第2話【第一章】
その日もまた、実に静かな夜を迎えた。
聞こえてくるのは、このアパートのそばを流れる小川の水音と、遠くの幹線道路から聞こえる自動車群の走行音。それに、クーラーの稼働音。
僕、塚島優翔にとって、このくらいの静けさというのが、勉強には適していた。
中学校までは、ヘッドフォンで昔の洋楽を聞き流しながら勉強していたのだが、高校に入ってからは止めた。その方が、集中し易いということに気づいたからだ。
毎年暑い暑いと言われてばかりで、地球温暖化という危機が叫ばれているけれど、僕にはあまり実感がない。実感する暇がないのだ。志望大学に現役合格したとはいっても、それは所詮通過点。それなりの奨学金を得続けるには、日頃の勉学が不可欠だった。
サークルもコンパも一切抜き。僕は、こうして黙々と、しかし確実に歩んでいく人生の方が性に合っているらしい。
「ん」
勉強机の前の回転椅子の上で、大きく伸びをする。少し休憩するか。水分補給も大切だし。
そう思って、冷蔵庫のある廊下に向かって一歩を踏み出した、その時。
カチャリ。
カチャカチャ。
カチャッ、カチャカチャカチャッ。
勉強机の配された壁際、その反対側。そこには襖があり、もう一つの部屋に続いている。そしてこの音は、その襖の向こうから聞こえてくるものだ。僕の集中力が切れると、時々聞こえてくる。
「優海、何か飲み物は要るか?」
返答はない。今は不要、ということだろう。
二つの部屋があるところから察せられる通り、ここには同居人がいる。それも、極めて神経質で、それでいて僕と自分の生活の糧を得てくる人間だ。
そんな彼女が今何をしているのかと言えば、テレビゲームである。ただし、ただのゲームではない。ネット通信型FPS――ファーストパーソン・シューティングゲームだ。
僕も一度だけ、私用のパソコンでプレイ動画を見たことがある。画面の下方に、操作しているキャラクターの腕と所持している武器が映り、標的(相手プレイヤー)が画面奥に現れる。そこで武器による戦闘、主に銃撃戦を行い、相手を倒せば得点となる。
アメリカで活発な狩猟競技を模したゲームとして、数年前から世界大会が催されるレベルになった。そして、戦績に合わせて賞金が出る。
彼女が得ているのは、そして僕と彼女の生活を支えているのは、主にその賞金である。早い話、彼女は仮想世界での凄腕のハンターであり、賞金稼ぎであり、紛れもない殺人鬼と言えるわけだ。
逆に、僕はそんなものに興味はない、というか嫌悪している。仮想世界だからといって、人を易々と殺すことができる、というのは恐ろしいことではなかろうか。
暴力の応酬。命の奪い合い。人間の暴力性の、最も露骨に垣間見えてしまう。それが僕を恐怖させるのだ。
それに対し、妹の塚島優海は、中毒的なハマりようである。
彼女に犯罪歴はない。だが、いずれそうなってしまうのでは、すなわち簡単に人を死傷させるような人間になってしまうのでは、という危惧が、いつの間にか僕の胸には生じていた。
優海が襖の向こうから出てきたのは、ちょうど僕が自分のウーロン茶をグラスに注いで、リビングに戻った時だった。
「いやー、今日も稼いだ稼いだ!」
少し長めの、真っ黒なツインテール。十五歳という年齢にしては、小柄で華奢な体躯。僕と輪郭は似ているけれど、鋭く細い眼光を放つ顔。眼鏡やコンタクトレンズの類は装着しておらず、よくもまあ視力を維持できるものだと感心する。
何せ、襖の向こうは真っ暗で、灯りといえばテレビ画面くらいのものだからだ。
