仮面舞踏会再び
ディーノは無言で剣を構える。
『つれないねぇ……。マクシミリアンのように招待状を送るべきだったかい?』
赤いマントを
黒い
『男同士で踊るのは、これで最後にしたいものだねぇ』
その両手から上がる炎がそれぞれ剣の姿をとって実体化する。
今までのディロワールを
それが
ディーノは剣を握り込む手に、
体は
「行くぞバレフォル……、いやカルロッ!!」
ディーノはバレフォルへと向かって一直線に
どんな
バスタードソードを振りかぶり、バレフォルに向かって刃が振り下ろされた。
ディーノの
この状態でもパワーはディーノの方が上回っているようで、バレフォルは受け止めるのではなくひたすらにかわす。
一分の時間制限を逃げのびられれば、もうディーノに打つ手はない。
前に戦った時のような、
ならば、向こうが
「くらえっ!!」
バレフォルへ向かって一直線に飛ぶ刃だったが、バレフォルは
『残念、稲妻は落ちないようだね』
遠くの相手に対してはよくやる戦法だが、向こうもそれは
武器を失ったのを
それと同時に、あらぬ方向へ飛んでいったはずのバスタードソードが戻ってきた。
『これは!?』
ディーノの手と稲妻で
「てめぇほど器用じゃねぇが……これくらいはできるぞっ!!」
目の前にいる男が
そのまま力ずくて引き寄せて
「まだだぁっ!!」
そのままディーノは、打ち込んだ左腕でバレフォルのマフラーをつかんで力いっぱい引きよせ右拳の
『ごふっ!』
時間制限が来るまでに拳を叩き込み続けてとどめを刺さなければ、もうチャンスは
『
だが、それは長くは続かなかった。
自分たちを赤い光の
『
視界が真っ赤に染まり、
ただやられていたわけではなく、そのふりをして
再び両者の距離が開くと、無数の紋章が地面に輝く。
高熱と打撃に近い
さらに先ほどのことから推察して、発動までには時間差がある。
(一気に駆け抜けりゃいい)
足にマナを
風のマナを持たないがゆえに完全な再現はできないが、別の発想で近づけることは可能だ。
いつもなら剣を振り回す腕の筋力に使うマナを全て、両足へ注ぎ込み
地面に赤く輝く魔法陣が火を
さらにもう一つのイメージを頭の中にめぐらせた。
ぶっつけ本番だが、相手がカルロなら記憶はあっても自分が使うとは思わないだろうと言う目算はある。
バレフォルとの距離が次第に縮まっていき、複数ある魔法陣の
『その魔術は無理だ!』
頭の中で
発動していれば、ディーノの体は羽根のように軽くなり、
しかし、
植物の幻獣が自身を焼き
筋力強化からの加速はできても、ディーノとヴォルゴーレに
紙のように吹けば飛ぶ戦車など役に立たない。
だが、これまでの加速で直撃を避けることには成功し、そのまま加速を
それが幻影だと気付いた瞬間、背中に高熱を
爆炎は攻撃するためだけでなく、自分の存在をくらますための二重にしかけられた罠。
ヴォルゴーレと一つになったこの体の防御を超えたダメージを与えてくる。
その剣技の
だが、同時にそれは接近戦に持ち込むチャンスが
ディーノはすかさず体をひねって斬り返し、バレフォルの
紫に輝く
時間が切れる前に決着をつけようとしたその瞬間だった。
オレンジ色の光がディーノの視界を染め上げる。
その正体はバレフォルの炎ではなく、夕暮れ時の
目に飛び込んできた強い光に
「こっ……の野郎ォッ!!」
ディーノは右足を体の間へねじ込むように上げて、そのままバレフォルの体を
同時に体の中から血が抜けて行くのを、ヴォルゴーレのマナで再生力を高めて強引に傷口を
即座に回復するわけでもなく、失った血までは戻らないが、まだ体は動く。
しかし、自分とバレフォルの存在を誰が見ていたかを、ディーノはまだ気づいていなかった。
『再び出でよ、ソルンブラ』
バレフォルの号令と共に影からソルンブラが現れ、その狙いはディーノではなく、まだこの場に残っていた初等部の子供だった。
「くっ! まだ出てくるんですの!!」
「みなさん、バラバラにならないで!」
イザベラとアウローラが応戦するが、数匹倒しながらもソルンブラたちは怯むことなく襲いかかってくる。
風と
『さぁ、あの子たちを放っておくかい?』
バレフォルの仕組んだのはこの二択なのか、それとも別に狙いがあるのか、ディーノは一瞬思案する。
「助けて!」
やたらとよく通る声に、ディーノは聞き覚えがあった。
「おおおおおおっ!!」
いつものように繰り出した稲妻の剣が、ソフィアたちに襲いかかってきたソルンブラを軽々となぎ
そう、いつも通りのはずだった。
「あ……あ……」
子供達の方に向き直ったディーノは、彼らの表情に気づいてしまう。
「いやぁぁぁっ! 来ないでぇっ!!」
バレフォルとさほど変わらない魔獣と鎧を掛け合わせた姿、そしてこの身に浴びている黒いディロワールの血と自らが流した赤い血が混ざり合ったディーノの姿は人間のものではなかった。
「ソフィアに近づくな! バケモノ!」
悲鳴をあげるソフィアの前にレオーネが立ちふさがった。
「待ってくださいその人は!」
アウローラが制止に入るよりも先に、氷のつぶてがディーノに向かって放たれる。
「こ、子供たちに
初等部の教師が近づいてきた
彼らにとって今の姿は
ディーノは自分でも気づかずにおぼつかない足取りで後ずさりし始める。
『これを、待っていたんだよ』
背後からの声を
「ごふぁっ!!」
一度つらぬかれて
視界が黒く染まっていく。
ダメージを受けすぎた体に死が
『ただで死んでもらっては困るよ。君には、永遠の悪夢を彷徨ってもらおう』
バレフォルのもう片方の手に黒いマナのような光が集まり、それが
「あああああっ!!」
頭に飛び込んでくるのは、物理的な痛みなどではなかった。
ビリビリと内側からほとばしる何かが引きずり起こす中で見えてきたものは死のイメージとは違う。
ディーノに似た顔立ちで銀髪の男性と、自分と同じ黒く長い髪をなびかせる女性……。
(父さんと母さん?)
敵は自分の記憶の中を探っているのか、目的はわからないが、これ以上
ディーノは強大な稲妻をイメージし、攻撃の
『ここ……までや……る……余力がま……だあっ……たとはねぇ……』
意識を失ってしまいそうになるが、バレフォルは警戒を強めて体が離れた。
その一瞬の
ほとんど力の残っていない体はフリオとの
敵がどこまで追ってくるかわからないが、
「おい、ヴォルゴーレ……傷は……」
足を引きずりながら、少しでも遠くへ逃げつつ、内にいる幻獣に声をかける。
だが、いつもなら返ってくるはずの声がなかった。
鎧のような体が少しずつ砂のように
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