34.果物、美味! ピーチ編。

 食事はフラニーが用意してくれた。


 といっても、料理どころじゃないので、森のすぐ近くで採れる果物だが。


 普通の果物ではなく、回復効果の高い霊果で、近くに自生していたものだけを採ってきたようだ。


  ———四種類ある。


 マナテックス大森林でも食べた『マナップル』に『マナウンシュウ』……

 それにあれは……どう見てもバナナ……でも……なぜにピンク? Why?


 鑑定してみると……


 マナバナナ——スタミナ回復効果がある天然の霊果。

 慢性疲労、筋肉疲労にも良い。

 魔法薬や霊薬の素材になる希少な果実。

 特に皮は用途多数。栄養豊富。


 おお、いいね。

 色的に食欲が刺激されないけど……


 もう一つは、俺の大好きなあの果物……桃だよね……多分……


 スピピーチ——気力回復効果のある天然の霊果。

 精神疾患に効果あり。魔法薬や霊薬の素材になる希少な果実。

 種子は魔物除け効果あり。

 この種子の殻内の仁を使って作る桃仁酒は、浄化の効果がある。

 種子の殻のみでも、少しの魔物除け効果がある。

 総合栄養果実であり、生物が通常必要とする栄養素を全て含む。


 なにこのスーパーフルーツ!

 チートフルーツ来たー!


 まぁ、チートとまで言えるかわからないけど、すごいの来たなぁ……


 しかも、俺の大好物の桃!


 スピリチュアルピーチみたいなイメージなのかな…名前がでなくて本当よかった。


 よし食べるぞー!

 でも楽しみは最後に!


 まずは、ピンクのバナナから……


 色がほんと微妙……


 おお、皮をむくと中は……普通のバナナだ。

 これなら食べる気になる。


 お味の方は……


 甘い!濃厚!芳醇な香りが鼻に抜ける……


 そして何この感覚……バナナなのに、ジューシーに感じるってどういうこと?


 うん……何本でもいけるわ!


 おっといけない、ニアにも皮をむいて渡す。


 サイズは、普通のバナナと一緒だが、ニアには大きすぎるので、先端五センチほど折って差し出す。


 ニアは、ポケットから取り出した如意輪棒を適度な大きさにして、バナナに突き刺した。


 棒アイスのようになったバナナにかぶりつくと、「おおー!」雄叫びをあげた。


 後は、美味しいともなんとも言わずに貪りついた。


 気に入ったようで良かったけど、如意輪棒はあんな使い方もできるのか……何か違う気がする……


 リンとシチミには皮ごと渡してあげた。


 三回のバウンドと三回の蓋開閉があったことは言うまでもない。もちろんシチミは、変なステップつきだ。


 俺も、もう一本食べたいところだけど、ここは我慢して、とっておきの桃を食べよう。


 普通の桃より一回り大きく、上半分が薄いピンク、下半分が薄い黄色だ。

 産毛はほぼ感じないのでそのままかぶりつく。


 ハハハ……アハハハ……なんだこれ!


「うおーーーー!」


 思わず叫んでいた。


 ニアのことを笑えない。

 もう叫び声しか出ない。


 芳醇でありつつ爽やかな香り、みずみずしくも濃厚な甘さ、口の中でとろけていく舌触り、果汁の多さ、口から溢れ出てしまう。

 うまい! うまい! うまい! うまーい!!


 もう……うまいしか言えねぇ。


 スピピーチ万歳!! ここはまさに桃源郷だーー!


 俺の様子を見たニアが、慌ててバナナを平らげようと加速する。


 バナナを丸呑みにしていたリンとシチミは、興味深そうに見ている。

 早速一つずつあげると丸呑みした。


 二人はしばらく動かなくなり、ぷるぷる、ガタガタと震えだした。


 その震えが止まると、お約束の三回バウンド、三回開閉変なステップつきが披露された。


  体が震えるほど気に入ったようだ。


 ニアは、ようやくバナナを食べ終わったらしく、顔中バナナだらけにしながら、置いてある桃の前に着地しかぶりついた。


「おーーーー!」


 大きく叫ぶと、自分の胴体くらいある桃を丸抱えにして食べ続ける。


 もう全身果汁まみれだ。


 気持ちはわかる……わかるよニア……。


 そんな俺たちをフラニーとカチョウとその子供たちが微笑みながら見つめていた。



 お腹も一段落したところで、俺たちは寝ることにした。


 『大霊樹』一階の広場に、ワラにシーツをかぶせた簡単なベッドを作ってくれていた。


 フラニーとカチョウは、他の霊獣たちが行方不明の者たちを捜索中ということもあり、まだ寝ないそうだ。


 手伝おうかと思ったが、俺たちの出る幕はなさそうだったので、休ませてもらうことにした。


 もちろん、びしょびしょのニアさんは、フラニーが用意してくれた水でさっぱりしてから寝た。


 服は洗って干しており、明日の朝には乾くだろう。


 今は、フラニーが作ってくれた葉っぱのポンチョみたいなものを着て寝ている。

 ミニスカ状態になっているが、小さな布を掛け布団にして寝ているので大丈夫だろう。


 リンとシチミは、服とかないから楽だよね。


 俺はというと……

 実はずっと全裸状態なんだよね。


 悪魔との戦いで服が焼けてしまったからね。

 迷宮で手に入れたローブを着て、しっかり縛ってるから変なことにはなってないけど。


 この中は全裸男だから、ちょっとした変質者だ。

 やっぱり服着てないのは違和感しかない。


 服が欲しい。


 どこかで買いたいけど……すぐには無理だよね……。


 とりあえず、フラニーからもらった布で全身を拭いてから、またローブに身を包むことにした。






 目覚めて外に出ると、空が白んでいた。


 ちょうど、夜が明けるところだ。


 結構ぐっすり寝れた。


 フラニーが、力なくうつむいている。


 なんだか憔悴した顔だ。


「おはようフラニー、もしかして徹夜かい? 」


 驚いたように振り向いたフラニーは、意を決したように跪いた。


ぬし様、お願いがございます」

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