「あ、兄ちゃん、あたしにもウーロン茶、もらえる?」
「ああ。これでいいか?」
「サンキュ」
優海は僕の手からグラスを受け取り、その場で一気に飲み干してしまった。
「優海、手は大丈夫か?」
「何?」
「手だよ。マメになってるんじゃないか?」
「ああ、ま、勲章みたいなもんだろ」
そう言って、優海は自分の手を開いたり閉じたりした。
先ほどのカチャカチャという音は、優海がFPSをプレイ中、コントローラーのスティックやボタンを素早く倒す時に出る音だ。逆に言えば、優海は音楽も効果音も一切なしで戦っている。それで凄まじい戦績(=賞金)を上げるのだから、いったいどれほどの鍛錬を積んできたのか分かったものではない。
それを思うと、僕は毎回深いため息をついてしまうのだった。
現在、僕と優海は二人で暮らしている。理由は簡単で、両親に見放されたからだ。詳しい経緯は、あまり思い出したくはないのだが。
たまに生活保全委員の人が訪ねてきたりするが、特に異常なしと結論づけて帰っていく。もちろん、ゲームで得た賞金で生活しているなどと、決して健全とは言えまい。だが、法に触れることでもないのだ。FPSがeスポーツの一種としての地位を確立してからは。
「なあ兄ちゃん、この部屋暑くない? クーラーの温度、下げていい?」
「待てよ優海。暑く感じるのは、お前がそんな格好してるからだろう」
「え?」
とぼけてみせる優海。
今の僕たちの服装はといえば、僕は半袖シャツに通気性のいいスラックス姿だが、優海はさらにその上に厚手のパーカーを羽織り、だぶついた長ズボンを穿いている。
理由は簡単。優海は、自分の部屋のクーラーを、最低温度設定にしているからだ。真夏の七月下旬といえど、十八度設定はあり得ないだろう。常識人ならば。
それを指摘すると、優海はこう反論する。
「だって、寒い方が神経が研ぎ澄まされるっていうか、物事に集中しやすくなるじゃん? でも実際に寒いままだと動きが鈍るから、こうやって厚着してるんだよ」
理屈としては自己矛盾もいいところだ。しかし確かに、コンビニなどの冷房地帯に急に跳び込む時に、爽快感があることは否めない。
それに、繰り返しになるが、今の僕たちの生活を支えているのは、他でもない優海なのだ。彼女には従わざるを得まい。
と、僕が白旗を上げかけた、その時だった。
「あ、でも兄ちゃんが風邪ひいて大学を休むことになったら意味ないか。ごめんごめん、今のは却下で」
優海が、ヘビーゲーマーでありながらも聞き分けのいい妹に育ってくれたことに、僕は心から感謝した。誰に、と言うのは難しいが、やはりここは優海本人に、と言うべきだろう。
両親には、とても感謝できない。
これは『感謝しきれない』などという意味ではない。僕と優海は、両親心理的虐待を受けて育ったのだ。両親を憎みこそすれ、感謝などという気持ちは抱かない。会いたいとも思えない。
僕がぼんやりしていると、優海が先にシャワーを浴びていいかと尋ねてきた。素直に許可すると、優海は着替えとバスタオルをまとめてバスルームの扉を開けた。
あんまり身体を冷やすなよ、と注意を促してから、何か食べようかと冷蔵庫を開けた。が、そこは優海の好物で溢れ返っていた。甘党キラーのオンパレードだ。
「抹茶アイスに杏仁豆腐、こっちは……モンブランケーキか」
僕は食物の摂取を諦め、冷蔵庫を閉めた。
文句を言える立場ではないが、今度は優海に伝えておかねばなるまい。ちゃんとしたご飯類も拾ってくるようにと。
