千五十三話 巡って争いに

「目的を果たし終えた後の人生、か」


「なんだか、前にも考えたことがある内容だな」


「そうだったか? …………確かにそうだな」


目的を果たし終えた後……ソウスケ的に考えると、冒険者としての人生が終わった後。


自分はその時何をしてるのかと考えると……直ぐに思い付いた。


「錬金術師と鍛冶師、その両方をしながら暮らしてるな」


「ソウスケさんの場合は、錬金術や鍛冶に必要な材料を自力で揃えられるだろ」


「そうだな。歳を取って体力は落ちるだろうけど、魔力量はあまり減らないらしいし、きっちり筋肉を付けてればパワーの心配もそこまでしなくて良い筈」


「……拠点を構えるだけで、あまり今の生活と変わらなさそうですね」


今現在は貴族の子供に指導を行っているが、普段は冒険者として活動しながら、時たま鍛冶を行ったり錬金術で未だに仕事が届くエアホッケーを造っている。


(そういば、ヌレールア様の指導期間が終わる時に、武器を上げても良いな)


亜空間の中には大量の素材が収納されているため、使用する素材に関して悩むことはない。


「どこに拠点を置きますか?」


「あまり人がいない場所だと、お客さんが来ないよなぁ……でも、あまり人が多過ぎるところもなぁ」


「ソウスケさん、販売する時はこれまでと違って、適正価格で販売した方がよろしいかと」


「そうだな~~。偶に販売する時の値段で売れば、絶対に同業者たちから恨まれるもんな」


ソウスケはわざわざ材料を仕入れずとも、自分で調達できる。

その為、販売する時にわざわざ材料費や人件費などを気にせず販売することが可能。


「……悩むな。王都とか、そこら辺は拠点にしたくないけど…………へ、へっへっへ。なぁ、どうせならダンジョンを持ってる街の方が良いと思わないか」


完全に思考が冒険者のそれである。


「はっはっは!!! それは良いな。モンスターと戦いたくなれば、直ぐに強い個体と戦える。そして素材の調達にもなる……うむ、最高ではないか!!」


「ダンジョンを有する街であれば、需要があるので客もそれなりに来るでしょう」


ただ、この場には誰もそれに関してツッコむ者がいない。


「しかしソウスケさん。そうなると、冒険者ギルドの方からルーキーたちの指導を頼まれたりするのではありませんか?」


「あぁ…………本当に来るのか分からないけど、偶になら良いんじゃないか?」


「ソウスケさんが良いなら、私も構いませんが……っ」


ここでふと、ミレアナは重要なことを思い出してしまった。


(……ソウスケさんは、どの国に拠点を構えるつもりなのでしょうか)


ソウスケは……これまで出会って来た者たちに尋ねられた場合、山の中で育てられたと伝えていた。


一応、一応エイリスト王国の生まれではあるが、ソウスケは特にエイリスト王国に強い思い入れがある訳ではない。


(やはりエイリスト王国でしょうか? 仮に他国を選んだ場合…………ソウスケさんを狙って、争いが起きるかもし得ません。いえ、確実に起こるでしょう)


ソウスケは既に冒険者として多くの名声を得ており、現在Bランクではあるが、その実力だけではなく得た功績を含めてAランク相当であるのは間違いない。


それはミレアナ……従魔のザハークも同じであり、その国に存在するだけで抑止力となる存在。

加えて、他国への牽制にもなる。


少し前にソウスケはエイリスト王国の冒険者として戦い、エイリスト王国所属の冒険者という印象が強いが……ソウスケは冒険する為なら、今回の様に遠慮なく他国へ向かう。


(……どれだけ馬鹿な事をしないか、何がソウスケさんの逆鱗を触れることになるか。それを理解した国が……老後の拠点として選ばれるかもしれませんね)


ミレアナとしては……多少なりともエイリスト王国に思い入れはあるが、最優先するのはソウスケの意志。

自分としては、この国が……と、意見するつもりは全くなかった。

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