異世界がうんたらかんたらで、転生がどーたらこーたら

八萩教徒

はじまり



幾らなんでも流行りすぎだろう。


はっきり言って。



私は、いわゆる「なろう系異世界転生小説」に対して、毛ほども食指が伸びない。


興味がない。



べつに批判したいわけじゃない。文句があるわけでもない。


あえて言うなら、少し寂しいのだ。



太古の昔から……あえて言うなら今も、幾千万の偉人たちが紡いできた幾千万の物語があり。


それらを飾り立てる幾千万の美しい――そして悍ましい――世界が、舞台があるのだ。



テンプレートなドラ〇エ風というか指〇物語風な世界は、その幾千万のうちの一つに過ぎないのだ。


割合にして1パーセントにも満たない。



そんな、たった1種類の世界が、人々の興味を、感動を、興奮を、一手に集めてしまったが故に、他の多種多様な世界たちを……例えていうなら、寂れさせてしまったのではないか?



どうか、知ってほしい。


想像力の宇宙には、もっともっと沢山の魅力的な世界がある事を知ってほしい。



スライムになるのもいい。だったら、リトルグレイだってかわいいじゃないか。


ダンジョンに出会いを求めるのもいい。けどカウボーイの行く荒野の西部だって素敵だ。


洋館に仕える鬼の姉妹に萌えるのも悪くない。でも幽霊屋敷にだって、きっと絶世の双子美少女が居る。



などと批判めいた事を書いていたら。


気が付いたら。



私は独り、異世界に佇んでいた。



正しくも古風な意味で異世界と呼んだのではない。


極めて現代的な意味で、通俗的な意味で、テンプレ的な意味で。つまり中世ファンタジー的な。


そこは、異世界だった。



とうとう、この日がきたのか。



私は拳を固く握る。



批判したいわけじゃない、と言ったな。


文句があるわけじゃない、とも言ったかな。



アレは嘘だ。



決意する。



「私が、暴いてみせるぞ」



『異世界』が理想郷ではない事を!


『異世界』の醜い部分すべてを!


『異世界』のくだらなさを!



「そして、必ずや撃ち滅ぼす!」



『異世界』に奪われ虐げられた『ほかの世界』たちのために、この世界を。


『異世界』という名の、大魔王を。



「倒してみせる!」

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異世界がうんたらかんたらで、転生がどーたらこーたら 八萩教徒 @kyocha

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