赤い糸
赤い糸を見つけた。
古くさい表現だけど……、でも、本当に見つけたんだ。
ロマンスを感じさせてくれる赤い糸を……。
無念と絶望の世界で沈んでいた心が、少しずつ浮上していった。
この赤い糸が、誰と繋がっているのかを確かめてみたい。
そんな気持ちになった。
この年齢で、好奇心という言葉に包まれるとは思わなかった。
生涯、誰とも出会えない……。
そんな長年の葛藤を、充足という名の高揚感に染めることができるだろうか?
いずれにしても、最後のチャンスだろうな……。
もう人生に疲れ果てたけど、最後の力を振り絞って、生きた意味を見つけようではないか……。
赤い糸の終着点を知りたい。
私は歩いた。
どこまでもね。
赤い糸は、遥か彼方まで伸びていた。
いったい誰と繋がっているのだろう。
必死になって歩いた。
我を忘れて歩いた。
どれだけ歩いても疲れを感じなかった。
何千キロ歩いただろうか……。
いや、何憶キロか……。
ここはどこだ?
人の気配がしない。
ひっそりとした山奥の村まで来てしまった。
文明の跡?
よくわからない。
糸は、さらに森の中へと続いている。
草や枝をかき分けて、道なき道を進む。
どれだけ進んだだろうか?
ようやく、何かの痕跡と遭遇した。
ここは墓地か?
すでに廃墟と化している。
私と赤い糸で繋がっていたもの……、それは未来を共にする最愛の人の姿ではなかった。
荒れ果てた墓地にあった、1つの石と繋がっていた。
そこには、こう書かれてあった。
『無縁仏』と……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。