拾ってくる、という言い方には語弊があるか。正確には、近所のコンビニから、優海が賞味期限切れの売れ残りを頂戴してくるのだ。
世話を焼いてくれているのは、大学で知り合った僕の同級生で、須々木武人というアルバイト店員。初の授業時に隣席となり、子供の頃見ていたアニメが一緒だったというところで意気投合。それから、自分の生い立ちを話したわけではないのだが、大変な生活を送っている、ということを察してくれたらしく、よく気にかけてくれている。
「あー、サッパリした。あれ? 何してんの、兄ちゃん」
「ん? あ、ああ」
気づいた時、僕は空のグラスを手に、廊下にぼんやりと立ち尽くしていた。
「何? もしかして覗こうとしてた?」
「ぶふっ!?」
僕は吹き出した。何も口に含んでいなかったのは、不幸中の幸いだ。
「そ、そんなわけないだろう!?」
「ふっ、ははは!」
優海は腰を折って笑い出した。僕の肩を勢いよく叩きながら、『そんなことは分かってるよ』と一言。
「冗談に決まってるじゃん!」
「お前の冗談は冗談に聞こえないんだよ!」
「それは兄ちゃんが真面目すぎるからだって! ユーモアがないと、若いうちから髪薄くなるよ? ほら、前髪を上げてみると――」
背伸びをして、僕の頭に触れようとする優海。
「おい、やめろって!」
僕はそれを、虫を払いのけるように手を振って回避する。
そんなじゃれ合いをしていると、生温い空気を破ってサイレンが響き渡ってきた。これは、パトカーだ。
僕たちは思わず背後、幹線道路の走っている方へと目を遣った。
「兄ちゃん、何かしたの?」
「馬鹿を言うな! 勉強してただけだよ」
と、言い終える頃には、サイレンは綺麗なドップラー効果を残して遠のいていくところだった。
「あーあ、行っちゃった」
「パトカーなんか、来られても困るだろう? いいから、さっさと寝るんだ。身体を冷やすなと言ったはずだぞ」
「へいへい」
ああ、このリアクションでは、今日も夜通しFPSにのめり込むんだろうな。
僕は自分の頭をくしゃくしゃと掻き回し、再び勉強机に向かった。カチャカチャというコントローラーの操作音に背中を押されるようにしながら。
※
翌日。
カチャリッ、という聞き慣れた音が耳に入った。
「む」
おっと、どうやら勉強中に眠り込んでしまったようだ。右手を投げ出し、しかしシャープペンシルはしっかり握りしめている。勉強机に左腕を載せ、さらにその上に顔を載せて突っ伏している、という格好。
実際、僕の寝起きはよくない。すこぶる悪い。だが、今響いた音によって意識は覚醒した。ゆっくり目を開き、音のした方へと顔を向ける。
誰かが、パジャマ姿で僕のそばに立っている。しかし、ぼんやりとした視界に広がったのは、眼前に突きつけられた鈍い輝きを放つ何かだった。
「あれ? 兄ちゃん起きてる?」
もう一度、カチャリッという音がする。それに、今の声は優海のものだな。
「ああ、もう朝か」
目を擦るべく、腕を持ち上げたその時、美海が手にしているものが、ぺたり、と額に当てられた。
「何だ、これ?」
僕が手を伸ばすと、美海が『パン!』と一言。そして、
「はい! 兄ちゃんは戦死!」
「おい、それはどういう……うわあっ!」
僕は優海から距離を取ろうとし、回転椅子ごと倒れ込んだ。べったりと尻餅をつく。
「ま、ままま待ってくれ! 僕はまだ死にたくない! 命だけはどうか!」
「いや、これが実銃だったら、兄ちゃんもう死んでるよ?」
「え?」
慌てて額に手を当てる。そこには、痛みはない。出血もない。
