91.スライム、パラダイス。

 リンが何やら……もじもじしている。


「どうしたんだい、リン? 」


「あるじ、友達いっぱい来てる。友達も一緒に連れてって」


 詳しく聞くと……


 みんなを守ってくれた三体の合体スライム達だけでなく、他にもたくさんのスライムがこの町の周りから集まってきたらしい。

 この家の隣の林に集まっているそうだ。


 俺は早速、屋敷を出て林の中に入ってみる。


 みんなも一緒について来ていた。


 そこで目にしたものは……


 ……俺は思わず笑ってしまった!

 もう笑うしかなかった……。


 林の中にちょっと入ると……


 ……スライムだらけだった。

 一面のスライム……色とりどりのボール……スライムが弾んでいた!


 すごい数だ……

 いったい何体いるのやら……


 ……百体以上は確実にいると思う……

 ……そう思いつつ『絆登録』リストの使役生物テイムドリストを確認すると……


 ……百六十八体


 ———ハハハ……


 俺はなぜか吹き出してしまった……

 もう笑うしかないのだ……。


 まぁスライム好きだからいいけどね。


 それにしても……今回も俺の知らない間に…… 使役生物テイムドになっていた。

 友達の友達は……皆友達……ってこと? 世界に広がっちゃうの? 友達の輪が……………。


 まぁこの街を守ってくれるメンバーとして、いいかもしれないけど……


 それにしても……百六十八体だよ……多すぎだよね……


 リンがいうように、一旦大森林に連れて帰ろう。


 ケニーに頼んでレベルを上げてもらえば、スライムの防御力からして、凄い守りの戦士になるだろう。


 警備要員として、この町に何体かおいてもいいし。


 残りは大森林の仲間にしてもいいだろう……。

 なんとなく大森林が浄魔とスライムの森になりそうな気がする……。


 もしかしてもっと集まったりするのだろうか……


 俺は恐る恐るリンに尋ねた……


「リン、スライム達はこれからも集まってくるのかなあ……? 」


「うーん……もうちょっとくるかも。みんなそれぞれ呼んでるみたい……。でも近くの子にしか通信してない……遠くの子も呼ぶ? 」


「あ…呼ばなくて大丈夫だよ、リン。近くだけで、大丈夫だから。今回は止めておこう……」


 俺は慌てて止めた。


 スライムが集まりすぎて困るという事は多分ないが……


 いいだろう……このぐらいで……。


 スライム達がみんな俺の方を見てプルプルしてる。


 何か温かい波動が伝わってくる……


 みんな喜んでくれているようだ……。


「みんなよく来たね。グリムです。これからよろしくね。とりあえず一緒に大森林っていうところに行こう」


(ポカポカあるじ、ポカポカ)

(ポカポカ)

(あったかいね)

(あったかいよ)

(ぬくぬくだね)

(ぬくぬくだよ)


 ……なんかみんないろいろ言っている。


 俺はリーダー的な役割をしている三体の合体スライムを呼んだ。


 リンに頼んで合体を解除してもらう。


 彼らは九体に戻った。


 この子達をリーダーにして、このスライム達をまとめようと思う。


 ということで……


 この九体に名前をつけてあげることにした。


 リンが呼んでくれた子達ということと、リーダーになる子達という意味で、『リ』の一文字を入れようと思う。



 オレンジのスライム——『リイチ』

 黄色のスライム——『リニ』

 赤のスライム——『リサン』


 ピンクのスライム——『リシ』

 赤紫のスライム——『リゴ』

 茶色のスライム——『リロク』


 青のスライム——『リナナ』

 青紫のスライム——『リハチ』

 水色のスライム——『リキュウ』


 若干、勝負時っぽい名前とか、預金っぽい名前とか、風流っぽい名前とかあるけど……気にしないのだ……。


 きっとジト目で俺を見ているニアとは、目を合わせないのだ…… 。


 リンの話ではまだ向かってきているスライムがいるらしい。


 リンに『種族通信』をつないでもらう。


 ———大森林が近い子はこの町ではなく直接大森林に入ってくるように。

 ———この町が近い子は、この林で待ってるように。


 ………と通信してもらった。


 もちろんケニーには、念話でその旨伝えスライムが入ってきても通してあげるように指示をしておいた。


 この林には、念の為、リンが残ることになった。


 まぁ念話で連絡してくれれば、すぐにサーヤかフラニーの転移で帰ってこれるからね。



  ◇




 俺達は、大森林の迷宮前広場に転移で帰ってきた。


 そしてミルキー達やナーナ、スライム達を紹介する為に主なメンバーに集まってもらった。

 もちろん霊域にいるメンバーにも集まってもらった。


 みんなそれぞれに自己紹介していた。


 最初ミルキー達はびっくりしていた。

 特にワッキーは泣きそうになっていたが……


 すぐに怖くない存在と理解して、むしろ積極的に友達になろうとしていた。

 子供の無邪気さからか意外と社交性のあるワッキーだった……。


 ケニーやフラニー達も喜んでくれていた。



 そして俺は、ケニーにスライム達のレベルアップについて依頼した。


 みんな基本的にレベルが3程度で、今のままでは心もとない。


 リンのようにとはいかないまでも、せめて『ハイスライム』になれるレベル20位まで上がって欲しい。


 そうすれば、余程の相手と戦わない限りは、死んだりすることは無いはずだ。

 スライムの防御力はすごいからね。


 ちなみにケニーは喜んで請負ってくれたが、ケニーの計画では大森林の仲間達も霊域の霊獣達も全員レベル30以上を目指しているそうだ。


 したがって、スライム達がレベル30になってくれても一向に構わない。


 ケニーなら、そうしてしまいそうだ……。



 ……ということで、スライム達にはレベル6を超えても分裂しないように伝えた。


 もちろんみんな理解してくれたわけだが……


 リーダーの九体が俺のところに集まってきた。


 はて……





 

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