第3話 お姫様

 その屋敷は町の外れにあった。

「ここがディザイアの家?」

「ええ、そうです。私しか住んでいないのですがね」

「えっ、こんな広いお屋敷に1人で住んでるの!? 寂しかったりしないの?」

「⋯⋯もう、 1人には慣れましたから」

 ディザイアは悲しそうに呟いた。

「さあ、中に入りましょう」

 ディザイアがそう言うと、もんきしむような音と共に開いた。

 ディザイアが開けたというより、門扉が意思を持って開いたように見えた。

 まるで私たちを招き入れるかのようだった。


「わぁ⋯⋯」

 屋敷は、全てがゴシック調の内装で、まるで中世ヨーロッパのお城のようだった。

 自分がお姫様になったような気がする。

「こんな凄いお屋敷があったのに、何で気づかなかったんだろ?」

 私はディザイアに質問した。

が屋敷に招いた人間にしか見えないからですよ。エマは私に招かれたからこの屋敷を見つけたのです」

「へー、なんか私、凄い秘密を知っちゃったかも!」

「そう、これは『秘密』です。誰にも言ってはいけません」

「分かった!」

「あぁ、話しすぎてしまいましたね。もう夜も更けていますから、部屋に案内します。この部屋でいいですか?」

 言いつつ、ディザイアはドアを開ける。

 そこは、本当にお姫様のような部屋だった。

「素敵! 私、こんな部屋夢だったの!!」

 私は天蓋付きのベッドに飛び込んだ。

 ベッドがぼふん、と音を立てた。

「気に入っていただけたようで何よりです」

 ディザイアは微笑んだ。

「ありがと、ディザイア。もう眠い⋯⋯。おやすみ⋯⋯」

 私はベッドに入り、そのまま眠りについた。

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夕暮れエレジー 卯月みお @mio2041

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