シャドウ・ハーフ
今村広樹
本編
「よう、ようやく起きたか?」
「ああ、寝覚めに聞きたくもない声が聞こえると言うことは、起きたってことだね」
「そんな、ツンケンしなくても、いいじゃねえか、俺とお前の仲だし」
「だからだよ、なんでよりによって、あんたと仲良くしなきゃいけないんだか」
「そりゃ、そうだ。でもまあ『一心同体』ってやつなんだから、仕方ないだろ?」
「だから、いやなんだよ」
「いやもいやも、すきの内ってね」
「それはない」
「まあ、それはともかく」
「あ、ごまかした」
「目を開けろ。まずはそれからだ」
少女が、暴漢に追われている。
「いやあ!!」
「へへへ、待てよ」
行き止まりに追い詰められて、怯えた表情を浮かべる少女に、暴漢は
と、その時、男の背後に黒い影がいきなりあらわれた。
男が気づいた時には、彼は黒い影に取り込まれていた。
そして、影は何事が起こったのか理解出来ない少女を残して、そのまま消えた。
その
ところが……
ウワァーンとラボにサイレンの音が響く。
「どうしたのかね?」
「博士、大変です!
例の研究材料が脱走したようです!」
「なんだって!
アレが外に出たら大変なことになるぞ!
捜すんだ!」
「了解!」
という訳で、ラボの職員によって方々を捜すのだが、結局発見されなかった。何故ならば……。
結局少女は、その出来事を誰にも話すことはなかった。言ったところで、信じてもらえないだろうから。
「ちょっと、話聞いてる?」
「ああ、うん、泣ける映画を彼氏と観に行って、映画も彼氏もつまんなくて、そのまま直帰したって話だっけ」
「……、あんだけぼけっとしてたのに、キチンと話聞いてるの、才能だと思うわ」
と、彼女と友人が話していると、いきなりプリントの束がはさりと降ってきた。
「ちょっと、なによ」
「ご、ごめんなさい」
と、少女はふとその謝る少年に既視感を覚える。
「あなた、どこかで会わなかったかしら?」
「さあ、どこかで会ったらのかも……」
と、少年は穏やかな、しかし意味ありげな笑みを浮かべながら言った。
シャドウ・ハーフ 今村広樹 @yono
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