インフェルノ −5−
突き刺さったカルロのショートソードめがけて、稲妻を帯びた一撃が叩き込まれる。
紫色の閃光が駆けめぐって
そして、バレフォルの体が
「あらよっと」
カルロがシエルを右腕に抱えたまま着地する。
辺りは静けさを取り戻し、そこにあるのは機械で作られた
「シエルさん、カルロさん。無事だったんですね」
アウローラが心の底から心配したと言わんばかりに、二人へ声をかけた。
「アンジェラちゃん達は今ごろ学園に戻ってるはずだよ」
カルロが、テレーザの持っていた黒いカードをつかって三人を学園へ送り届けたことをかいつまんで説明する。
「てゆーか、上にしばらく隠れててさ、合図したら音の魔術使ってくれって言い出した時は、何かと思ったよ」
シエルがグチをこぼすように、自分たちが先ほどまで何をしていたかを話し始めた。
「こいつには内部に宝石をためる機能があるのは調べたからね。それを利用してるんじゃないかと思っただけさ」
「まさかお前が来るとはな。すっかり忘れていた」
「えぇーっ!? そりゃないよディーノ……こっちは色々仕込むの苦労したんだよ?」
ソフィアとレオーネを救出できたのは、カルロが持っていた黒いカードがあったことを思い出す。
「あのカードか?」
「まぁね。持ってれば、ここにいる誰かの声でソフィアちゃん達を解放できるように細工しといたんだよ……」
しれっと言い放っているように見えるが、カルロの声と表情はどこか複雑さを抱えているようだった。
立場上、本当は敵だったが、何か思うところがあったのか、それはカルロ本人にしかわからないだろう。
「ったく、帰ったら洗いざらい話してもらうことには変わりねぇが……、せめて一発、殴らせろっ!」
ディーノが人間の姿に戻らないまま殴りかかろうとした時、カルロの顔色が変わった。
アルマがショートソードに具現化されて、カルロの左手に握られ、そのままディーノに向けて振る。
とっさにディーノは上半身をのけぞらせて避ける。
「なんのつもりだ!」
ディーノの怒りの声はその先にも続くはずだった。
炎の矢がカルロの心臓を直撃する光景さえ、目に入らなければ……。
その場の誰もが勝利を確信して生じた油断、振り返った先には足を引きずりながら立ち上がるバレフォルの姿があった。
「てめぇ、不死身か!?」
『ははは……まさか、危機一髪だった……よ。君が……攻撃を、打ち込む……瞬間に全ての……宝石を、かき集めたのさ』
どこまでもしぶとい。
バレフォルがここまでするほどの
『カルロ!』『カルロさん!』
アウローラとシエルが矢を受けて
シエルが必死になって体をゆさぶっていたが、意識を失っているのか起きる気配がない。
「なんで……こんな、ちゃんと話すって言ったじゃん! 起きなさいよ! 起きて、いつもみたいに……あああああっ!!」
まだ戦いが続いていても、事実を受け入れて無感情に切り捨て、
「……てっ、めえぇっ!!」
バスタードソードを握るディーノの手に力がこもり、弾かれたようにバレフォルへと斬りかかった。
むき出しの激情が呼び寄せた稲妻を帯びる一撃を、バレフォルが片手でつかみ受け止める。
まるで、子供が振り回すただの棒切れであるかのように、軽々と……。
その現実はディーノにとってにわかに信じ難かった。
魔降術は感情が強ければ強いほど、その威力を増していく。
カルロの死を目の当たりにしたディーノの力が、その程度で済まされるはずがないと言う自負と確信はあった。
だが、同時にバレフォルの手からは黒い鮮血が爆発したかのように飛び散り、火薬のように燃え上がる。
強化されたり、新たに芽生えた力かと思ったが、様子が違う。
鎧のような
『こ……これだけは……使いたく、なかったんだけどねぇ……』
ボキボキと鈍い音がして、骨格そのものが変わっていく。
体の内側からはち切れんばかりに肉が
片方が折れていたはずの角が両方ともに大きくなり、槍のように先端が尖った長い尻尾が生え、
それはまさしく、人間がイメージする”悪魔”そのものの姿だった。
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