第5話 タンポポが咲く中で

 目を覚ますと、周囲にタンポポの花が咲き誇っていた。

 おかしい、また無意識に咲かせてしまったのか?


「わぁ、すごい咲いてる!」


 近づいてくる少女の声。どこか聞き覚えがあり、胸が苦しくなる。まさか、まさか。


 姿を見せた、黒髪に花柄ワンピースの少女。高校生になりたてだったあの子とおなじぐらいの身長。


「あ、あぁ………」


 血色のいい肌、頬はまるで薔薇のよう。風になびく黒髪に咲いたような笑顔。


「………しゅんか?」


 思わず漏れたあの子の名前に、ワタシの存在に気付いた少女は笑う。


「私、はるかって言うの。貴方は?」


 はるか?あぁ、違う人だ。けれど、そうだ。きっとこの子は。


「ワタシはこの花園の管理者。名前は公英と言います」


 ワタシが名乗ると、少女はワタシの手を取って言った。


「逢えたね、神様」


 タンポポ揺れ、花園は祝福する。





 そうだね、春華。


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タンポポがきっかけでした。 雨中紫陽花 @nazonomoti1510

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