向こうの山であった事
第3話 侵食
リスの名前はメラ。
向こうの山に住んでいた。
向こうの山では、何年も前から人間が時々やってきて、木を切り倒し、
広場を作って、黒い板を並べていった。
そこに人間が住むでもなく、荒地に黒い板があるだけだ。
最初は、広い場所で邪魔だけど、周りで暮らしていけた。
しばらくすると、またその隣の土地の木を切り倒して黒いのを作っていった。
さらにしばらくすると、その隣に、、、、
どんどんどんどん荒地の黒い屋根は拡がっていき、いつのまにか黒い板の南側に住むメラのいとこと連絡が取れなくなった。
いつのまにか、夏の暑さも強烈になっていった。
いつのまにか、樹々の作り出す、爽やかな空気の匂いも遠くになっていってしまった。
いつのまにか、メラ家族の住める場所は向こうの山の端っこに追いやられていった。
メラの住む森は黒い板と人間の街に囲まれた、小さな離れ小島のようになっていた。
ある夏の暑い日に、やつらがやってきた。
グワーン、凄まじいエンジン音を立てながら、大勢の人間たちがメラの森の木を切り倒し始めた。
凄まじい勢いで木が切り倒されていく。
メラの家の木も切り倒され、メラの家族たちや、森の仲間たちは、人間の街の際まで避難していった。
もうすぐ工事は終わる、住む場所は狭くなるが、きっと生き延びることはできる。
メラの住む森の仲間たちは祈ったが、人間たちの伐採が終わる気配はない。
森を半分切り倒した頃、メラの家族は、もうこの森が全て失われると悟った。
その時、空が光り、大きな雷の音が響いた。
直後に大雨が降りだし、人間たちは慌てて引き上げていった。
森に静けさが戻った。
半分くらいの広さになった森で、動物たちが集まってきた。
キツネ、タヌキ、野ネズミ、イノシシ、ヌートリア、リス、鹿、亀等々、みんな不安そうな顔をしている。
普段は狙う側、逃げる側の関係だが、今はみんな恐怖で震えている。
ケホケホ、メラの弟 メイチも咳をしながら、震えていた。
野ネズミの子供が話した。
「この森はどうなっちゃうの?」
母ネズミはできる限りの穏やかな声で、子ネズミを見つめながら言う。
「もうすぐなくなっちゃうかもね。これからどうしようか・・・・」
周りの動物たちの表情が凍りついた。
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