22.悪魔が、来たりて、俺のターン。
俺を取り囲んだ悪魔たちは、先程の悪魔と同じような風貌だ。
同種の悪魔だろう。
一難去ってまた一難だ……
やばい……
何かやろうとしている……
え、火の玉を撃ってきた! やばい!
しかも一斉に!
狙ったように、同時に四つの火の玉が迫る———
———避けられない……避ける場所がない……
うわぁー、、、熱い、熱い熱い熱い!
俺は火の玉の直撃を受けてしまった。
しかも、動けずに四つ全部だ!
めちゃめちゃ熱い!
俺は死を覚悟したのだが……
……なかなか死なないようだ……。
いや……意外に大丈夫な感じだ……
服が焼けて全裸になっているが……何故か生きてる。
体が熱いし、赤くなってるけど、ケロイド状にはなっていない。
なぜだ……
いや……そんなことを考えている場合じゃない。
とにかく、大丈夫な今うちになんとかしなきゃ!
しかし、俺には四体相手に、戦う術が思い浮かばない。
平和な日本で暮らし、本気の殴り合いすらしたことがない。
部活だってテニスだったから、格闘技の経験もない。
……でも……なんとかしなきゃならない……
ダメだ!
……考えてる暇なんてない!
もうヤケクソだ!
さっきみたいに、全員ボコボコにしてやる!
俺は、まず目の前にいる悪魔を全力でボコりに行った。
全力で走りだした途端———
———周りの景色がスローに見える……
もしかしたら、極限状態の中で、一流アスリートなどがいう“ゾーン”に入ったのだろうか……
目の前の凶悪な悪魔の動きがスローに見える……
悪魔は一瞬驚いたような顔をしたが、俺はお構いなしにワンパンでぶっ飛ばしてやった。
———バフォウンッ
さっきと同じように、頭が吹っ飛んだ!
うん、このやり方でいける!
俺は、全速力のまま、すぐに方向を変え、残りの三体を順番に屠りに行く。
さすがに残りの奴らは、火の玉を連射してきたが、俺はお構いなしに、火の玉を受けながら進んだ。
今の俺は、そんな攻撃など気にしてやらんのだ!
とにかく、ボコることだけを考えた。
そして……
三体とも、全てワンパンでぶっ飛ばしてやった!
奴らは、只今、絶賛蒸発中だ!
ざまぁみろだ!
奴らは、ろくに避けることもできなかったから、悪魔は意外と回避能力が低く、物理攻撃にも弱いのかもしれない。
なんとなく、卑劣なイメージだし、変則的な攻撃とか魔法主体なのだろう。
今度こそ大丈夫だろう……
一応、周囲を警戒したが、追加で悪魔が出てくる様子は無い。
そして、今は魔物も周囲に寄ってこない。
森の外側に近い方向の魔物は、あえて寄ってこないようだ。
反対側つまり大木側の魔物たちは、俺を助けに来たニアたちの無双によって、蹴散らされて、ほとんどいなくなっている。
そして、ニアたちは少し前に近づいていたようで、俺がワンパンで悪魔をぶっ飛ばす様子を見たらしい。
少し唖然とした顔になっていた。
まだ戦闘継続中ということもあり、俺たちは特に会話は交わしていない。
みんな周囲を警戒している。
ちょっとだけ落ち着いて思い出したことがあった。
俺は服を焼かれて、現在、全裸マンである…………。
だからニアは近づいてこないのかもしれない。
やばい……
このままでは逮捕されかねない……。
俺は、『波動収納』から迷宮で手に入れたマジックローブを出し、袖を通した。
紐が付いていたので、前を縛りかろうじて全裸状態から脱出した。
そして、先程落とした魔剣を拾った。
「よし、悪魔はもういないみたいだ。魔物を倒しながら、あの大木のところまで戻ろう!」
俺は助けに来てくれたみんなに声をかけ、一緒に大木に向かって走り出した。
大木までの間は、また魔物に埋め尽くされていた。
ニアたちが、魔物を蹴散らしながら作ったここまでの道は、周りから押し寄せた魔物よって、既に塞がれていた。
大木のところに戻るには、また魔物を倒さないと進めない。
