第7話 僕と死神リタの再会

「災難だったね」

 聞き慣れた声で目を覚めせば、リタが立っていた。僕も同じく。

 四方八方白い空間が広がり、明らかに現実の世界ではないような。

「ここは夢の中?」

「そうだねと言いたいところだけど、そうじゃない」

 リタは間を置くと、「この世とあの世の狭間」と答える。

「ハザマ?」

「あの世とこの世の間ってこと」

 リタの声に、僕は途端に体の力が抜け、場に座り込んでしまう。

「結局、僕は死んだんですね」

「そうだね。でも、霞は死んでいない」

「そう、なんだ……」

「嬉しくないの?」

「嬉しいというより、ホッとしました」

「本当はあの場で刺されるのは霞だった」

「えっ?」

「君は同じ日に電車に飛び降りて死ぬはずだったから」

 リタの話に、僕は理解が追いつかない。

「それって、どういうこと? つまりは、僕が西条さんを助けたってこと?」

「結果的には」

「そうか……」

 僕は言うと、乾いた笑いをこぼし始めた。

「フラれた女子を助けて死ぬか……」

「まあ、霞はよりクラスメイトらからハブられるかもしれない。けど、死ぬよりはマシ。学校生活なんて、せいぜい人生の数年間のことだから」

「けど、それまでに西条さんが耐えられなかったら……」

「死ぬ間際に君は、『何があっても死ぬことはしないで』って、霞に言ったのに?」

「そんなこと、僕、言い残したんですか?」

「多分、無意識にだと思う。運ばれた病院で息を引き取る前に」

「それで、西条さんは?」

「うなずいてたよ。フッた男子なのに、涙をこぼしながら」

 リタが抑揚なく言うと、僕はため息をついた。

「フッた男子の言うことなのに、何か変ですね」

「まあね。それで、鹿島裕也はどうしたい?」

「どうしたいって、何がですか?」

「これからのこと。あの世以外にも行く選択肢があるから、検討してみて」

 リタは慣れたような調子で、その選択肢について、説明をし始める。

 選択肢の中で、生き返るというものがあれば、ぜひ考えたいけど、多分ないだろう。

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