「なんだ、エアガンか……。優海、僕がそういう物騒なもの、嫌いなのは知ってるだろう?」
「エアガンじゃないよ!」
すると優海は弾倉を取り出し、もう一度叩き込んで、くるくると手元で弄びながら腰元のホルスターに入れた。
「こいつは、さっき届いた新型コントローラー。ケーブルが要らないんだ。これで画面に狙いをつけると、本物の拳銃みたいに扱える。弾倉の入れ替えも、ちゃんと再現されるんだよ! 凄くない?」
「あ、ああ、そりゃあ、凄いな」
意気揚々と、優海は解説を始めた。
「こいつはイタリア製オートマチック、ベレッタ92っていうんだ。世界の警察でも使われてる優れモノ。装弾数は十五発で、口径は九ミリ。兄ちゃんも持ってみる?」
「いや、僕は遠慮するよ」
「まったく兄ちゃんはビビリだなあ! ただのコントローラーだって言ってるのに!」
いやしかし、普通のコントローラーに比べれば、遥かに恐怖心をかき立てられる代物であるわけで。見ているだけでも寒気がする。
そんな僕の気などお構いなしに、優実は勉強机に両手をついて、『そうそう』と話題を変えた。
「兄ちゃん、今日は大学、一限からあるんじゃないの? 今から間に合う?」
「げっ、そんな時間か!」
流石にこれには慌ててしまった。拳銃(の形をしたコントローラー)を突きつけられたのと同じくらいに。
僕は慌てて今日使う教材やノートを鞄に突っ込んだ。
「じゃあ、行ってきます!」
「あーい」
閉まっていくドアの向こうに見えた優海は、人の目を気にすることもなく大きな欠伸をしていた。これから就寝するのだろう。
何故夜起きて、朝に寝つくのか。理由は単純で、夜間の方が、この手のゲームのプレイヤーの数は増えるからだ。相手となるプレイヤーが増えれば増えるほど、白熱した勝負ができるし、賞金額も大きくなる。
ネットの波の上で、殺人を続ける優海。僕は一瞬、恐ろしい感覚に囚われた。そのうち優海は、現実世界でもこの手の犯罪に加担するようになるのではないかと。
「まさか、な」
大学の構内に入りながら、小さく呟いた。
その日は、大学構内の図書館でみっちり勉強した。夕日はとっくに沈み切り、時刻を見ると夜の九時を回っていた。
昼間に比べれば、暑さはまだマシといったところ。だが、暑いことに変わりはないし、ここ最近の治安が悪いことも気にかかる。だが、本気で危機感を覚えたのは、僕がその『治安の悪さ』に遭遇してからのことだった。
「えっと、分力が斜面に対して垂直に働くから、斜面の下方向に働くのは……」
僕の注意力は、今朝と比べてもがっくり落ちていた。家を出て大学に向かうまでは、帰宅時に避けるべき道筋について考えていたはずだったのに。
しかし今日は、高等物理の講義がやたらと難しく、僕の警戒心は綺麗サッパリ吹っ飛んでいたのだ。
夜道を歩きながら、ペン回しをする要領で手先を動かし、黙々と進む。その時、ふっと穏やかなライトが僕を照らした。チリン、と軽い自転車のベルの音。
何かあったのだろうか。僕がぼんやりと顔を上げた時、既に眼前には自転車が、というより、運転手の握ったものが迫ってきていた。そして、それは違うことなく僕の鼻先を直撃した。
「ぶっ!?」
宙を見上げるように、後ろ向きに倒れ込む。そして背中をしたたかに地面に打ちつける。なんだ? 何が起こった?
殴打されたと思しき鼻先に手を遣ると、べったりと赤い液体が掌に貼りついてきた。これって、血か? 血なのか? 僕は殴られ、鼻からこれほどの出血をしてしまったのか?
恐怖で麻痺した僕の感覚の中で、ようやく鈍い痛みと鉄臭さが感知された。今度はしっかりと、両手で鼻を包み込むように防御態勢を取る。
「う、うわあ!」
本来ならば、ここでこそ『殺さないでくれ!』と喚くべきだろう。だが、僕は悲鳴を上げたきり、言葉を発することができないでいた。
街灯の下、シルエットになって、黒い影が自転車に乗っている。僕から十メートルほど離れたところで停止し、こちらの様子を窺っているようだ。手には凶器であろう鉄パイプが握られている。
相手は鉄パイプを自分の肩の高さに持ち上げ、トントンと首筋を叩いている。いかにも余裕綽々といった様子だ。
そんな彼(彼女?)を見て、僕はようやく理解した。最近、近所で起きている連続強盗の件に、自分が巻き込まれてしまったのだと。無論、被害者として。
相手を見ていると、なにやら手でサインを送っている。僕にではない。誰か、僕の背後の人物に。振り返ると、もう一台の自転車が停まっていた。こちらの人物は、短いカッターナイフを手にしている。
そのまま自転車を降り、ご丁寧にスタンドを立ててから、ゆっくりこちらに向かってきた。
「騒ぐな。命までは盗らない」
意外なことに、それは女性の声だった。フルフェイスのヘルメットを被っているので、顔かたちまでは分からないが。
その女性は片膝をつき、しっかりと俺の顔を正面から見つめてきた。僕の心臓が高鳴る。異性にこんなに顔を近づけられたから、などという理由ではもちろんない。このままカッターナイフの餌食になるのではないかという恐怖感からだ。
カッターで斬りつけられたら、今の鼻よりも酷い怪我を負わされるに違いない。
上手く発音できないものの、僕はなんとか『助けてほしい』という旨の言葉を喚き立てた。
すると、相手は軽く身を引いた。まるで、僕が何者なのかを知ったせいで、躊躇いを覚えたかのように。
女性はもう一人の犯人(僕を殴った奴だ)に向かい、先ほどと似たような手信号を送った。するともう一人は、ドスの利いた声で『いいのか?』とだけ問いかけてくる。こいつは男だったのか。
女性はそれに頷いてみせ、すぐに自転車を反転させて、颯爽と走り去っていった。男もまた、急に僕に興味をなくした様子で、鉄パイプを背中に差しながら女性の後を追っていった。
どうやら、僕は助かったらしい。しかし、殴られて仰向けになったまま、動ける気力はない。僕が暴力からの解放と安堵感に浸かっている間に、再び、頭の方から自転車の音がした。
「ぐわっ!?」
奴らが戻ってきたのか。そう思った僕は立ち上がり、一気に駆け出そうとして転倒、辛うじて手をついた。
「ま、待ちたまえ、君!」
「だ、だから命だけは!」
「いったいどうしたんだ? 強盗被害に遭ったのか?」
「え?」
よく見れば、それは巡回中の警官だった。
「鼻血が出てるな。まずはこれで出血を押さえてくれ」
そう言ってハンカチを寄越しながら、若い警官は自転車にまたがったまま無線機を取り出した。
「警戒本部、警戒本部。こちら巡回車03、連続強盗事件の被害者と思しき青年を発見。軽傷を負っている模様」
その言葉を繰り返すと、警官は僕に向き直った。
「何を盗まれた? 財布とか定期入れとか」
「あ、何も盗られませんでした」
「え?」
今度は警官の方が呆気に取られた模様だ。
「すまない、今交番まで来てもらえるかい?」
「は、はあ」
なんとも言えない空気の元、近づいてくるパトカーのサイレンを、僕はぼんやりと聞いていた。
しかし、さっきの女性の声、どこかで聞いた覚えがあるような……?
それを考え込む前に、僕はパトカーの後部座席に座らされることとなった。
※
交番は、僕の住んでいる集合住宅街から幹線道路を挟んで反対側にある。
僕を待っていたのは、丸眼鏡に腹の出た、人当たりのよさそうな中年の警官だ。僕に声をかけてくれた若い警官は、今は筆記係を務めている。
「つまり、犯人は自転車を使って移動して、凶器として鉄パイプを使ったわけだね?」
「はい」
「それで、男女二人組、と」
太った警官が、僕からの情報をざっと確認する。
「頭痛はするかい? 脳に打撃が及んでいたら一大事なんだが」
「あっ、いえ。大丈夫です。鼻血も止まりましたし、元々そんなに強く殴られたわけでもないみたいですから」
「そうか」
そして、太った警官は立ち上がり、僕に捜査協力の礼を述べた。それから若い警官に、僕を自宅前まで送るように指示した。
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