30話

「ここは…」


目が覚めると夕焼けに染まった天井だった。

……何で私、ベットで寝てるんだろう。

私確か魔術の授業でアンナと話してて…それで…


そこまで思い出してズキッと頭に痛みが走る。

そうだ私…誰かの火属性魔法で出現した火の玉に当たりかけて…

生きてるということは直撃はしていなかったのだろうけれど……じゃあここはどこなんだろう……


しばらくここがどこだかあたりを目渡せば、直ぐに第五保健室ということに気が付く。


「ッリアン…起きたの…?」


「アレン君おはようございます……わっ!?」


奥の調合室から出てきたのはアレン君で、挨拶をした瞬間に目の前が真っ暗になった。

びっくりしたのと、抱き着かれた気恥ずかしさから、離れようとしたがすごい力で抱きしめられて離れられなかった。


「ごめんね…リアン…」


「……?どうされました?アレン君」


あまりに弱々しい声に心配になり声をかけるとかすかに私を抱きしめているアレン君の腕が震えていたことに気が付いた。


「ごめんねリアン…リアンのこと助けれなくて…」


「……?」


何のことか全くわからなくてアレン君の腕の中で頭にはてなを浮かべまくる。

するとしばらくすると、離れてくれた。真正面から見たアレン君の瞳は不安と恐怖に震えていて、顔色もいいとは言えなかった。私なんかよりもアレン君の方が重症なのでは…?


「怪我は大丈夫?一応直ぐに治癒をかけたけど…」


「大丈夫ですわ…それよりもアレン君の方が心配になりますわ……体も震えていますし、顔色も悪いですもの…」


「僕は大丈夫…そんなことよりも、リアンだよ…」


「そんなことって……」


アレン君の言葉に引っ掛かりを感じながらも右頬に添えられた手に心地よさからすり寄れば少し優しい表情に変わった。

しかしすぐに顔をこわばらせて、添えていた左手をゆっくりと髪の方へと移動した。


「ごめんね…リアンのきれいな髪が…」


「え…?……あ。」


アレン君の言葉につられたように自分で髪を触ってみると、ちりちりとした他よりも短い髪が手に触れた。

火の玉が目の前に来てたし少しもえちゃったのかな…

そう思うと少し残念に思えてきた。

お父様やお兄様たちに褒められた数少ない自慢の髪だったのに…

お兄様これ見たらきっと驚くだろうな……


短くなった髪は肩に触れるぐらいまで短くなっていて、腰ほどまでに伸ばしていた髪からは浮いていた。


「これは早急に整えないといけないですわね…またバルド兄様たちが騒ぎますわね…はぁ…」


「……切っちゃうの?…まぁリアンはどんな髪型でも似合うと思うけど…」


「っありがとうございますわ!!……でも、短くしてしまうのはちょっと抵抗があるので、どうにか目立たないようにできないか頼んでみますわ」


「……ん」


アレン君の上目使いと、急に言われた天然発言に変な声が出かけたが、何とか直前で飲み込んで令嬢の自分を保つ。

そんなこと言われたらショートにもしてみたくなるけれど、いかんせん髪をバッサリ切るとお兄様がうるさい。

この世界にも失恋したら髪を切るという風習はあるらしく、小さいころに髪を少し短めに切っただけでアレン君に飛び火しかけたのだ。


そのあとしっかりとアレン君は褒めてくれたのだが、やっぱり迷惑はかけたくない。

それから少しの間、またくっついてきたアレン君を受け入れているとコンコンと控えめなノック音が聞こえてきた。


「ストレンジウェイズ様、入ってもよろしいでしょうか?」


「……勝手にすれば?」


「失礼いたします。」


扉を開けて入ってきたのは、ラルドリアちゃんだった。

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