第2話 その1:『 駅』

 GMはゲキド街と書かれた街シートに4×4の合計16枚のストラクチャーカードを並べ、左下隅のカードをめくった。


GM

『このシナリオは、ウィッチクエストアペンド現代版のチュートリアルシナリオをゲキド街を舞台にアレンジしたシナリオです。

 ゲキド街を回ってクエストをこなしつつ、最終的には『魔女のたまり場』を見つけることがシナリオの目的です。街は全部回らなくて良いけど、最低5箇所はクエストをクリアして、クリアした場所の一つを選んでください。

 君たちは、一人前の魔女として認められたばかりの新米魔女だ。魔女の宅急便よろしく新しく住む街を探して、このゲキド街にたどり着いた。出発地点は駅。電車でこの街にやってきて、改札を出たところから始まります』


松風

『ぶはっ……。ゲキド街って、あの『ゲキド街ではよくあること』でおなじみのあのゲキド街?』


『もしかして、ウィッチクエストで炎の匂い染み付いてむせる展開?』


 説明しよう。ゲキド街とは、フリーの3DCGアニメーション作成ツール『MikuMikuDance』向けに公開されているドラマ向けのCG舞台セットである。ニコニコ動画ではこのゲキド街を舞台にしたCGドラマアニメーション作品が多数投稿されている。

 MikuMikuDance自体は初音ミクを筆頭にした人気VOCALOIDキャラのダンスPVを制作するために作られたツールなのでドラマに登場するキャラクターもVOCALOIDやその派生キャラが多い。あと、ゲキド街の作者の作風のせいか、銃器や兵器が大暴れ……もとい大活躍する作品が多い。


GM

『いやいや、さすがにそれはないから。一応銃刀法には違反しない人たちしか出てこないから』

『質問、PCはゲキド街のことはどこまで知ってて良いの?』


GM

『ボカロキャラ達が暮らしている街、くらいは知ってて良いかな。あ、ボカロはアンドロイドとかじゃなくて、歌うのが得意な亜人種、くらいの位置づけね』


松風

『なるほど、ファンタジーの住人って感じなのね』


GM

『納得してもらったところで、誰が出てくるかゲキド街スペシャル人物表を振ってもらおうかな』


『あれ、遭遇表じゃないんだ』


GM

『うん、クエストは実はマップ固定で、駅の場合は「切符をなくして困っている〇〇を助けよう」だね。あとは、誰が困っているのかを決めるために人物表を振って決定』


松風

『おお、スペシャル人物表凄い。ボカロに、ボカロの派生キャラがいっぱい』


GM

『もとのシナリオだとどのマップが出るか自体がランダムなんだけど、ゲキド街作ってどこにどのマップがあるかは固定にしちゃったからね。かわりに人物評でバリエーション出そうかと思って』


『そいじゃ(ころころ)っと……』


GM

『ふむふむ、弱音ハクだね』


『弱音ハクって、ボカロキャラ?』


GM

『いや、ボカロの派生キャラクターだね。ゲキド街に登場する場合、スタイル抜群なのに、性格は暗めで気弱なお姉さん。あと、酒豪で、日本酒が大好きなことが多いね。あと爆発するタイプのやつ動画だとかなりの確率で武術の達人』


松風

『弱かったり強かったりいろいろだよね』


GM

『まあ、ウィッチクエストの世界観ではドンパチすることはないだろうか、気弱なお姉さん、までしか出てこないと思うけど。

 そのハクが、切符をなくして駅員さんとなんか揉めてるようだ』


『じゃあ、ちょっと話を聞いてみよう『あの、どうかしたんですか?』』


GM

『「それが、切符をどこかで落としてしまったらしくて困ってるんです」』


『じゃあ、魔法で切符を見つけてあげればいいわけか。GM、「切符を見つける魔法」って難易度はどれくらい?』


GM

『む、それはちょっと……。あ、こうしよう。舞は切符を見つける魔法を使ったけど、自動改札の中に回収済みの切符がいっぱい見つかった』


『あ……そうか、切符だけじゃわかんないのか』


GM

『あらかじめ釘を刺しておくと、「ハクが落とした切符を探す魔法」なんて情緒のないことしたら難易度にマイナス修正いっぱいつけるからね』


『えー、横暴だ』


GM

『ウィッチクエストの魔法って冗談抜きに何でもできるけど、それじゃあゲームとしても面白くないし、ストーリー的にもつまんないからね。知恵を絞っていろいろ工夫したら、アイデアに応じてボーナスをつけるよ』


