第10話 キラキラネーム~☆

「名前?」

 お星さまにお願い事をした通行人の女の子Bは、個性のあるキャラクターになれました。

「名前を決めないといけないな。」

 星の守り人のフェスは言った。

「それは、そうだろ? 個性あるキャラクターの名前が通行人の女の子Bでは話にならん。」

 フェスは通行人の女の子Bにキャラクター名を決めるように言った。

「名前が持てる~♪」

 通行人の女の子Bは笑顔で喜んだ。全てのアニメやゲームの名前の無い全てのキャラクターの憧れ「自分の名前を持ってみたい!」考えること自体がタブーである。

「ああ、幸せ~♪」

 自分の名前がもてる。こんなにうれしいことはない。通行人の女の子Bの長年の夢が叶うのである。

「名前は決まったか?」

 なかなか決めないので、フェスはイライラしてきた。

「モジモジ。」

 通行人の女の子Bは名前は決まっているみたいだが、自分の名前を言うのが恥ずかしくてモジモジしている。

「決めないなら、こちらで決めるぞ? おまえの名前は、ガジラだ。」

 通行人の女の子Bの頭に「ガオ~!」口から火を吹き、ビルを破壊している姿が思い描かれる。

「イヤです!」

 通行人の女の子Bは即座に拒否する。そして少し照れながら言う。

「エルメス・・・、エルメスがいいです。」

 通行人の女の子Bは自分の名前を初めて、自分の口から自分の声で言った。

「エルメス。」

 通行人の女の子Bは自分の名前を決めた。

「どうして、その名前がいいんだ?」

 フェスは聞いた。

「私が通行人の女の子Bとして町に立つている立ち位置の前に、オシャレなお店があるんです。店の外装は高級でゴージャスな感じで、店内にはピカピカっと光輝くバッグに、財布。お客様はファンタジー世界の、あのダイヤモンド姫を始め、各城のお姫様ばかり。ああ~♪ 一度でいいから、エルメスのスカーフを巻いてみたかった。きっと、あのスカーフさえ巻ければ、通行人の「エルメススカーフを巻いた女の子B」として、楽しく立っていられるはず!」

 通行人の女の子Bは、楽しく、優雅に、コミカルに、憧れの眼差しで踊りながら語り、最後は力強く締めた。

「・・・そんなことばかり、考えていたのか?」

 フェスは少し退き気味に質問する。

「はい!」

 通行人の女の子Bは真顔で即答する。

「やれやれ、その物欲の強さが銀河まで届いたということか?」

 フェスは負けたよ、という顔をする。

「分かった。」

 通行人の女の子Bは笑顔満開で、ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ。

「やった~♪ 今日から、私はエルメスだ! もう通行人の女の子Bじゃないんだ!」

 名も無い通行人の女の子Bの夢が叶った瞬間に思えたが・・・。

「だが、その名前は、認められない。」

 フェスが真顔で言った。

「え!?」

 通行人の女の子Bはフェスが何を言っているのか理解できなかった。時間が止まったかのように動けず固まってしまった。

「おまえの名前は、エロメスだ!」

 通行人の女の子Bは、自分の名前をエルメスと決めたのに、

「だが、その名前は、認められない。」

 星の守り人のフェスに認めてもらえなかった。

「どうしてですか?」

 通行人の女の子Bはフェスに必死に食って掛かる。フェスは理由を語り始める。

「他の作品でも、エルメスやヒルメスなどの使用実績はあるので権利問題は問題ないだろうから、私も、どうのこうの言うつもりはない。無名素人の作品に、苦情を言うような大人げないことはしないだろう。」

 フェスは権利問題ではないという。

「なら、どうして?」

  通行人の女の子Bは問う。

「おまえの夢は「個性のある」キャラクターになることだったはずだ! エルメスというキャラクター名には個性もなければ、オリジナリティーも無い、同じ名前のキャラクターが多すぎる。どこにでもいるようなキャラクターはすぐに消えるぞ!」

 ドンガラガッシャン!  通行人の女の子Bはフェスの厳しい言葉に雷に打たれた。

「個性が無い・・・オリジナリティーも無い・・・すぐに消える・・・。せっかくキャラクターに昇格したのに・・・。」

 通行人の女の子Bはショックを受けて地面に両手両膝をついている。

「私がおまえの意向をできるだけ取り入れた素敵な名前を考えてやろう。」

「ガジラは嫌ですよ。」

  通行人の女の子Bは前歴のあるフェスを牽制する。

「エルメス・・・エロ・・・エロメス! そうだ! エロメスにしよう! お前の名前は、エロメスだ! これならヒットは確実だ! ハハハハハッ!」

 フェスは自画自賛で笑顔で自分の才能に酔っていた。

「イヤです。」

 通行人の女の子Bはエロメスという名前になった。エロメスの声はフェスには届かなかった。

 つづく。

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