第3部「ありがとう」
「ありがとう」
八月のこの日、私は必ずここに来る。誰かに行きなさいと言われたから行くとかじゃなくて、私は自分でここにくる。緑が生い茂り、セミが鳴く蒸し暑いこの季節、私は忘れられない出会いをしたのだから―。
もうあれから何年たっただろう…?「今年も来たよ。相変わらず暑いよね~。でも、去年よりは涼しいよね…。」
「ゴメンね。今回はリンゴジュース!このメーカーのオレンジジュースなかなか無くてさ…、オレンジ好きだったのに肝心な時にいつもの店で売り切れてるんだもん。今度、取り寄せしとくね。ネットショッピングの方が確実かも…」
「あ…、そっか。あの頃はインターネットなんてなかったもんね…。便利な時代になったよ…。」
「はい!綺麗でしょ!この花!いつもと微妙に違うんだよ♪気づくかな~?」
「ま、じっくり見て考えてね♪」
「じゃあ、私、もう行くね!また来るから!」
本当にもっと話したかった…。こんな話をもっとしたかった。私は貴方のことを絶対に忘れはしない。忘れたくても、忘れられない。忘れてはいけない。忘れたら貴方は戻ってこないから…。
《リンゴジュースも案外いけるよ、美味しい!》
「………。」涙が混み上がる。絶対貴方は不味いなんて言わないもの。
(…もっと美味しい物、食べたかったよね。本当にごめん…私のせいで…でも…本当に…本当に…!!)
スーッ…。
息を大きく吸い、息を止め、振り向いて私は叫ぶ。
「ありがとうーッ!!!!!」
貴方への感謝の気持ちは忘れない。私が今、生きていられるのは、貴方のお陰だから。
1本作り話~思い付きの物語~ 煌 @kira-kira
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