第10話 友の傷と優しさ
歌舞伎町の雑踏で人目を憚らず号泣するおっさん、いや、感情が爆発して勝手に涙が溢れでできて止めようにも止められない。しかし、涙の量に反比例して冷静さを取り戻していく自分の脳。冷静さを取り戻した脳の思考は、今日の宴をご馳走してくれた友人の境遇に到達した。
有名私大を卒業して誰もが羨む有名企業に就職し、エリートサラリーマンの風格を欲しいままに肩で風を切って歩いていた旧友。しかし、見てくれとは裏腹に悩み苦しみもがきギズだらけだった。完璧な経歴、醸し出される自信、風格という鉄壁の鎧の隙間から流れ出る大量の血液!!奴は絶対無敵のスーパーサイヤ人などではなく、致命傷を負いながら敵将首を狙うただの負傷兵だった。殺し合いを継続中の現代の戦士!!彼と普通の兵士を区分しているのは、どんな致命傷を負おうとも、敵将首を必ず取るという気概と必ず上に行くという向上心だった。そんな戦闘中でも彼には不甲斐無い自分を励まし夜代をご馳ってくれるだけの優しさを心に残していた。
完全なる敗北だった。男としての完全なる敗北。清々しいくらいの敗北。そう観念した時、歌舞伎町のアスファルトに垂れ流していて大粒の涙は馬鹿笑いにかわっていた。大粒の涙を流した後の男の高笑い。周りの人はドン引きするも清々しい風がドラゴンボールおっさんの心に吹いた。
続く
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