53.盗賊、壊滅。

 俺は、ミルキーたちと今後のことを話し合っている。


 本来は、ミルキーを家に送り届けて終わりなのだが、住んでいた小屋は盗賊たちに荒らされ、半壊してるし、ここに居ること自体も危険だと思う。


 安全な霊域に保護しようと思ったのだが……


「私の家に来て、一緒に暮らさない? 広さも十分にあるし」


「サーヤさん、いいの? 」


「もちろんよ、あなたたちさえ良かったら、一緒に住みましょう。賑やかになったらあの家も喜ぶわ。それに、雰囲気が似てるのよ、ナーナに。あの子の導きかもね。私のことはサーヤでいいわ。友達になりましょう」


「ありがとう、サーヤさ…いえ、サーヤ。私、あの家も、あなたも好き。あったかい感じする。私のこともミルキーって呼んで」

「ありがとう」

「よろしくお願いします」

「感謝いたしゃす」


 妹弟たちも同意のようだ。


 ……特に俺の出る幕はなく……話はまとまったが……それでいい……別に寂しくなんかないのだ……。


 俺は、サーヤさんに『瞬間帰宅リターンホーム』で、ミルキーたちを連れて帰ってもらうことにした。


 これから行く盗賊退治は、彼女達にとっては危険だからね。


 関所を通る時に、彼女たちを連れていたから、帰る時にいないと不自然な気もするが……多分、その時には俺が盗賊を大量に連れて帰るから大騒ぎになるはずだ。

 そのドサクサで、誤魔化せそうな気がしている……。


 俺は、仲間になったばかりのオリョウと一緒に、盗賊のアジトに向かう。


 さっき捕まえた六人の盗賊たちに案内させると、大きな家というか……砦のようなものがあった。


 大きなアジトらしく、五十人ぐらいいるらしい。


 俺は、捕まえた盗賊たちの見張りをオリョウに任せ、一人でアジトに突入した。



 ———約五分かな……


 アジトの中が結構広かったので、思ったより時間がかかったが、別に問題ない。


 ほぼ瞬殺で、といっても殺してないけど、全員捕縛した。


 魔法紐の使い方も大分慣れたし、『状態異常付与』スキルも便利だ。


 スキルの本来の所持者であるリンは、直接触れないと付与できないみたいだが、俺は、一メートルぐらいの距離なら、直接触れなくても付与できるみたいだ。


 俺にとっては『眠り付与』と『麻痺付与』は、かなり便利だ。

 なるべくなら、殺したくないからね。

 甘いかもしれないけど……。


 盗賊たちは、今回もほぼ下着状態にしてやった。


 身に付けていた装備やアジトに隠してあった武器なども、全て丸ごと『波動収納』にしまった。ボッシュートだ!


 それから馬たちが結構いる。

 三十頭ほどいそうだ。


 しかも、いろんな種類がいる。

 おそらく行商人たちを襲った時に、奪ったものなのだろう。

 種類に全く統一性がない。


 多分、軍馬だと思うが大きくて足の太い馬、普通の馬車馬、そして、めっちゃかわいい馬がいる。

 ポニーサイズで、デフォルメされたようなずんぐり体型だ。

 これで色が白だったら、競走馬の王を目指したチビ馬のマンガにそっくりだ……。


 他にも、金色の馬がいる。

 『スピリット・ブロンド・ホース』とかなり似ているが、こちらは霊獣ではないらしい。


 でも、こんなに似てるなら、『スピリット・ブロンド・ホース』も、この金馬のふりをして、街中を歩けそうな気もするが……。


 オリョウと同じ竜馬りゅうまも何頭かいた。


 ダチョウの首を太くして、ずんぐりさせたような大きな鳥もいた。

 この鳥も馬車を引くのだろう。


 どの子たちも、みんなひどい扱いを受けていたようで、傷を負っていたり弱っていたりする。


 ろくに面倒を見てもらえてないどころか、虐待されていたのかもしれない。


 俺たちは、この馬たちも保護することにした。


 誘導はオリョウに任せる。


(あちしが来たー! もう大丈夫なわけ。みんな助けっから。マジ安心だかんね! )


