描写練習
【描写練習】 幻想百景 砂漠の真ん中の一本の道
今回は、秋山先生の作品からではなく、先生の作品に学びつつ、自分で書いたものを載せたいと思います。
今回のテーマは、直線描写のカメラワークです。
砂漠の中の一本の道
ふと目を落とせば、足首までが砂に埋まっている。
風が吹いて、風化した石のかけらが金色の砂となって空へと舞い上がる。
そうして開けた視界に飛び込んできたのは、砂漠だった。360度見渡す限りが空間で、大空の真ん中に放り出されたような浮遊感に、開放感というよりは居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
立ち眩むような思いを抱えて再び視線を落とせば、砂に埋まった足首のすぐ側からは、どういうわけか一本の線路が伸びていた。線路に敷かれた枕木は滑稽なほど均一な50センチ間隔で並べられ、ひとつ、ふたつ、と枕木をたどって視線をあげていけば、ゆっくりだった枕木のリズムは遠近法で加速をはじめ、砂漠の真ん中を切り裂いて、地平線の向こうまで続く一本の道が完成する。
こんな砂漠に列車が通るはずなどない。需要も採算も安全性も利便性も何もかもがあったものではないのに、時速300キロの高速車両が通ってもおかしくない均整のとれた線路が、渇ききった砂漠の真ん中を、ただこの世の果てを目指して伸びている。
地平線に恋をしているみたいだ、と男は思った。
届くはずのないあの人を追いかける、片思いのようだった。
視点人物の動きに合わせてカメラを動かす技術を使って、描写練習を行いました。
枕木を辿って顔を上げる動きに直線描写を連動させています。
動作を描写するときには現在形、
砂漠の一枚絵には過去形を用いました。
文体は、秋山先生には似ても似つきませんが、先生の作品に学びつつ、描写の質を上げられればと思います。
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