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「気になること……?」
「立ち話もなんだから、座って座って」
真紅郎さんはそう言って窓際のテーブルへ僕を促した。僕が素直に席に座ると、真紅郎さんも向かいの席に腰掛けた。
「気になることっていうのはね……快人君の『善意会の活動』に協力して欲しいって崇人さんが頼んできたことなんだけど……善意会の活動って、何かな?」
にこにことした表情で、真紅郎さんは質問する。迷惑というよりむしろ楽しそうだ。
「はあ……父は何も知らせていないんですね」
「いやいや、一応は説明をしてくれたよ。二分くらい。ほら……あの人、忙しいでしょ?先月に電話がかかってきて、快人君を預かってほしいってことと、荷物を前日に送るからよろしくって。あと、快人君がこういう事情だから、快人君が携わる活動に協力して欲しいって……それだけ言って切っちゃったんだよね」
なんと適当な……。
僕は仕方なく真紅郎さんに話し始めた。その間客は誰ひとり来なかった。
一通り、僕が知り得る限りの善意会の話、怪盗のこと、僕がそんなものにならなくちゃいけなかった経緯をし終えて一息吐いたとき、真紅郎さんはこう言った。
「だいたいわかったよ。ありがとう。でも、快人君。君もあまり善意会のことはわかっていないんじゃないかな?」
僕は素直に頷いた。
「もう一度、崇人さんに詳しく聞いたほうがいいと思うよ」
「僕もそう思います」
そう僕が言うと、真紅郎さんはよしと頷いて、
「じゃあ、快人君の怪盗の活動に協力するよ。興味もわいたし」
と言い、笑った。
「お願いします」
僕もつられて笑いながら言った。
「それでは、快人君が来たお祝いってことで、コーヒーを振る舞うよ。地元でしか知られてない小さな店だけど、コーヒーと自作のケーキには自信があるんだ」
そう言って真紅郎さんが淹れてくれたコーヒーは確かに、本当においしかった。
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