ニアは、複数体を同時に攻撃できる風魔法の『突風』を放ち、空から襲い来るハエの魔物を蹴散らす。
高速で、『突風』を避けながら攻撃してくるハチの魔物には、雷魔法を叩き込んだ。
稲光を放つ紫色の巨大な楕円形の球体、雲のようにも見えるそれは、飛びながら周囲のハチの魔物に雷撃を入れる。
初めて見るが、おそらく雷魔法の『
これも範囲攻撃に有効なようだ。
リンは、レベルが低めのシチミをフォローしながら戦ってくれているようだ。
リンは、ウサギとネズミの魔物の集団を、『膨張』スキルによる巨大化攻撃“鏡餅スタンプ”で押しつぶし殲滅している。
それと同時に、変形スキルを使って体の一部を鞭のようにし、芋虫の魔物をなぎ払い、シチミの方に飛ばして集めている。
シチミが、口から巨大な投網のようなものを出して、それらを一網打尽に拘束している。
おそらくシチミの種族固有スキル『マルチトラップ』による罠の一つだろう。
網から逃れたものに対しては、『噛みつき』攻撃をしている。
網に拘束された芋虫の魔物には、リンが鞭のように伸ばした体の一部を再度触れさせ、何かをしている。
これは……おそらく毒だ……毒を注入している。
リンの持つ『状態異常付与』スキルで毒を付与したに違いない。
もしかすると、吸引したイビルバタフライの毒を使ってるのかもしれない。
まさに、
リンとシチミは、いいコンビネーションがとれているようだ。
俺も負けてはいられない。
今度こそ魔剣を使って、魔物を倒す!
———『魔剣 ネイリング 』———階級 『究極級』
鈍色に、揺らめくように輝く俺の魔剣は、名前付きの魔剣だった。
おそらく階級も、『伝説の秘宝級』であるニアの『如意輪棒』ほどではないが、上位のものだろう。
俺は、突進して襲ってくる猪魔物を横薙ぎに斬りつける。
もちろん、剣術などやったことはないが、横薙ぎの手の振りは、テニスのストロークに似ている。
テニス部だった俺には慣れた動きだ。
全く剣の重さを感じない……
……そして凄まじい切れ味だ!
抵抗をほとんど感じることなく猪の魔物を一刀両断にした。
すごい切れ味の剣だ。
剣の風圧でなのか、近くの魔物も同時に血を噴き出し、弾け飛んでいる。
この剣には……何か特殊効果があるのだろうか……
今度は空から、カラスの魔物が襲ってくる。
凄いスピードだ。
俺の顔面に狙いを定めて突進してくるカラス魔物を紙一重で躱す。
ところが、その隙をつき別のカラス魔物が襲ってきた。
俺は思わずテニスのボレーのような形で顔を守る。
……すると、前に出された剣に突撃する形になったカラス魔物が縦に二等分され、しばらく飛んだ後に落ちた……。
あまりの切れ味に、斬られた自覚も持てなかったのではないだろうか。
俺の手にも負荷をほとんど感じない。
テニスのボレーと同じで、相手の威力を利用するだけで良い。
自分の力はほとんど要らない。
意外に、テニスの応用の剣の使い方で通用すると思った俺は、まだ空中にいるカラス魔物たちに向かって、剣を振り下ろした。
そう……
———スマッシュだ!
俺の一振りは、狙っていたカラス魔物を両断するとともに、その後ろにいるカラス魔物二体も巻き添えにして、一気に三体のカラス魔物を撃墜した。
おお、やった!
なんか…… だんだんテンションが上がってきた!
この魔剣があれば、俺も戦闘要員としてやれそうだ!
何よりも、仲間たちと一緒に戦えていることが嬉しい!
俺たちが大木にたどり着いた時には、近くの魔物はあらかた倒していた。
ニアは、自分でも無双状態しながら、俺の様子を見ていたらしく、あんぐりした顔になっていた。
リンとシチミは、なんだか嬉しそうだ。バウンドと蓋開閉を三回やっている。
「強き王よ、早く中へ」
後続の魔物が迫っている。
まだ戦いは終わっていない。
俺はカチョウに呼ばれ、今度こそ、大木の大きな
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