39.転移と、モフモフ。

 もう一つ、フラニーに相談しなければならないのは、どうやって最短で件の街まで行くかだ。


「私の森魔法で、『マナテックス大森林』の南西を出たあたりの小さな林までなら転移させることが可能です。そこから先は、歩いていくしかないのですが……」


 そんなところまで転移させてもらえるとはありがたい。


「そこから先は歩くとして、目的の街までどのぐらいで着くんだろう」


「普通に行けば、おそらく一日か一日半ぐらいかかるかもしれません」


 今の俺なら、その半分ぐらいの時間で着けそうな気がする。


 フラニーには、『ボルの森』の野生の馬を一緒に連れていくことを提案されたが、乗馬経験のない俺にはハードルが高すぎる。


 全力で走った方がよさそうだ。

 今の俺のスタミナなら大丈夫だろう。


 ニアとリンは大丈夫として、シチミとフウは俺が抱えて走ればいいだろう。


「今の俺のスタミナなら、結構走れる気がする。今回は走る作戦で行ってみるか」


「それでいいんじゃない。私もレベルアップしてるから全然いけると思う」


「リン、いける。大丈夫!」


「オイラだってもちろんやるぜ!」


「フウも、がんばります!」


「よしこれで決まりだ! 後は、臨機応変、その作戦でいこう!」


「それって作戦ていうの……ただの行き当たりばったりのような気がするけど……」


 ニアが鋭いツッコミを……バレたか……。


「ハハハ……まぁ細かいことは気にせずに行こう! 今は時間が一番だよ……」


 俺は、もっともらしいことを言って話をまとめた。


 ニアがジト目でみている……スルーだ……ごまかしスルー


 出発の前に、もう一つ大事なことを思い出した。


 救出の成功率を少しでも高めるために、『絆』スキルのスキル共有コマンドで、俺の使えるスキルを少しでも増やそう。


 といっても、使役生物テイムドたちのスキルを、一つ一つ詳細確認していくのはやっぱり大変だし、今はそんな時間はない。


 しかし、よく考えたらニアたちだけでも強力な通常スキルを持っていた。


 このことに気づかなかった自分が情けないが……。


 そんな反省をしつつも、俺はスキルセットのために、ニアたちに断ってから、スキルの詳細を『波動鑑定』した。


 これでスキルスロットの“選択可能スキル一覧”に表示されるはずだ。


 そして俺は、スキルスロットにセットする。


 ニアから共有させてもらったのは……


『風魔法適性』と『風耐性』『雷魔法適性』と『雷耐性』

 攻撃用に『突風』『風弾ウインドショット』『雷撃サンダー』『雷球サンダーボール

 回復用に『癒しの風』

 防御用に『風盾ウインドシールド』『雷盾サンダーシールド


 ……の十一個だ。


 リンからは……


『隠密』『聴力強化』『立体起動』『状態異常耐性』『状態異常付与』『物理吸収』『魔法吸収』


 ……の七個を共有させてもらった。


 シチミから『気配察知』


 ケニーから『視力強化』


 ……を共有させてもらい、これで、二十の空きスロットを全部埋めた。


 ちなみに、ケニーのスキルは、テイムドリストからステータスチェックして存在を知っていた。


 大森林防衛戦の報告を受けた時に、あまりの優秀さに驚き、確認していたのだ。


 勝手にセットしても良かったのだが、一応、本人に念話で断った。


「こ、こ、光栄です…」となんか嬉しそうな雰囲気を出していた。

 触脚をツンツンさせたに違いない。


 フラニーの転移も、共有スキルにセットできないかと訊いてみたのだが……


 フラニーの転移は、森魔法系の種族固有スキル『森妖精の通り道フェアリーロード』によるものらしい。


 残念だが、種族固有スキルは共有できないのでしょうがない。


 このスキルは、森や林、その他木ある場所ならば、転移できるらしい。

 転移距離は、スキルレベルによるのことだ。


 フラニーは、他にも種族固有スキル『森の守り手ウッズガーディアン』というのを持っており、植物を自在に操ることができるそうだ。


 植物の成長を助けたり、治療したりもできるし、戦闘に使うこともできるらしい。

 この前の防衛戦の時、蔓の攻撃も出していた気がするが、それは多分このスキルによるものなのだろう。


『植物錬金』と合わせて、強力な種族固有スキルをいくつも持っているようだ。


 以前、ニアが妖精族は強力な種族固有スキルを持っていると言っていたが、本当のようだ。


 ちなみに回復に使っていたのは、通常スキルの『森魔法ーー森の癒し』という技らしい。


 通常スキルといっても、森魔法自体、レアスキルに当たるらしいが……。



 俺は、シチミのカバンを肩から斜めに下げ、右肩にニア、左肩にフウを乗せ、両手でリンを抱えている。


 出発準備完了だ。


 しかし、左肩のフウがモフモフしてる!


 たまらない……


 このパーティーに足りなかったもの……


 そう! ………それは……モフモフだったのだ!


 ついにモフモフメンバーが入った!


 なんかめっちゃ嬉しい……ムフフフフ……


 あっ……いかん… …気をつけないと……フウに警戒されちゃう……


 冷静を装いつつ……


「じゃぁ行きますか! フラニー頼む! 」


「かしこまりました。お気をつけて」


「「「お気をつけて! 」」」


 俺たちはフラニーたちに見送られ転移した。

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