第2話 あなたさえ良ければ

「私の親は、ろくでなしなんだ」

「ろくでなし⋯⋯とは?」

「私に暴力こそふるわないけど、心をズタズタに傷つけたって事。酷かったよ、あいつら。『お前なんか産まなきゃよかった』とか『死ね』とか言われたよ。ディザイア、本当にありがとう」

私は頭を下げた。

「まぁ、僕も久しぶりに美味しい血にありつけましたし、ウィンウィンという事で。えーと、名前まだ聞いてませんでしたね」

「エマ。エマ・ハート」

「エマですね。つかぬ事を聞きますが、エマのは何ですか?」

「AB型だけど⋯⋯?」

なぜそんな事を聞くのか、分からない。だが私はその言葉を飲み込んで答えた。

「エマ」

「何?」

「⋯⋯あなたさえ良ければ、僕と一緒に来てくれませんか?」

「いいの!? 私、ディザイアとだったらどこへだって行く!」

私は思わず答えてしまった。

「ええ。あなたが望むなら、どこへでもお連れします」

「やった! ねぇ、早く行こう!」

私は思わず階段を駆け降り、下から手招きをした。

「はいはい、そんなに急がなくたっていいですよ」

「だって、待ち切れないんだもん!」

言いつつ、私は玄関のドアを開け放った。

楽しみだ。これからどこまでも行けると考えるだけで、胸が躍る。

今日は何と嬉しい夜だろうか。

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