第4話 「コンビニでの出会い」
コンビニって本当に便利だ
まっすぐ家に帰りたくない時
待ち合わせの時間潰し
家に居たくない時
そして
特に買いたい物なんてなくても
少し、暇を感じると
自然と私の足はコンビニへ歩きだす
「いらっしゃいませ」
立ち読みする、
サラリーマンや男子学生の
後ろを通って
飲み物が並んだ棚を眺めた
Tシャツに短パン姿の女の子が
私を同じように見つめてくる
その子の前髪は、ちょんまげヘアーで
少し、、
可愛いかった
「ヤバ!」
私はすぐに縛っていたゴムを外し
左の手首に通した
癖のついた前髪をなおしながら
自然な顔を作って
お菓子売り場の棚へ歩いた
「あっ!先輩だ!
お疲れさまです」
「あれ?!お疲れさま
何で?その制服?」
「私、夏休みの間だけ
この店でバイトしてるんです
先輩の家、近いんですか?」
「そうだったの?
うん!近いよ、、
この格好見たらわかるでしょ 笑」
「ですね!笑
夏休み中、わりと入ってるんで
気軽に声掛けてください
それでは!」
そう言って
従業員入り口へ入って行った
近所のコンビニで誰かと会う事は
夏休みともなれば
よくある事だけど
まさか、
知り合いが働いてるなんて
想像してなかった
それに、1人で居る時
自分のテンションが
こんなにも低いんだと感じながら。
何となく、
新商品と書かれたスナック菓子へ
手をのばした
「あっ!」
「あっ!すみません」
「あれ?平野君?」
「おぉ!」
「あっ!これ、いいよ」
「え?」
「俺、違うのにするから」
「あ、ありがと」
ガサッ
ガサッ
「あっ!」
私は平野君に譲ってもらったお菓子と
平野君の手から別のお菓子を取って
レジへ向かった
「ありがとうございました」
「おいっ!お金」
「いいから、いいから
それより、ちょっと歩こうよ?」
何でそんな事、言ったんだろ。
ただ、時間を持て余してたのかな
いや、
1人でボーッと帰るのが嫌だったのかも
「いいけど、ちょっと」
そう言って平野君は
私の肩を軽く引き寄せた
気づくと
私の左足側に続いていた白線が
見えなくなった
ただ、隣を歩くだけで
会話なんて何もなかった
もしかしたら
平野君は何か話そうと
考えてくれてたかもしれないけど
私は何にも考えてなかった
あ〜あ、柚子じゃないと
どんな話しをしたら良いか
わかんないなぁ〜
多分、平野君も、きっと
気づいたら
公園のブランコが見えてきた
「桃!」
「え?!」
私は少し不機嫌に返事をした
「ごめん、柚子がそう呼んでるの
学校で見かけた事はあったけど
名字、知らなくてさ、つい」
「あー!別に!
いいよ!桃で
じゃあ、私も、
さすがに呼び捨ては出来ないから
直也君って呼んでいい?」
「いいよ!何でも」
それをきっかけに
2人で公園のベンチに座って話し出した
「あっ!これ美味しい!」
「マジで?」
「食べてみて!」
「いいの?」
「直也君も
食べたいと思ってたんでしょ?」
「じゃあ、ありがと。
あっ!うまっ!」
「ふふっ でしょ!」
彼女が居ても僕は思わず
桃の笑顔にドキッとした
見かけた事はあったし
柚子の親友の1人だとも知ってた
だけど、ちゃんと話した事もなくて
派手な子って言う印象しか、、
なかった
だから、正直
一緒に帰るのが気まずくて
でも、
柚子の親友を大事にしたくて
会話のきっかけをずっと
頭の中で探していた
そんな時
自分の家の近くにある公園が
目に入り
この場を離れる為に
僕は彼女の名前を口にした
でも、
人間関係とは面白いもので
ひょんな事をきっかけに
状況や関係性は好転する
僕らは少しずつだったけど
お互いの話しをした
そして、派手な子という
1つしかなかった
桃の印象はどんどんと変わっていった
カラオケにたむろしてるようで
実は新チームのキャプテンを
任される程
部活を頑張っていたり
こんな僕に自分のお菓子を
わけてくれたり
見た目と違って
子供っぽく無邪気に笑う事も
初めて知った
こんな笑顔を桃の彼氏は
いつも見てるんだなぁ
あれ?
じゃあ、俺と今一緒に居るのって
まずくないか?
うん?
彼女が居る俺が
こんな事してて良いのか?
「ねぇ?何か急に
キョロキョロしてどうしたの?」
「いや別に!
あっ!俺とこんな事してていいの?
