37.霊獣さん、いらっしゃい!

 俺はフラニーとカチョウに、固有スキル『絆』のことを簡単に説明した。


 『絆登録』メンバーになれば、お互いにメリットがあるし、新たに増えたサブコマンド『絆通信』の対象になり、念話で連絡できるようになるからね。

 どの程度の距離までできるのかはわからないけど……


 ただ、この二人は一緒に行動するわけではないので、行動仲間パーティーメンバーというわけにはいかない。

 かといって、浄魔たちのようにテイムもするのも違う気がする……


 そうなると……使えそうなのが……心の仲間チームに入ってもらうか、友達フレンドになるか……

 

 ここはやっぱり心の仲間チームがいいと思う。


 心の仲間チーム友達フレンドも本人の承諾なしには登録できないので、簡単に説明すると、即同意してくれた。


 むしろ、この『ボルの森』すべての生物を心の仲間チームに入れてほしいと言われたが、何体いるかもわからないし、承諾を取るのも大変だし……一旦保留にさせてもらった。


 ナビーに相談すれば、何が効率的なやり方を提案してくれそうな気もしたが……

 それはそれで何か怖いし……今回は何も訊かなかった。


 ナビーは、基本的には、こちらから問いかけなければ答えないお淑やかさがある……

 といっても俺自身のはずなんだが……。


 どうしてもと頼まれて、防衛と救助に活躍した主な霊獣たちだけは登録することにした。

 まぁ、この森の幹部ということで良いだろう。


 そして、その際、正式な名前がなかった霊獣たちの名付けも頼まれてしまった。


 新しく名前をつけたのは……


 スピリット・エルク(ヘラジカの霊獣・レベル28)——メリクリ

 スピリット・イエロー・ベア(熊の霊獣・レベル28) ——プププ

 スピリット・シルバー・ウルフ(狼の霊獣・レベル25) ——ギンロ

 スピリット・レッド・フォックス(狐の霊獣・レベル25) ——オアゲ

 スピリット・グリーン・ラグーン(狸の霊獣・レベル20) ——オテン

 スピリット・ブルー・スワロー(ツバメの霊獣・レベル20) ——ヤクル


 相変わらずネーミングセンスのない俺は、連想したものでさっと付けてしまった……すいません……。


 またもニアがジト目で見ていた……。


 この子たちに加えて、すでに名前をつけてあった『ライジング・カープ』たちと代行者のフラニーとカチョウ及びその子供たちを心の仲間チームメンバーとして登録した。


 ちなみに、フラニーとカチョウはレベル32、カチョウの子供たちはレベル5だった。


 『ライジング・カープ』たちはレベル31で意外と高く、確かに、この『ボルの森』を守る騎士と言えるかもしれない。頼むぞ! カープ騎士!


 霊域はもともと安全だったために、みんなそれほどレベルは高くないようだ。


 ただ、種族毎に基礎能力が違うので、レベルだけで一概に強弱は測れない。


 霊獣たちの力からすれば、仮にレベル30でも、通常の魔物のレベル30に比べたらはるかに強いようだ。


 フラニーは、ドライアドだから妖精族だけどね。

 ニア同様、強力な種族固有スキルを持っていそうだ。

 勝手に鑑定する気はないので、今度、ゆっくり教えてもらおう。


 ちなみに『ライジング・カープ』たちは、この『絆登録』をすごく喜んでくれていた。


「これでニアちゃんといつでも話せるし。まじアゲアゲ。まじテンション上がるし。まじまんじ!」


「やったね、キンちゃん!」


「リンちゃんも連絡するし。待ってるだし。シチミも無視したら、まじボコるし。まじまんじ」


「わかった。待っている」


「オイラの扱いひどくねー」


「女子じゃないからしょうがないし。ウブな乙女は警戒するし」


「オイラもリンも性別ないから、女子になることもできる。任せとけ!」


「もう遅いし。そのままでいいし。女子になっても扱い変わんねし」


「そうよシチミ。そういう役割が必要なのよ。落とし役よ。みんなのためによろしく」


 ニアがメチャクチャな論理で、シチミを丸め込む。


 なんかシチミが不憫でしょうがない……でも、楽しそうだからいいか。


 ニアはキンちゃんの背に、リンはギンちゃんの背に、シチミはヒロちゃんの背に乗って、空を泳ぎながら楽しそうに騒いでる。他の鯉たちも、口をパクパクさせて楽しそうだ。


 相変わらず愉快な奴だ。


 名前がついた他の霊獣たちも、とても嬉しそうにしてくれていた。


 『スピリット・ブラック・タイガー』の夫婦は今も意識不明なので、意思確認も取れないし、『絆登録』はしていない。


 ちなみに、霊獣たちの実質的なリーダーは、『スピリット・エルク』のメリクリのようだ。

『ライジング・カープ』のキンちゃんですら、一目置いているようだ。


 『ボルの森』全体の維持管理を代行者のフラニーとカチョウがやって、霊獣の取りまとめをメリクリがやる感じなのかな……まあ……任せるけどね。


「主殿、私が中心となり、今後、霊獣たちの強化訓練を致します。守護の力がありますので、心配はないと思いますが、万が一に備え、少しでもお役に立てる力を身に付けます」


 メリクリは、凄く真面目なようだ。


「わかった。ありがとう。でも、無理しない程度にね」


「ご主人様、我も、もっと強くなりとうございます。是非、ご指南をお願いします」


 ギンロが訴える。


 ご指南と言われても……

 ……………………………

 ……そうだ!


「俺に指南はできないから、『マナテックス大森林』の浄魔たちと訓練したらどうかな。より実戦的な訓練ができると思うけど」


「「ぜひお願いします」」


 メリクリとギンロに即答されてしまった。


「みんなもそれでいいのかい?」


 他の霊獣たちにも確認してみる。


「マスター、僕、お腹すいた。蜂蜜食べたら訓練がんばる」

「親分、あっしは、もちろん行きやすぜ。任しておくんなやし」

「大将、オイも行きます。精進します」

「マスター、俺がどんなやつでもボコボコにしてやるぜ!」


 プププ、オアゲ、オテン、ヤクルが、次々に肯定の意を示す。

 みんな、それぞれに味があって面白い奴らなのだ。

 個性って面白いね。オンリーワン万歳!


 個性といえば……キンちゃんたち……そう思っていると……


「うちら、もちやるし。練習試合だし。超たかまるっしょ!まじまんじ。うちは、ドラゴン王にきっとなるし!」

「「「よろしくお願いしやーす!」」」


 『ライジング・カープ』たちも、やりたいようだ。


 てか、練習試合って……まんざら外してないけど……。


 フラニーとカチョウは良いのだろうか……


 そう思って確認すると……


「主様のお陰で、守護の力が働いておりますので、彼らが霊域を離れても大丈夫です。移動には私の森魔法で、『マナテックス大森林』ならどこにでも転移できます。前回のように戦闘中でなければ、集中できるので、ある程度広範囲に転移させられます」

「みんなマスターのために、この森のために役立ちたいのです。私からもお願いします」


 じゃぁ、みんな合意ということだね。


 俺は『アラクネ』のケニーに『絆通信』で連絡し、今後の交流と合同訓練を任せた。

 もちろん、フラニーやカチョウと相談しながら仲良くやるように言ってある。


 思わぬ申し出だったが、今後、霊域と魔域の『マナテックス大森林』の交流を進めるのはいいことだ。

 どっちも俺が主なんだし、みんなで仲良く力を合わせるのがいいよね。




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