松風

『うーん、なんとなくわかるような、納得いかないような……』


GM

『ヒントを出すと、ウィッチクエストの魔法は、「魔法かける対象の魔法を信じる力」「その日の魔女の魔力」がボーナスとして加算されます。魔女の魔力は固定だけど、魔法をかける対象はアイデア次第で変更できるよね』


『なるほど。どんなものが魔法を信じる力が強いの?』


GM

『一番は魔女や魔女猫自身、もしくは魔女の持ち物とかかな。逆に現代科学の産物なんかはボーナスはゼロ。もちろん、切符なんかも基本ゼロだと思って。あ、あとこの街自体の魔法を信じる力も0だよ』


『そっか、じゃあ「切符が飛んでくる魔法」とかは、切符を対象にするから全然ボーナスつかなくて難しくなるんだ』


GM

『そういうこと。さあ、どうする?』


松風

『自分自身に魔法をかけるとボーナス高いんだよね。ということは、舞に切符を探す能力をつける魔法、とか出来たら良いんじゃない?』


GM

『を、松風さえてるね。そういう発想で良いよ。ただ、切符はこの駅で落としたとは限らないから、そのへんもうちょっとひねってみて』


『むう、どこで落としたか思い出す魔法……いや、これだったらハクさんに魔法かけなきゃ行けないか。……あ、良いこと思い付いた! GM、ハクさんに切符をどこにしまっていたのか、聞いてみるよ』


GM

『そうだね、じゃあポケットに入れていたことにしようか』


『じゃあ、私自身に「ポケットとおしゃべりできるようになる魔法」をかけます』


松風

『なるほど、舞冴えてる! ポケットにどこで落としたか聞けば良いんだ』


GM

『を、それは面白いなぁ。よし、基本の難易度5、魔女自身を対象にする場合、ボーナスは12、あとは舞の今日の魔力……あ、しまった、今日が何日か決めてなかった。ウィッチタローを引いて今日が何日か決めよう』


『ほいきた(ぺらり) 「28 旅人」だね。28日の魔力は4。と言うことは、合計で21か』


松風

『D6を二つ振って、かけ算した値が21以下なら成功ってことか。猫ポイントはなくてもほぼ成功しそう』


GM

『あー、そうだ。成功の度合いが大きければ大きいほど、たくさんのことが聞けることにしよう』


『む、じゃあ猫ポイントは借りた方がよさそう。2Dでおねがい』


松風

『わかった(コロコロ) 7が出たよ』


GM

『じゃあ、合計して28だね。舞、サイコロ振って』


『よーし(コロコロ) う、あんまり出目良くない。4と5で20』


GM

『(8成功か、微妙なところだけど何を聞き出せたことにしようか……よし)

 じゃあ、ポケットは何か白い布を出すときに切符を落としたこと、その場所には大きな鏡と水の出る金属の筒があったことを教えてくれたよ』


『具体的な場所とか時間はわからないのか』


GM

『それを聞き出す前に魔法の効果が切れちゃった、ということで』


松風

『白い布ってハンカチだと思う。多分、トイレで手を洗うときに落としたって事だよね』


『そうか。じゃあハクさんに、途中でおトイレに行かなかったか聞いてみよう』


GM

『(ちょっと簡単すぎたか)じゃあ、乗換駅の待ち時間の間にトイレに行ったことを教えてくれるよ』


『よし、じゃあ駅員さんにその駅の人にトイレに切符が落ちてないか電話で確かめてもらおう』

GM

『駅員さんは半信半疑でその駅に連絡してトイレを調べてもらったところ、言われたとおりの場所に切符が見つかったそうな。無事解決してハクさんからもお礼を言われたよ』


『やったぁ。これで解決って事で良いよね』


GM

『もちろん、一つ目クリアだね』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る