彼氏とか」
「彼氏?」
「え?」
桃の顔に不機嫌さが満ちた
「それ!禁句なんだけど?」
「あっ、ゴメン」
「なんてね!いいよ、
周りにも彼氏彼氏って
良く言ってるんだけど
実は探す気、あんまりなくてさ
ほしいのは、ほしいんだけどね」
桃は公園に転がる
子供用のボールを見つけ
おもむろにリフティングを始めた
「それって、好きな人がいる」
バシッ
気づけば鼻の辺りから
鼻血が流れていた
桃がリフティングしていたボールが
僕の足元に転がっている
再び、桃はリフティングを始めた
「上手くいくといいね」
「な〜に?彼女持ちの余裕?
嫌味に聞こえるけど?」
「いやいや!そんなんじゃなくて
俺はただ、柚子の」
バシッ
「また、、、何で、、」
もう片方からも鼻血が垂れた
僕は倒れこみながら
桃の顔を見た
すると、僕から少し離れて
公園の外に背中を向け
目をつぶって
どこか落ち着かない様子だった
「桃、」
「うるさい!黙って」
公園の外を見たら
誰かが歩いていた
男?高校生か?
桃のボールを受けて直ぐだったから
景色がぼやけて
よくは、わからなかった
ただ、直感的にわかったのは
その男が
桃の好きな人だという事だった
その男が見えなくなった時
「ハイ、」
「あっありがと」
桃は自分のハンカチを
公園の水道で濡らし渡してくれた
「ゴメンね」
「あっ!大丈夫
俺、運動苦手だから
遊んでても小さい時から
よく、避けれずに
ボールにぶつかってたんだよ」
「そうなんだ。」
「小学生の時もさ
サッカー出来ないのに
周りにつられて
グラウンドに出て
ボールに当たらない日は
俺だけ、ただの持久走だった
でも、何でか
いつも柚子は他の子と一緒に
ベンチから見てたんだよ
あいつ、変わりモンだよね」
「その気持ち…
今なら何か、わかるな」
「え?」
桃の表情を見た時、
誰かの顔を浮かべてるのが
はっきりとわかった
「桃、あのさ」
「あっ、柚子から電話だ!
ゴメン!私、先に帰るね
付き合ってくれてありがと!
またね!
もしもし?柚子
うんうん、今?大丈夫だよ〜」
桃は柚子と電話しながら
足早に公園を出て行った
冷た!
あっ!桃のハンカチ…
今度会ったら返せばいいか
俺も帰ろう
それにしても誰だったんだろ?
あの男。
制服ぽかったけど。
桃みたいな子が
あんなに恥ずかしがる程の人って事は
かなりのイケメンだな
なんて考えながら
家まで辿りつくとこだった
「そうそう!でさ」
聞き覚えのある声に反応して
上を見上げると
柚子が二階の窓から顔を出して
桃と電話で話していた
柚子は僕に気づき、
手を振った
僕も手を振ろうと
腕を上げた時
再び、鼻血が流れた
柚子は驚きながら
でも、しっかりと
僕を見て吹き出した
そのまま、
口元を手で押さえて窓を閉めた
っち、あの野郎。。
バンッ
柚子の家の玄関が開いた
うん?
「あっ!いやいや
私も水着買いに行くつもりで」
バタンッ
柚子は電話で話しながら
わざわざ、僕にハンカチを渡して
家の中に戻っていった
あいつ。。
僕は少し笑った
あれ?
水着って言ってなかったか?
プールにでも行くのかな?
……。
俺も誘ってみるか。
僕は彼女を
プールへ誘うメールを打ちながら
家へと歩き出した
「うんうん!
じゃあ、その日に3人で!
またね」
少し熱くなった携帯を
テーブルに置いて
ベッドに座った
よかった!
何とか桃の予定も合って
にしても、直也
何で鼻血なんか。
直也の姿を思いだすと
少し笑いが溢れた
すると、エアコンの風に
テーブル上にあった
数枚のメモが舞い上がった
拾ったメモを確認していると
あっ!このメモ
西川君の。
本当に家の番号って事はないよね?
メールアドレスも書いてるし
私は何となく
書いてあるアドレスにメールを送った
こんばんは🌙
森崎です🎵✨
こないだは
塾の時間があるのに
話し込んじゃってゴメンね
ちゃんと間に合ったかな?
聞きにくいんだけど
こないだ貰ったメモに
書いてるのって
家の番号かな?
だったら、別に良いんだけど
もし、
間違って伝えてる様だったら
って思って連絡しました✨
でも、
西川君は勉強で忙しいから
メールだけでも大丈夫です💖
ではでは、おやすみなさい💤
携帯の充電が切れかかっていた
あれ!?
電池切れちゃう
充電器に繋いで電源を切った
さ〜てと、お風呂に入ってこよ
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