第4話 北の高原
「どうして、人間は、いつも突然森を壊すんだ。なんの権利があるというんだ!」
タヌキが怒った口調で話す。
キツネが悲しそうに答える。
「人間は人間たちだけの権利を作って、人間たちだけの理屈で平気で森を壊すのさ。」
「僕らにだって生きる権利はある!」
「人間は私たちの権利は認めていない。私達に心がある事も権利も何も認めないから、好き勝手にやりたいことをやる。権利がないって悲しいね。。。。頭でっかちさんには、辛いだろうけど、今は明日どうやって生きるかを考える時だよ。権利のことは生き残ってから話せたらいいね。」
タヌキもキツネも黙りこくった。
キツネのキュービとタヌキのガラキだ。彼らはいつも権利と難しい話をしているので、メラは少し苦手だ。
沈黙が長れる中、年老いた鹿が語り始めた。
「この森は、明日か明後日には、ほとんどの木が切り倒されるだろう。もうここでは生きていくことはできない。だから、わしは、今夜この森を出て北の高原を目指そうと思う。」
その言葉にイノシシが反応した。
「北の高原って伝説の王子の北の高原?子供の頃にお祖父さんに聞いたことがある。
大昔、動物と人間が心を通わせて仲良く生きていた国があったって。」
人間と動物が仲良く生きる?メラには言葉はわかるが、まったく意味がわからなかった。
キツネとリスが仲良く暮らすより100万倍も難しそうなことだ。
そんな事が可能なら、何年も人間に追われ続けてきた暮らしはなんだったんだろう?
メラには人間に対する憎しみ以外何も存在しない。
でも、もしそんな世界があるなら、住処を追われる恐怖はなくなるかもしれない。。。
そんなメラの想いをかき消すように、亀が言った。
「北の高原の人間は遥か昔にいなくなったそうだよ。行っても、もう既に黒に覆われてるんじゃないかな。それに僕たち亀の歩みでは遠すぎる。僕は人間の街の中の公園の池に行くよ。それじゃーね。」
亀は背を向けて歩いて行った。
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