 オリョウが、馬たちに話しているが……みんなと通じるのだろうか……。


  そして、盗賊のアジトには、奪った馬車も何台かあるので、それに盗賊を乗せ出発した。



 俺は、同様の手順で、この近辺の盗賊のアジトを三つ潰した。合計四つ潰したことになる。


 『波動検知』で、盗賊の気配を探り当ててアジトを見つけたのだ。


 もう近くには無いようなので、関所を襲う予定の盗賊たちは、これで全部ではないかと思う。


 ちなみに、各盗賊の頭目たちは、騒乱計画の件を詰問すると、金で雇われたと白状した。


 雇った相手は、背の高い異国の男ということだったので、例の悪魔の仕業だろう。


 関所を襲撃し、衛兵達の後ろから来る傭兵と挟み撃ちにするつもりだったらしいが、本当は、捨て駒で殺される計画だと教えてやった。


 真実を知った盗賊たちは、怒っていたので、衛兵に計画内容をちゃんと証言するように言い聞かせた。


 そう……言い聞かせたのだ……物理力は行使していない……していないのだ。


 どのアジトにも、馬たちが結構いた。

 どこも扱いが酷かったらしく、弱っている個体がかなりいる。


 俺は、馬たちを最初に転移してきた林に連れていき、『ドライアド』のフラニーに念話を入れた。

 フラニーの転移、『森妖精の通り道フェアリーロード』で霊域に保護してもらうためだ。

 あそこなら、安全だし、すぐに元気になるだろう。


 この時、フラニーに改めて霊獣達の現在の回復状況を伝えた。

 そしてダメ元で、サーヤさんの家の近くの林に、『森妖精の通り道フェアリーロード』を使えないか訊いてみたのだが……


 距離的に微妙なところらしい。


 やはり確実なのは、この街道に面した林ぐらいまでのようだ。


 何やら考えていることがあるようで、確実にできそうになったら念話してくれることになった。

 もし、フラニーの転移であそこから帰れるなら、話は非常に簡単になるのだが……。


 フラニーに馬たちを転移してもらった後、馬車を全て『波動収納』にしまった。


 俺が潰した四つの盗賊のアジトは、もう何も残ってないので、誰かが再利用して、アジトにするには結構大変だと思う。


 まぁ建物自体は壊してないから、やろうと思えばできるだろうけど。

 なんとなく、建物に罪は無いような気がして……壊せなかったのだ。


 ……余裕ができたら俺の別荘にでもしようかな……まぁその前に本宅がないけどね……。


 ちなみに、四つのアジトを潰して回収した金貨だけでもかなりの数だ。


 千枚以上あった。

 これには、関所を襲う依頼代金も入っていたようだが。


 盗賊を退治した者に、盗賊の持っていた物の所有権が移るようなので、全て俺のものということになるが……。

 意図せず、かなりの稼ぎになってしまった。


 武具や道具はそれなりのものだったと思うが……詳しくは見ていない。

 これも今度時間ができた時にゆっくりだ……。

 なんかそんなのばっかりな気がするが……気にしたら負けだな……無視しよう……自分にスルーだ……ごまかしスルー


 盗賊退治を仕事にすると、結構稼げるかもしれない。

 襲われる人も少なくなり、人の役に立つ仕事でもある……。


 でも、そんな殺伐とした仕事よりも……農業とかの方がいいよね。


 やっぱり……のんびり暮らすのが一番だと思う。


 俺は、盗賊たちを縄で縛り付け、それぞれを一定間隔で結んだ盗賊の列を三列作り上げた。

 五十人ずつ百五十人だ。


 これを半強制的に走らせて、関所まで戻ったわけだが、それなりに時間がかかり、もう日が暮れかけていた。


 案の定、関所では大騒ぎになり……

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