実地訓練 −1−
準備をすませたディーノはカルロと共に集合場所で、アンジェラの到着を待っていた。
ディーノは愛用の剣を腰に下げている。
自分にとっては当たり前なのだが、クラスメイトたちからの
「そいつがディーノのアルマかい?」
カルロが軽い調子で聞いてくるが、会ってまだ半日も経っていないというのに、この馴れ馴れしさはなんだと言いたくなる。
「さぁな。忘れっぽいやつに何言っても
そんな苛立ちもあってか、わざとらしく目をそらして突き放す。
「冗談だよ。そんなゴツイの振り回せるのは、
カルロは声のトーンを落としながら、笑みを
その問いに表情が固まる。
「お前、わかるのか?」
「さぁねぇ♪
おちょくるように先ほどの問答を
「みんな、集まった?」
それをよそにアンジェラが姿を見せ、人数確認のために
二十人全員の名前を呼び終えると、出発の合図をしてクラス全員を
どういうことかはわからないが、ひとまずディーノもついていく。
「学園の外へ行くんじゃないのか?」
「おー、その反応を待ってたよ♪ まぁ見たほうが早いよ」
カルロに聞いても返答らしい返答は返ってこない。
しかし、予想はしていたと言うことならば、ここから外へ出る方法が別にあるということは
少しばかり歩いたところに、石造りで四本の柱に支えられた丸い屋根、ほこらを思わせるような形の建造物にたどり着いた。
柱の内側に四つの大きな
「じゃあみんなに、今日の
アンジェラの指示に従って、クラスメイトたちは
(一人で
ディーノは
「あの、もしよろしければ、ご一緒しませんか?」
アウローラがそれを
「なんでいちいち俺に
「そ、それは……そう! 委員長ですから! ディーノさんも編入してきたばかりだし」
取り
こっちがどれだけ
「ちょうどいいんじゃないのー? さっきご飯食べた時四人だったわけなんだから」
シエルがアウローラに
「こりゃ
ディーノは心の中でため息をついた。
半ば強引に引き入れようとするのは気に食わないが、一番時間を食わないのはこの三人の
「グループは決まったみたいね。みんな準備はいい?」
アンジェラが声をかけると、ディーノ以外の全員が制服のポケットから銀色のカードを取り出す。
先ほどの授業で
『出でよ、我がアルマ』
ある者はゆったりとした
アウローラは彼女の
だが、
まるで、子供向けの
シエルは白いシャツの上にオレンジ色のベスト、
ディーノも書物で読んだ記憶しかないが、はるか西の大陸に住む
そして、カルロの服は赤いジャケットが目立つ以外は、スボンも制服のものより厚手、足にはしっかりとしたブーツをはいている、アウローラやシエルに比べればまだ実戦的なスタイルと言えた。
その腰には刀身の短い片刃のショートソードが
「さて、ディーノ君もやってみようか?」
アンジェラは笑顔で歩み寄って
「俺は、アルマなんか持ってない」
「わかってる。でも宝石はあるでしょ? この制服はアルマじゃなくて、宝石と術者のマナで変化させられるの。ディーノ君のレベルなら問題ないわ。自分のイメージを固めて意識を集中するだけ、基本は魔術を使うのと一緒だから」
彼女の言葉を
自分が望む戦うための姿、
すると、制服は紫色の光を放ちながら変化していく、次にディーノが目を見開いた時、身にまとっていたのは黒の
だが、いつも着ていたものよりも、体にしっくりとなじむ感じがする。
「この制服は生地にマナを込めることで、魔術士の防具としての役割を果たしているの。私たちは”
「使い手のマナ次第で、下手な鎧より
「
アンジェラは説明を終えると、一人でほこらの中に入り、青い光に包まれて姿を消した。
『転移の門……。
ヴォルゴーレはこのほこらの正体を知っているらしい。
いわく、古代ロンドゴミア帝国の時代に作られた移動手段で、ヴォルゴーレたちの言語を図式で現した陣で複数の宝石を共鳴させ、宝石を設置した場所同士の移動を可能にするものらしい。
しかし、帝国の崩壊後に技術が失われ、現在は新たに作り出すことは不可能。
保存状態が良かったものを修復しての再利用が関の山だと付け加えた。
(ご
『くっくっ……、一つ賢くなったな
頭の中で皮肉をぶつけ合っているうちに、アンジェラが戻って安全を伝えると、グループごとに門の中に入り始め、やがて自分たちの番がやってくる。
四人で門の中に入ると、それを感知したように宝石が光り始め、自分の体が
その光の中に取り込まれていくようで、気が遠くなりそうになる。
はるか天空へ向かって、落ちるくらいの速さで引っ張られていく感覚に、ディーノは一瞬意識を失った。
「……ノさん。ディーノさん」
かすかに自分を呼ぶ声が聞こえる。
その声に耳をかたむけ、目を開くとそこは学園ではなく、見知らぬ森の中だった。
隣には、アウローラが心配げな表情でディーノに声をかけてきていた。
「……大丈夫だ」
「だいたいみんな最初はこうなるよねー♪」
学園側と同じような石で作られ、四方を囲うように宝石が埋め込まれ、魔術の陣が彫り込まれた円形の床、向こうとの違いは柱と屋根がないことか。
『やはり、あの学園が中心のようだな』
ヴォルゴーレの言葉から察するに、これと同じように学園とつながる場所がいくつか存在するということだろう。
南の方角には、木々の間から微かに王城の
外の世界には自分の知らないものがまだまだあると見せつけられるようだ。
「無事到着したね? 課題の内容を説明するよ」
アンジェラはクラスメイトを集合させて話を始めた。
ルーポラーレとは、冬場になると活発に動き出す狼の魔獣だが、ここのところ目撃される
そして、
「これから二時間、みんなにはこの森を探索して、ルーポラーレを
アンジェラの話を聞いていると、傭兵と同じように金を稼ぐ手段になると思ったがどうも違うらしい。
「ならその宝石はどうなる? 金に
「ず、ずいぶんと
ディーノの含みのある質問に対し、アンジェラが
「質問が特にないなら、始めて行くよ?」
時刻は午後一時三十分、それぞれのグループがバラバラの方向へスタートを切る。
ディーノ達も出発しようとしたその時だった。
「君たち、ちょっといいかい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます