構高レベルなのかもしれない。
もしくは……名前がついていることから、誰かに飼われていたのかもしれない。
そして <状態> はなんと…… 『ロネの
俺はニアにそのことを念話で伝え、ニアからトルコーネさん達に伝えてもらった。
「わかった。いいよロネ。じゃあ一緒に連れて帰ろうか。ちゃんと面倒みてあげるんだよ」
「わーい! やったー! 」
ロネちゃんは大喜びで、巨大ダンゴムシにまたがった。
ロネちゃんが乗るのにちょうどいい位のサイズだね。
サーヤの話では、おとなしくて力持ちということ以外に、鎧を付けているような見た目通り物理攻撃に対して相当強いらしい。
ロネちゃんを守ってくれる存在になってくれると良いのだが……。
トルコーネさん達は、一足先に街に帰っていった。
ちなみに『ギガボール』には、『ロネの
しばらくして、衛兵隊のみんなや村の皆さんに挨拶をして、俺達も街に戻ることにした。
衛兵長とクレアさんは、出かけていて不在だったのでよろしく伝えてくれるように頼んでおいた。
村の人達から一樽分のオリーブオイルと、オリーブの塩漬けをたくさんもらった。
超ラッキーだ!
もちろん解体した魔物の肉もある程度もらったし、魔物の皮、角、牙、骨なども、それなりの数をもらった。
サーヤやナーナが使いたいと言ったからだ。
特に蛇皮は強くて丈夫で、いろんな使い道があるらしく、サーヤの強い希望で結構多めにもらってしまった。
あとナーナは『武器作成』スキルを持っているので、魔物の角や牙などを使った武器が作成できるそうだ。
今度教えてもらいたいものだ。
◇
俺達はサーヤの家に戻ってきた。
サーヤの家で一番最初にやることは決まっていた。
今回の肉を使ったサーヤ特製ソーセージ作りだ!
気合を入れて大量に作るらしい。
子供達もみんな張り切っている。
俺も手伝おうと思う。
なんかこういうのって楽しいよね。
そしていっぱい作ったらトルコーネさん達におすそ分けしてあげよう。
ということで、俺達はサーヤの指示に従ってソーセージ作りを開始したのであった。
ソーセージ作りは、結構手間がかかるがなかなか面白い。
やはりサーヤの工夫はすごくて、いろんな香草を混ぜて、いろんな味のバリエーションを作っている。
一番大変な作業は、肉のミンチだ。
包丁でただひたすら肉を刻むわけだが…… ちょうどいい粗挽きにするには、熟練が必要なようだ。
したがって仕上げの作業はサーヤとナーナがやって、その前工程の粗刻みをみんなでやるという感じだ。
「トントンは得意なのだ! リリイにお任せなのだ!」
「チャッピーもがんばるなの! トントン得意になるなの! 」
「ぼくだって負けないよ。ウィーン! 」
リリイ、チャッピー、ワッキーを中心にみんな張り切ってミンチしている。
みんなでやったので昼前には大体の作業は終わった。
お昼まで少しだけ時間があるので、俺はサーヤの所有する敷地を見せてもらった。
この家と隣の林はもちろん知っているが、それを含めた一区画が所有地ということでかなり広かった。
カボチャの種を蒔くところは十分にある。
南側の空き地の一部の草を刈って、種を蒔いた。
ちなみに草刈りは、ワッキーによって瞬く間に終わってしまった。
ここの土も結構いい土だった。
土を一つまみ舐めてみた。
土本来の匂いと風味があり、有機物と微生物がたっぷりなのがすぐわかった。
俺は元の世界で農業をやっていた頃から、時々土の味見をして状態の確認をしていたのだ。
もちろん誰もいない時にだ。
人に見られると変な人と思われちゃうからね……。
ちなみにリリイとチャッピーが真似して土をなめていた。
「うん、おいしいのだ! これは間違いないのだ! 」
「うん、土の味がするなの。これは美味しいなの? 」
チャッピーはよくわかっていないようだが、リリイは分かるのだろうか……
お婆さんと一緒に畑仕事してたみたいだからね……。
ちなみにワッキーは、土を口に入れすぎて「ブフェッ」と吐き出して、半泣きになっていた……残念。
俺は、今の良い土の状態を尊重して、あえて耕す事はせずに草だけ刈って蒔いたのだ。
所謂、“不耕起栽培”というやつだ。
種を蒔くところだけは、草をきれいに取ったが、それ以外のところは刈り落としただけだ。
カボチャは蔓が伸びるので、低い草ならむしろ生えていた方がいいのだ。
巻き付きやすいし、風よけにもなってくれるからね。
ただ今まで原っぱだったので、雑草と間違われて踏まれると困る。
関係無い人が来る事はまず考えられないが、一応、冊を作った。
柵作りに使う杭は、レントンの協力で最適サイズの物がすぐできた。
俺はそれを打ち込んで、ロープを張っただけだ。
あっという間に終わってしまった。
今後の生育が非常に楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます