5.見た目は青年、中身はおっさん。
「ちょっと! 起きなさいよ! おーい! もしもーし! 生きてるんでしょ……生きてるよね?」
ん……なんだこのデジャヴ……
やっぱ夢だったのか……
……いや……もしや……ループものなのか……?
やっぱり瞼が重くて上がらない……。
意志の力で少しずつ瞼に力を入れる。
やっぱりニアの顔がある……。
でも……緑のボール……リンも弾んでる。
……てことは……
……ループはしてない!
考えすぎだったようだ。
それじゃあ天国?
……いや……どうなったんだ………?
「ニア……リン……大丈夫か? ……俺たち生きてるのか?」
自然にそんな言葉が出た。
「何言ってるのよ! グリムがすべて倒したんでしょう?」
腕組みしながら、呆れたようにニアが呟く。
「え、倒した?」
「そうよ、みんな昇天済みよ! いったい何したのよ?」
ニアが指さす方を見ると、凄まじい骨の山というか骨の絨毯ができている。
なんかわからないけど……助かったみたいだ。
でも本当によかった。
生きてたんだ俺たち。
俺は起き上がると、思わずニアとリンを両手に抱きしめていた。
ニアは顔を真っ赤にして、バタバタ暴れている。
リンはプルプルしている。
俺はそんなことお構いなしに、ぎゅっと抱きしめる。
だってほんとに嬉しいんだから。抱きしめずにはいられない。
歳のせいか脆くなった涙腺は、すでに決壊している。
それもお構いなしに、ひとしきり二人にスリスリしてしまった。
ニアのポカポカ頭を叩く抗議で、やっと二人を解放した。
リンはあぐらをかいた俺の膝の上に乗り、ニアは同じく俺の膝の上でリンにもたれかかっている。
俺はこの光景を忘れない。
この気持ちを忘れない。
いるかいないかわからないけど、感謝せずにはいられない。ありがとう……神様。
落ち着いたからか、急に体が重い……怪我をしている感じでもないが……疲れとかストレスかな……
ニアもリンも少しだるそうな感じだ。
「っていうか……そもそもあんた……本当にグリムでいいんだよね?」
思い出したとばかりに手を叩くニア。
え……
不思議そうにしている俺の様子を見て、ニアが続けた。
「むさいおっさんから、ピチピチの美青年になってるけど……」
え……
……慌てて体を触ってみると……
なんかスリムになってる……そしてなんとなくピチピチ感がある……
顔が見たい……何かないか……
歩き回って小さな水たまりを見つけた。
うーん、よく見えないが……確かに若くなってる……
なんか高校の時の……部活少年だった時の顔だ……
えっ、どういうこと!?
……若返ったってこと?
整理が追いつかず、呆然としているのが自分でもわかる……
正直、何がなんだか……大混乱だ……。
そんな俺の様子を察して、ニアが言う。
「ステータスを見てみたら? 何かわかるかもしれないし……レベルだって上がってると思うけど」
ステータスを見ると……
<年齢> が十八歳になっていた。
十八歳って………。
見た目だけでなく実年齢も若返ってるってこと……いやいや、意味わからん……
“見た目は青年、中身はおっさん”………名探偵にでもなれと!? ……無理だし!
誰か説明してくれ! プリーズ!!
「ねぇねぇ、どうだったのよ」
聞いてくるニアに、十八歳だったことを告げると、かなり驚いていた。
この世界では、若返りの秘宝なんかもあって、若返ること自体はあり得るらしい。
ただ、それは見た目が若返るだけであって、実年齢まで若返ることはないようだ。
ニアも頭を抱えていた。
若返ったことは嬉しい気もするが……素直に喜んでいいのやら……微妙すぎる……。
ちなみにレベルが1から9に上がっていた。
このこともニアに伝えると……
「なにそれ! こんだけ倒しておいてレベル9って! どんだけ成長遅いのよ! 意識失ってた私だってレベル45に爆上げされてたのに!」
呆れを通り越してキレ気味に叫ぶニア、そして最後には哀れみの目で俺を見つめてる。
もしもし……なぜ君が切れてる……そしてそんな目で見つめるのはやめてほしい……。
しかし、レベル45は凄い。
確か……ニアはレベル15だったはずだから30も上がったのか。確かに爆上げだな。
俺はレベル1から9だから結構上がったのかと思ったけど、ニアに比べると確かにショボい感じだ……。
でもまぁ、生き残れたんだし文句は無い。
そういえば、リンはどうだったんだろうと思って念話で確認してみた。
な、なんと上には上がいた。
リンはレベル3から35も上がってレベル38になっていた。
ニアを上回る爆上げだ。
二人ともすご過ぎる……俺っていったい……
まぁ、がんばって戦ったのは二人だし、基本的に俺は何もできなかったからね。しょうがないか。
ニアにリンのレベルを伝えたところ、一瞬微妙な表情をしたが、リンを抱きしめて一緒に喜んでくれていた。
微妙に仲間外れな気持ちになるが……卑屈になるのはよそう。
「もう危険は去ったんだし、しばらくこのままゆっくり休みましょう。私もステータスや新スキルを確認したいし、グリムもリンもゆっくり確認したら」
そういうと、ニアは地面に寝転んで静かになった。
リンも何やらじっとしている。
確かにいい機会だ。
ここでゆっくりスキルの中身を把握しておこう。
さっきみたいに、自分のスキルのこともよくわからず、満足に戦えないのはもう御免だ。
よし、じゃあ、しっかり確認していこう。
まずは[基本ステータス]から……
[基本ステータス]
<種族> 人族
<名称> グリム
<性別> 男
<年齢> 十八歳
<職業> ――
<状態> 記憶喪失(一部)
<レベル> 009
<身体力(HP)> 0095
<スタミナ力> 0085
<気力> 0095
<魔力(MP)> 0125
年齢の件は考えてもしょうがないからスルーするとして、一部記憶喪失はそのままってことだな……。
しかし性別が女性とかに変わってなくて本当によかった。
……念のため確認してみたが、ちゃんとあった。良かった……安心するわ……。
各数値も……魔力が少し高いようだが、他は標準的な数字だろう……多分だけど……
次は、[サブステータス]だな。
[サブステータス]
<攻撃力> 011
<防御力> 015
<魔法攻撃力> 012
<魔法防御力> 015
<知力> 011
<器用> 009
<速度> 009
ここも標準的な数値だろう。
攻撃力より防御力の方が高いようだ。やはり俺は攻撃に向かないタイプなんだろうか……まぁ、今考えてもしょうがないか。
次は、[特殊ステータス]だな……まずは……
<称号> 『ファンタジスタ 』『転移者』『 やさしきテイマー 』『名付け親』『 絆の盟主』『 限界を超えし者 』『想定外 』『思いを遂げる者 』『守りし者』『 アンデッドの天敵 』『魔物の浄化者』『 浄化されし魔物の盟主』『 奇跡の体現者 』『精霊王』
<加護> 『精霊の加護』
おお……加護はそのままだけど、称号がなんか増えている……
なにか色々あるけど……さっぱりわからない。
試しに『ファンタジスタ』に焦点を当て、“詳細”と念じてみる……
……だめだ何も表示されない。
称号は、ただの愛称みたいなもので、詳細がないのかもしれない……
ちょっと気になる称号もあるけど、今はスルーでいいか……。
次はいよいよスキル……さぁ、ここからが本番だ!
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