第9話 友の優しさ

嬢はおっさんの肩をトントンと優しくさすった。それはおっさんが現実世界に戻る合図だった。涙で腫れた眼をこすりながら支払を済ませようとすると、ボーイから『既に延長分も含めてお連れ様よりお支払いいただいております』という意外な返事が返ってきた。『え、じゃあ、あいつはどうしたの?』と聞くと、明日、仕事が早いので先に帰ってると伝えてくれとの事。


狐につままれた気持ちで店をあとにし、慌てて友人に電話をしてみた。すると、友人からは電話の代わりにメールが届いた。『絶対合格しろしろよ!!そして、今日流した涙、嬉し涙に変えろよ。オレも今、仕事で色々大変だけど、お前が感情をむき出しに頑張ってるとこ見てまだまだ頑張ろーと思えたよ』


その言葉に再び涙腺が崩壊し泣き喚くドラゴンボールおっさん。キャッチのお兄さんも道行くリーマンもカップルもドン引き。どんなに周りから変な目で見られても、止めどなく涙が溢れてくる。おっさんの大粒の涙が歌舞伎町のアスファルトにボタボタと流れ落ちた。

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