92.スライムの、特殊な、その先へ。

 九体のリーダースライム達が俺を見つめている……


 この子達は、元々レベル5だったようだが、合体して15になっていた。


 それで戦った経験値が、合体解除後にそれぞれ入ったらしく、一気に上がってみんなレベル20になっている。


 元々のレベル5を基準にした補正もあったのかもしれないが、すごい上がりようだ。


 意外に『小悪魔インプ』を多く倒していたのか、それとも途中からパーティーメンバー扱いになったのかわからないが……


 まぁレベルが上がってる分にはいいけど……。



 ということで、この九体のスライム達は『ハイスライム』になれるはずなので、クラスチェンジする意思を尋ねると……


(どっちに変わった方がいいの? )


 聞き返されてしまった……どっち……?


 ……はて?


 詳しく聞いてみると……


 なんと……『ハイスライム』と『マジックスライム』と選べるというのだ。


 リンの時はそんな事はなかったはずだが……


 物知りなニアに訊いてみたが……


「通常なら『ハイスライム』だと思うけど……何か特別な要素が働いて別のクラスになれるようになったのかもしれない……」


 ……と言うことだ。


 一応、リンにも念話で確認したが……


(うーん……よくわかんない。でもマジックがいいと思う。かっこいい。珍しい! )


 ……との返答だった。


 そんな時、リキュウが言った……


(ぼくたちインプ吸収した。衛兵さん達大変そうだった。片付けてあげた……)


 詳しく話を聞くと……


 みんなで倒した大量の『小悪魔インプ』の死体百体以上を、三体の合体スライムと、集まってきたスライム達で種族固有スキルを使い、分解吸収してしまったらしい。


 魔芯核は、衛兵達が取り除いた後だったらしいが……。


 この話を受けて、ニア、フラニー、ケニー、サーヤなど物知りなメンバーで相談した結果、おそらく『インプ』の死体を吸収したことが原因ではないかということになった。


 『インプ』は、魔物と悪魔の中間のような存在で、どちらかというと魔物に近いらしい。


 それゆえに魔芯核があるし、死体も残るらしいのだ。


 だが悪魔に近い性質も当然あり、魔力が高かったりするらしい。


 それを吸収したことが原因ではないかとの事だった。


 魔力が高いにしては、魔法攻撃なんかしていなかった気がする……


 訊いてみると……


 通常の『インプ』はあまり魔法攻撃はせずに、普通に物理攻撃で戦うらしい。


 ただ『インプ』もレベルが高くなると、魔法を使ったり、特殊スキルを使うハイクラスみたいな者がいるそうだ。


 いずれにしろ、特殊な原因が影響して、珍しい『マジックスライム』になれるということだ。


 このチャンスを逃すのはもったいないので、九体には嫌でなければ『マジックスライム』がいいんじゃないかと勧めた。


 全員即答で了承してくれた。


 そして、『マジックスライム』にクラスチェンジした———


 ———見た目の変化は、ほとんどないようだ。


 各ステータスは……やはり <魔力(MP)> や <魔法攻撃力> <魔法防御力> などの数値が高いようだ。


 種族固有スキルは……


『全魔法適性』———すべての魔法に適性を持ち、威力や消費魔力に関係する。


魔法学習マジックコピー』———受けた魔法を吸収し使えるようになる能力。成功率はスキルレベルによる。


 ……というものが増えている。


 いまいちわかりにくいが……


 なんかすごい予感がする……


魔法学習マジックコピー』は、自分が受けた魔法を、自分の魔法として使えるようになるということなのだろうか……


 それって……魔法系のスキルが身に付くってこと……?


 受ければ受けるほど……?


 もしそうだとしたら……これもかなりのチート能力ではないだろうか。


 魔法を受けることで自分のスキルが増えるなら……


  死なない程度に受ければ、どんどんスキルが増えるってことになるけど……


 やはりスライム……恐るべし!


 実はこの世界の最強の生き物は、スライムではないだろうか……。


 そして通常スキルも二つ増えていた。

 しかも、九体全員同じスキルだ。


『魔法耐性』———魔法攻撃に耐える能力。


 リンが持っているやつと同じだ。


 種族固有スキルでは無いから、全員が持ってるわけじゃなかったんだよね。


 さっきの種族固有スキルを使う為には、相手の魔法を受けなきゃいけないから、この『魔法耐性』はどうしても必要になる。


 それを全員が取得しているとは……

 都合が良すぎる気がするが……


 これも『インプ』を吸収したことと何か関係があるのだろうか……


 そしてもう一つ……


『浮遊』———空中に浮くことができる能力。


 これもすごい……


 なんと浮くのだ……


 実際に見せてくれた……


 九体のボールが空中に浮かんで、ぷかぷかしている感じは……

 とても不思議であり……

 とても可愛い……


 そしてこの子達は、リンと同じように『スライム』としての種族固有スキルであった『分解』『吸収』『種族通信』『増殖』『体内保存』『変形』は全て所持している。


 そのうちの『変形』を使い、リンが腕を作るのと同じ感じで、翼を作ったのだ!


『インプ』の背中についてた蝙蝠の翼のような感じだ。


 これを上手に使って、思うままに空を飛び出した!


 『浮遊』はあくまで浮くだけみたいで、移動はできてもスピードが出ないようだ。


 スピードを出す為に翼が必要になったらしい。


 翼で羽ばたくと、かなりの速さで飛べるようだ。


 気持ち良さそうだ……


 俺もいつか空を飛んでみたい……。


 ……でも少なくとも、空に浮くことは出来そうだ!


 何せこの子達が取得してくれたのは、の『浮遊』


 俺の『共有スキル』にセットできるのだ……ムフフ……


 これはやるしかない!

 後で『共有スキル』も見直そうと思ってたから……これは間違いなくセットしよう!


 それはそうと、この『浮遊』は……『インプ』を吸収した事が関係してるよね……確実に……。



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