千五十四話 どれにする?

「どうしましか?」


「そうですね……」


ザハークを相手にヌレールアが模擬戦を行っている間、ソウスケはいつも実戦を行う際に同行している護衛の騎士と、ヌレールアが最後に戦うモンスターについて話し合っていた。


「……まず、やはり相手はCランクのモンスターでないとだめでしょうか」


「個人的に、無理ではないと思います」


三日目に偶々Dランクモンスターであるオークと遭遇し、なんとか勝利していたヌレールア。

まだCランクのモンスターに挑むには、早過ぎる。


そう思われるかもしれないが、ヌレールアはソウスケから伝えられたアドバイスを、忠実に実行していた。


その日、自分はどういったモンスターと戦い、どういった行動が起点となって、最後はどういった攻撃でそのモンスターを討伐したのか。

屋敷に帰ってからしっかりと記録し、脳内で反復。


再び同じモンスターと遭遇した時、その反復を活かし、討伐に成功している。


「私もヌレールア様は確かに成長したと、確実に強くなったとは思いますが…………Cランクモンスターと戦うのであれば、やはり獣系は避けた方がよろしいでしょうか」


「そうですね。それは俺も同意見です。Cランクの獣系になってくると、空中で当然の様にくるくる回転しますからね」


「解ります。あれはいったいどうなってるのか」


「そういう感覚を持っている、と納得するしかないかと」


今日までヌレールアはゴブリンやオークといった人型モンスター以外とも戦闘を行ってきている。

しかし、ソウスケたちから見て、やはりヌレールアが戦い慣れていると言えるタイプは人型のモンスターだった。


「であれば、やはり人型となりますね。オーガやリザードマン、この辺りではアンデット系のCランクも現れます」


「ゴーレム系のモンスターなどは?」


「あっ、そうですね……フォレストゴーレムの目撃情報は度々あります。後は……コング系のモンスターもよく見かけられる事があるようです」


「コング系ですかぁ…………フォレストゴーレムはありだと思いますけど、コング系のモンスターはちょっと避けた方が良いかと」


コング系、いわゆる見た目がザ・ゴリラなモンスターたち。


確かに人型のモンスターではあるが、基本的に武器を使うことはなく、己の拳のみを振るう。


「……受け止められてしまいますか」


「まだ、その可能性が高いかと」


今のヌレールアであれば、一対一の戦いならCランクのモンスターが相手でも戦えなくはない。


そう考えているソウスケだが、勿論戦う上でのリスクは考えている。


「そのまま手を、切断出来たら良いのですが、受け止められてしまった場合、がっつり腹に拳がめり込みます」


「…………ソウスケ殿が言う通り、候補から外す方が賢明ですね」


勿論、ヌレールアがCランクのモンスターに挑む際、ソウスケたちはいつでも助けられるようにスタンバイしている。


しかし……即死させられてしまうと、万が一の可能性がないとは断言出来ない。


「となると、やはりオーガかリザードマンになるでしょうか」


「そう、ですね。フォレストゴーレムもなしではありませんが、ただ単純に腕力だけのモンスターではありませんからね」


「……私としては、リザードマンよりもオーガの方が良いかと思います」


「リザードマンはオーガよりも素早いのを考えると……そう、ですね。では、一番の候補はオーガにしましょうか」


こうしてヌレールアの卒業試験……ではないが、最後の壁が決定。


二人はヌレールアがザハークとミレアナとの模擬戦が終了したタイミングを見計らって、モンスターの名前は伝えず……ソウスケたちが指導を行う最後の日に壁を用意していると伝えた。


どんな壁なのかが気になる、の前にヌレールアは絶対に越えてやるという闘志が湧き上がり始めた。

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